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四条金吾殿御返事(しじょうきんごどのごへんじ)
別名、八風抄(はっぷうしょう).
日蓮大 聖人 56歳御作.

 

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しじょうきんごどの ごへんじ.
四条金吾殿 御返事.

はるかに もうし うけたまわり そうらわざり つれば いぶせく そうらい つるに.
はるかに 申し 承り 候はざり つれば・ いぶせく 候い つるに・.

かたがたの ものと もうし おんつかいと もうし よろこび いって そうろう.
かたがたの 物と 申し 御つかいと 申し よろこび 入つて 候.

また まもり まいらせ そうろう.
又 まほり まいらせ 候、.

しょりょうの あいだの おんことは かみ よりの おんふみ.
所領の 間の 御事は 上 よりの 御文.

ならびに ごしょうそく ひきあわせて み そうらい おわんぬ.
ならびに 御消息 引き合せて 見 候い 畢んぬ、.

この ことは おんふみ なきさきに すいして そうろう.
此の 事は 御文 なきさきに すいして 候、.

かみには さいだいじと おぼしめされて そうらえども.
上には 最大事と・ おぼしめされて 候へども.

ごきんずの ひとびとの ざんそう にて.
御きんずの 人人の ざんそう にて.

あまりに しょりょうを きらい かみを かろしめ たてまつり そうろう.
あまりに 所領を きらい 上を かろしめ たてまつり 候、.

じゅうおうの ひと こそ おおく そうろうに かくまで そうらえば.
ぢうあうの 人 こそ ををく 候に かくまで 候へば.

しばらく ごおんをば おさえさせ たまうべくや そうろうらんと もうし ぬらんと すいして そうろう なり.
且らく 御恩をば・ おさへさせ 給うべくや 候らんと 申し ぬらんと・ すいして 候 なり・.

それに つけては おんこころえ あるべし ごようい あるべし.
それに つけては 御心え あるべし 御用意 あるべし、.

わが みと もうし おや るいしんと もうし かたがた.
我が 身と 申し をや るいしんと 申し・ かたがた.

おんうちに ふびんと いわれ まいらせて そうろう.
御内に 不便と いはれ まいらせて 候.

だいおんの しゅなる うえ すぎにし にちれんが ごかんきの とき.
大恩の 主なる 上 すぎにし 日蓮が 御かんきの 時・.

にほん いちどうに にくむ こと なれば でしらも.
日本 一同に にくむ 事 なれば 弟子等も.

あるいは しょりょうを おおかたより めされ しかば.
或は 所領を・ ををかたより めされ しかば.

また かたがたの ひとびとも あるいは みうち うちを いだし.
又方 方の 人人も 或は 御内 内を いだし.

あるいは しょりょうを おい なんど せしに.
或は 所領を おい なんど せしに.

その みうちに なにごとも なかりしは.
其の 御内に・ なに事も なかりしは.

おんみには ゆゆしき だいおんと みえ そうろう.
御身には ゆゆしき 大恩と 見へ 候。.

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このうえは たとい いちぶんの ごおん なくとも.
このうへは・ たとひ 一分の 御恩 なくとも・.

うらみ まいらせ たまうべき しゅには あらず.
うらみ まいらせ 給うべき 主には あらず、.

それに かさねたる ごおんを もうし しょりょうを.
それに かさねたる 御恩を 申し 所領を.

きらわせ たまう こと おんとがに あらずや.
きらはせ 給う 事・ 御とがに あらずや、.

けんじんは はっぷうと もうして 8の かぜに おかされぬを けんじんと もうすなり.
賢人は 八風と 申して 八の かぜに をかされぬを 賢人と 申すなり、.

うるおい おとろえ やぶれ ほまれ たたえ そしり くるしみ たのしみ なり.
利・ 衰・ 毀・ 誉・ 称・ 譏・ 苦・ 楽 なり、.

おおむねは うるおい あるいに よろこばず.
をを心は 利 あるに・ よろこばず・.

おとろうるに なげかず とうの ことなり.
をとろうるに なげかず 等の 事なり、.

この はっぷうに おかされぬ ひとをば かならず てんは まもらせ たまうなり.
此の 八風に をかされぬ 人をば 必ず 天は まほらせ 給うなり.

しかるを ひりに しゅを うらみ なんどし そうらえば.
しかるを・ ひりに 主を うらみ なんどし 候へば・.

いかに もうせども てん まもり たまう こと なし.
いかに 申せども 天 まほり 給う 事 なし、.

そしょうを もうせど かない ぬべき ことも あり.
訴訟を 申せど 叶い ぬべき 事も あり、.

もうさぬに かなう べきを もうせば かなわぬ ことも そうろう.
申さぬに 叶う べきを 申せば 叶わぬ 事も 候、.

よめぐりの とのばらの そしょうは.
夜めぐりの 殿原の 訴訟は.

もうすは かないぬべき よしを かんがえて そうらいしに.
申すは 叶いぬべき よしを・ かんがへて 候しに・.

あながちに なげかれし うえ.
あながちに・ なげかれし 上.

にちれんが ゆえに めされて そうらえば いかでか ふびんに そうらわざる べき.
日蓮が ゆへに・ めされて 候へば・ いかでか 不便に 候はざる べき、.

ただし そしょう だにも もうし たまわずば.
ただし 訴訟 だにも 申し 給はずば・.

いのりて み そうらわんと もうせ しかば.
いのりて み 候はんと 申せ しかば、.

さうけ たまわり そうらいぬと やくそく ありて.
さうけ 給わり 候いぬと 約束 ありて・.

また おりかみを しきりに かき ひとびと そしょう ろん なんど ありと もうせし ときに.
又 をりかみを しきりに かき・ 人人・ 訴訟 ろん なんど・ ありと 申せし 時に.

この そしょう よも かなわじと おもい そうらいしが いままで のびて そうろう.
此の 訴訟 よも 叶わじと をもひ 候いしが・ いままで のびて 候。.

だいがくどの えもんの たいうどのの こと どもは もうす ままにて そうろう あいだ.
だいがくどの ゑもんの たいうどのの 事 どもは 申す ままにて 候 あいだ・.

いのり かないたる ように みえて そうろう.
いのり 叶いたる やうに・ みえて 候、.

はきりどのの ことは ほうもんの ごしんよう あるように そうらえども.
はきりどのの 事は 法門の 御信用 あるやうに 候へども.

この そしょうは もうす ままには ごようい なかりしかば いかんがと ぞんじて そうらいし ほどに.
此の 訴訟は 申す ままには 御用い なかりしかば・ いかんがと 存じて 候いし ほどに・.

さりとては と もうして そうらいし ゆえにや そうらいけん.
さりとては・と 申して 候いし ゆへにや 候けん・.

すこし しるし そうろうか.
すこし・ しるし 候か、.

これに おもうほど なかりし ゆえに また おもうほど なし.
これに・ をもうほど・ なかりし ゆへに 又 をもうほど なし、.

だんなと しと おもい あわぬ いのりは みずの うえに ひを たくが ごとし.
だんなと 師と をもひ あわぬ いのりは 水の 上に 火を たくが ごとし、.

また だんなと しと おもい あいて そうらえども.
又 だんなと 師と をもひ あひて 候へども.

だいほうを しょうほうをもって おかして.
大法を 小法を もつて・ をかして.

とし ひさしき ひとびとの おんいのりは かない そうらわぬ うえ.
とし ひさしき 人人の 御いのりは 叶い 候はぬ 上、.

わが みも だんなも ほろび そうろうなり.
我が 身も・ だんなも・ ほろび 候なり。.

てんだいの ざす みょううんと もうせし ひとは だい50だいの ざす なり.
天台の 座主・ 明雲と 申せし 人は 第五十代の 座主 なり、.

いぬる あんげん 2ねん 5がつに いんかんを かおりて いずのくにへ はいる さんそう おおつより うばい かえす.
去ぬる 安元 二年 五月に 院勘を かほりて 伊豆国へ 配流・ 山僧 大津より うばい かへす、.

しかれども また かえりて ざすと なりぬ.
しかれども 又 かへりて 座主と なりぬ・.

また すぎにし じゅえい 2ねん 11がつに よしなかに からめ とられし うえ くび うち きられぬ.
又 すぎにし 壽永 二年 十一月に 義仲に・ からめ とられし 上・ 頚 うち きられぬ・.

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これは ながされ くび きらるるを とがとは もうさず.
是は ながされ 頚 きらるるを・ とがとは 申さず.

けんじん しょうにんも かかる こと そうろう.
賢人・ 聖人も かかる 事 候、

ただし げんじの よりともと へいけの きよもりとの かっせんの おこりし とき.
但し 源氏の 頼朝と 平家の 清盛との 合戦の 起りし 時・.

きよもりが 1るい 20よにん きしょうを かき れんばんを して.
清盛が 一類・ 二十余人・ 起請を かき 連判を して.

がんを たてて へいけの うじでらと えいざんを たのむべし.
願を 立てて 平家の 氏寺と 叡山を たのむべし.

3ぜんにんは ふぼの ごとし.
三千人は 父母の ごとし・.

やまの なげきは われらが なげき やまの よろこびは われらが よろこびと もうして.
山の なげきは 我等が なげき・ 山の 悦びは 我等が よろこびと 申して、.

おうみの くに 24ぐんを いっこうに よせて そうらいしかば.
近江の 国・ 二十四郡を 一向に よせて 候しかば、.

だいしゅと ざすと いちどうに うちには しんごんの だいほうを つくし.
大衆と 座主と 一同に 内には 真言の 大法を つくし・.

そとには あくそう どもを もって げんじを いさせ しかども.
外には 悪僧 どもを・ もつて 源氏を いさせ しかども.

よしなかが ろうとう ひぐちと もうせし おのこ よしなかと ただ 5 6にん ばかり.
義仲が 郎等 ひぐちと 申せし をのこ 義仲と ただ 五 六人 計り.

えいざん ちゅうどうに はせのぼり ちょうぶくの だんの うえに ありしを ひき いだして なわを つけ.
叡山 中堂に はせのぼり 調伏の 壇の 上に ありしを 引き 出して・ なわを つけ.

にしざかを おおいしを まろばす ように ひき おろして くびを うち きりたりき.
西ざかを 大石を まろばす やうに 引き 下して 頚を うち 切りたりき、.

かかる こと あれども にほんの ひとびと しんごんを うとむ こと なし.
かかる 事 あれども 日本の 人人 真言を うとむ 事 なし.

また たずぬる ことも なし.
又 たづぬる 事も なし・.

いぬる じょうきゅう 3ねん かのとみ 5 6 7の 3かげつが あいだ きょう えびすの かっせん ありき.
去ぬる 承久 三年 辛巳 五 六 七の 三箇月が 間・ 京・ 夷の 合戦 ありき、.

ときに にほんこく だいいちの ひほうどもを つくして.
時に 日本国 第一の 秘法どもを つくして.

えいざん とうじ 7だいじ おんじょうじとう てんしょうだいじん しょうはちまん さんのうとうに.
叡山・ 東寺・ 七大寺・ 園城寺等・ 天照太神・ 正八幡・ 山王等に.

いちいちに おんいのり ありき.
一一に 御いのり ありき、.

その なかに にほん だいいちの そう 41にん なり.
其の 中に 日本 第一の 僧 四十一人 なり.

いわゆる さきの ざす じえんだいそうじょう とうじ みむろ みいでらの じょうじゅういんの そうじょうらは.
所謂 前の 座主・ 慈円大僧正・ 東寺・ 御室・ 三井寺の 常住院の 僧正等は.

たびたび よしときを じょうぶく ありし うえ.
度度・ 義時を 調伏 ありし. 上、

みむろは ししんでんに して 6がつ ようか より ごじょうぶく ありしに.
御室は 紫宸殿に して 六月 八日 より 御調伏 ありしに.、

7かと もうせしに おなじく 14かに いくさに まけ.
七日と 申せしに 同じく 十四日に・ いくさに・ まけ.

せたかが くび きられ みむろ おもい じに ししぬ.
勢多迦が 頚きられ 御室 をもひ 死に 死しぬ、.

かかること そうらえども しんごんは いかなる とがとも あやしむる ひと そうらわず.
かかる事 候へども 真言は・ いかなる とがとも・ あやしむる 人 候はず、.

およそ しんごんの だいほうを つくす こと.
をよそ 真言の 大法を つくす 事・.

みょううん だいいちど じえん だいにどに にほんこくの おうほう ほろび そうらい おわんぬ.
明雲 第一度・ 慈円 第二度に 日本国の 王法 ほろび 候い 畢んぬ、.

こんど だいさんどに なり そうろう.
今度 第三度に なり 候、.

とうじの もうこ じょうぶく これなり.
当時の 蒙古 調伏 此れなり、.

かかることも そうろうぞ.
かかる事も 候ぞ.

これは ひじ なり ひとに いわずして こころに ぞんち せさせ たまえ.
此れは 秘事 なり 人に いはずして 心に 存知 せさせ 給へ。.

されば この こと おんそしょう なくて.
されば 此の 事 御訴訟 なくて.

また うらむる こと なく みうちをば いでず.
又 うらむる 事 なく 御内をば いでず.

われ かまくらに うちいて さきざき よりも しゅっし とおき ようにて.
我 かまくらに うちいて・ さきざき よりも 出仕 とをき やうにて・.

ときどき さしいでて おわする ならば かなう ことも そうろうなん.
ときどき さしいでて・ おはする ならば 叶う 事も 候なん、.

あながちに わるびれて みえさせ たまう べからず.
あながちに・ わるびれて・ みへさせ 給う べからず、.

よくと みょうもん いかりとの.
よくと 名聞・ 瞋との。.

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