b1113.
四条金吾殿 御消息.
日蓮大 聖人 51歳御作.


 
しじょうきんごどの ごしょうそく.
四条金吾殿 御消息.

たびたびの おんおとずれ もうし つくしがたく そうろう.
度度の 御音信 申し つくしがたく 候、.

さても さても いぬる 12にちの なんの とき きへんに たつのくちまで つれさせたまい.
さても・ さても 去る 十二日の 難の とき 貴辺 たつのくちまで・ つれさせ給い、.

しかのみならず はらを きらんと おおせられし ことこそ ふしぎとも もうす ばかりなけれ.
しかのみならず 腹を 切らんと 仰せられし 事こそ 不思議とも 申す ばかりなけれ、.

にちれん かこに さいし しょりょう けんぞく とうの ゆえに しんみょうを すてし ところ いくそばくか ありけん.
日蓮 過去に 妻子・ 所領・ 眷属 等の 故に 身命を 捨てし 所 いくそばくか ありけむ.

あるいは やまに すて うみに すて あるいは かわ あるいは いそ とう みちの ほとりか.
或は 山に すて 海に すて 或は 河 或は いそ 等・ 路の ほとりか、.

しかれども ほけきょうの ゆえ だいもくの なんに あらざれば.
然れども 法華経の ゆへ 題目の 難に あらざれば.

すてし みも こうむる なん とうも じょうぶつの ためならず.
捨てし 身も 蒙る 難 等も 成仏の ためならず、.

じょうぶつの ため ならざれば すてし うみ かわも ぶつどにも あらざるか.
成仏の ため ならざれば 捨てし 海・ 河も 仏土にも あらざるか。.

こんど ほけきょうの ぎょうじゃとして るざい しざいに およぶ.
今度 法華経の 行者として 流罪・ 死罪に 及ぶ、.

るざいは いとう しざいは たつのくち.
流罪は 伊東・ 死罪は たつのくち・.

そうしゅうの たつの くちこそ にちれんが いのちを すてたる ところなれ.
相州の たつのくち こそ 日蓮が 命を 捨てたる 処なれ.

ぶつどに おとるべしや.
仏土に おとるべしや、.

その ゆえは すでに ほけきょうの ゆえなるが ゆえなり.
其の 故は・ すでに 法華経の 故なるが ゆへなり、.

きょうに いわく.
経に 云く.

「じっぽうぶつど ちゅう ゆいう いちじょう ほう」と この い なるべきか.
「十方仏土 中 唯有 一乗法」と 此の 意 なるべきか、.

この きょうもんに 1じょうほうと とき たもうは ほけきょうの ことなり.
此の 経文に 一乗法と 説き 給うは 法華経の 事なり、.

じっぽう ぶつどの なかには ほけきょうより ほかは まったく なきなり.
十方 仏土の 中には 法華経より 外は 全く なきなり.

じょぶつ ほうべんせつと みえたり.
除仏 方便説と 見えたり、.

もし しからば にちれんが なんにあう ところ ごとに ぶつど なるべきか.
若し 然らば 日蓮が 難にあう 所 ごとに 仏土 なるべきか、.

しゃばせかいの なかには にほんこく にほんこくの なかには さがみの くに.
娑婆世界の 中には 日本国・ 日本国の 中には 相模の 国・.

さがみの くにの なかには かたせ かたせの なかには たつのくちに.
相模の 国の 中には 片瀬・ 片瀬の 中には 竜口に.

にちれんが いのちを とどめおく ことは ほけきょうの おんゆえ なれば じゃっこうどとも いうべきか.
日蓮が 命を・ とどめをく 事は 法華経の 御故 なれば 寂光土とも いうべきか、.

じんりきぼんに いわく.
神力品に 云く.

「にゃく おりんちゅう にゃくお おんちゅう にゃくせんごく こうや ぜちゅう ないし に はつねはん」とは これか.
「若 於林中 若於 園中 若山谷 曠野 是中 乃至 而 般涅槃」とは 是か。.

かかる にちれんに ともないて ほけきょうの ぎょうじゃとして はらを きらんと のたもう こと.
かかる 日蓮に ともなひて 法華経の 行者として 腹を 切らんと の給う 事.

かの こうえんが はらを さいて しゅの いこうが きもを いれたるよりも.
かの 弘演が 腹を さいて 主の 懿公が きもを 入れたるよりも.

ひゃくせんまんばい すぐれたる ことなり.
百千万倍 すぐれたる 事なり、.

にちれん りょうぜんに まいりて まず しじょうきんご こそ.
日蓮・ 霊山に まいりて・ まづ 四条金吾 こそ.

ほけきょうの おんゆえに にちれんと おなじく はらきらんと もうし そうろう なりと もうしあげ そうろうべきぞ.
法華経の 御故に 日蓮と をなじく 腹切らんと 申し 候なりと 申し上げ 候べきぞ、.

また かまくらどのの おおせとて ないない.
又 かまくらどのの 仰せとて 内内・.

さどのくにへ つかわすべき よし うけたまわり そうろう.
佐渡の 国へ・ つかはすべき 由 承り 候、.

さんこうてんしの なかに がってんしは ひかりものと あらわれ たつのくちの くびを たすけ.
三光天子の 中に 月天子は 光物と あらはれ 竜口の 頚を たすけ、.

みょうじょうてんしは 4 5にち いぜんに くだりて にちれんに けんざんし たもう.
明星天子は 四 五日 已前に 下りて 日蓮に 見参し 給ふ、.

いま にってんし ばかり のこり たもう.
いま 日天子 ばかり のこり 給ふ.

さだめて しゅご あるべきかと たのもし たのもし.
定めて 守護 あるべきかと たのもし たのもし、.

ほっしぼんに いわく 「そくけんへんげにん いしさえご」.
法師品に 云く「則遣変化人 為之作衛護」.

うたがい あるべからず.
疑 あるべからず、.

あんらくぎょうぼんに いわく 「とうじょう ふか」.
安楽行品に 云く「刀杖 不加」.

ふもんぼんに いわく 「とうじん だんだんね」.
普門品に 云く「刀尋 段段壊」.

これらの きょうもん よも そらごとにては そうらわじ.
此等の 経文 よも 虚事にては 候はじ、.

ごうじょうの しんりきこそ ありがたく そうらえ.
強盛の 信力こそ ありがたく 候へ、.

きょうきょう きんげん.
恐恐 謹言。.

ぶんえい 8ねん 9がつ 21にち.
文永 八年 九月 二十一日.

にちれん かおう.
日蓮 花押 .

しじょうきんご どの.
四条金吾 殿.

 
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