b1163.
四条金吾殿御返事 (しじょうきんごどの ごへんじ)
別名、不可惜所領事 (ふかしゃく しょりょうの こと)
日蓮大 聖人 56歳御作.

 

b1163

しじょうきんごどの ごへんじ.
四条金吾殿御返事.

きょげつ 25にちの おんふみ.
去月 二十五日の 御文・.

どうげつの 27にちの とりのときに きたりて そうろう.
同月の 二十七日の 酉の時に 来りて 候、.

おおせ くださるる じょうと また きしょう かくまじき よしの ごせいじょうと み そうらえば.
仰せ 下さるる 状と 又 起請 かくまじき よしの 御せいじやうとを 見 候へば.

うどんげの さきたるを みるか.
優曇華の さきたるを みるか.

しゃくせんだんの ふたばに なるを えたるか.
赤栴檀の ふたばに なるを えたるか、.

めづらし こうばし.
めづらし・かうばし、.

さんみょうろくつうを え たまう うえ ほけきょうにて.
三明六通を 得 給う 上・法華経にて.

しょじ しょじゅうに のぼらせ たまえる しょうかの だいあらかん.
初地・初住に のぼらせ 給へる 証果の 大阿羅漢・.

とくむしょうにんの ぼさつなりし しゃりほつ もくれん かしょうら だにも.
得無生忍の 菩薩なりし 舎利弗・目連・迦葉等 だにも.

しゃばせかいの まっぽうに ほけきょうを ぐづうせん ことの だいなん.
娑婆世界の 末法に 法華経を 弘通せん 事の 大難.

こらえ かねければ かなうまじき よし じたい そうらいき.
こらへ かねければ・かなふまじき 由・辞退 候いき、.

まして さんわくみだんの まつだいの ぼんぷが いかでか このきょうの ぎょうじゃと なるべき.
まして 三惑未断の 末代の 凡夫が 争か 此経の 行者と なるべき、.

たとい にちれん 1にんは じょうもく がしゃく あっく おうなんをも しのぶとも.
設い 日蓮 一人は 杖木・瓦石・悪口・王難をも 忍ぶとも.

さいしを たいせる むちの ぞくなんどは いかでか かなうべき.
妻子を 帯せる 無智の 俗なんどは 争か 叶うべき、.

なかなか しんぜ ざらんは よかりなん.
中中・信ぜ ざらんは よかりなん・.

すえ とおらず しばしならば ひとに.
すへ・とをらず しばしならば 人に・.

わらわれなんと ふびんにも おもい そうらいしに.
わらはれなんと 不便に をもひ 候いしに、.

たびたびの なん にかどの ごかんきに こころざしを.
度度の 難・二箇度の 御勘気に 心ざしを・.

あらわし たまうだにも ふしぎなるに.
あらはし 給うだにも 不思議なるに、.

かく おどさるるに.
かく・おどさるるに.

2しょの しょりょうを すてて ほけきょうを しんじ とおすべしと.
二所の 所領を すてて 法華経を 信じ・とをすべしと.

ごきしょうそうろうこと いかにとも もうす ばかりなし.
御起請候事 いかにとも 申す 計りなし、.

ふげん もんじゅら なお まつだいは いかんがと ほとけ おぼし めして.
普賢・文殊等 なを 末代は いかんがと 仏 思し 食して.

みょうほうれんげきょうの 5じ をば.
妙法蓮華経の 五字 をば.

じゆ せんがいの じょうしゅ じょうぎょう とうの 4にんに こそ おおせ つけられて そうらえ.
地涌 千界の 上首・上行 等の 四人に こそ 仰せ つけられて 候へ・.

ただ ことの こころを あんずるに にちれんが みちを たすけんと.
只 事の 心を 案ずるに 日蓮が 道を たすけんと.

じょうぎょうぼさつ きへんの おんみに いり かわらせ たまえるか.
上行菩薩・貴辺の 御身に 入り かはらせ 給へるか.

また きょうしゅしゃくそんの おんはからいか.
又 教主釈尊の 御計いか、.

かの みうちの ひとびと うち はびこって.
彼の 御内の 人人 うち はびこつて.

りょうかん りゅうぞうが はからいにては じょうあるらん
良観・竜象が 計ひにてや・ぢやうあるらん、

きしょうを かかせ たまいなば いよいよ かつばら おごりて.
起請を かかせ 給いなば・いよいよ かつばら をごりて・.

かたがたに ふれ もうさば.
かたがたに・ふれ 申さば.

かまくらの うちに にちれんが でしら 1にんも なく せめ うしないなん.
鎌倉の 内に 日蓮が 弟子等 一人もなく・せめ うしなひなん、.

ぼんぷの ならい みの うえは はからい がたし.
凡夫の ならひ 身の 上は・はからひ がたし、.

これを よくよく しるを けんじん しょうにんとは もうすなり.
これを・よくよく・しるを 賢人・聖人とは 申すなり、.

とおきをば しばらく おかせ たまえ.
遠きをば・しばらく・をかせ 給へ、.

ちかきは むさしの こうどの りょうしょを すてて にゅうどうに なり.
近きは 武蔵の かう殿・両所を すてて 入道に なり.

けっきょくは おおくの しょりょう なんにょの きんだち ごぜんらを すてて ごとんせいと うけたまわる.
結局は 多くの 所領・男女の きうだち 御ぜん等を すてて 御遁世と 承わる、.

とのは こなし たのもしき きょうだい なし.
とのは 子なし・たのもしき 兄弟 なし・.

わづかの 2しょの しょりょう なり.
わづかの 二所の 所領 なり、.

いっしょうは ゆめの うえ あすを ごせず.
一生は ゆめの 上・明日を ごせず・.

いかなる こつじきには なるとも ほけきょうに きずを つけ たまう べからず.
いかなる 乞食には・なるとも 法華経に きずを つけ 給う べからず、.

されば おなじくは なげきたる けしきなくて この じょうに かきたるが ごとく.
されば 同くは・なげきたる けしきなくて 此の 状に・かきたるが・ごとく・.

すこしも へつらわず ふるまい おおせ あるべし.
すこしも・へつらはず 振舞 仰せ あるべし、.

→a1163

b1164

なかなか へつらう ならば あしかりなん.
中中 へつらふ ならば・あしかりなん、.

たとい しょりょうを めされ おいいだし たまうとも.
設ひ 所領を めされ 追い出し 給うとも.

じゅうらせつにょの おんはからい にてぞ あるらんと.
十羅刹女の 御計い にてぞ・あるらむと・.

ふかく たのませ たまうべし.
ふかく たのませ 給うべし。.

にちれんは ながされずして かまくらに だにも ありしかば.
日蓮は ながされずして・かまくらに だにも・ありしかば・.

ありし いくさに いちじょう うち ころされなん.
有りし・いくさに 一定 打ち 殺されなん、.

これも また おんうち にては あしかりぬ べければ.
此れも 又 御内 にては・あしかりぬ べければ.

しゃかぶつの おんはからい にてや あるらん.
釈迦仏の 御計い にてや・あるらむ、.

ちんじょうは もうして そうらえども.
陳状は 申して 候へども.

また それに そうは そうらえども.
又 それに 僧は 候へども・.

あまりの おぼつかなさに さんみぼうを つかわすべく そうろうに.
あまりの おぼつかなさに 三位房を つかはすべく 候に・.

いまだ しょろう きらきらしく そうらわず そうらえば.
いまだ 所労 きらきらしく 候はず 候へば・.

おなじことに この ごぼうを まいらせ そうろう.
同事に 此の 御房を まいらせ 候、.

だいがくの さぶろうどのか たきの たろう どのか.
だいがくの 三郎殿か・たきの 太郎 殿か・.

ときどのかに いとまに したがいて かかせて あげさせ たまうべし.
とき殿かに・いとまに 随いて・かかせて あげさせ 給うべし、.

これは あげなば こと きれなん.
これは あげなば 事 きれなむ・.

いとう いそがずとも ないない うちを したため.
いたう・いそがずとも 内内 うちを・したため・.

また ほかの かつばらにも あまねく さわがせて さしいだしたらば.
又 ほかの・かつばらにも・あまねく・さはがせて・さしいだしたらば.

もしや この ふみ かまくら うちにも ひろうし.
若や 此の 文 かまくら 内にも・ひろうし.

かみへも まいる こともや あるらん.
上へも まいる 事もや あるらん、.

わざわいの さいわいは これなり.
わざはひの 幸は これなり。.

ほけきょうの おんことは いぜんに もうしふりぬ.
法華経の 御事は 已前に 申しふりぬ、.

しかれども しょうじ こそ ぜんよりは おこって そうらえ.
しかれども 小事 こそ 善よりは・をこて 候へ、.

だいじに なりぬれば かならず だいなる.
大事に なりぬれば 必ず 大なる・.

さわぎが だいなる さいわいと なるなり.
さはぎが 大なる 幸と なるなり、.

この ちんじょう ひとごとに みるならば かれらが はじ あらわるべし.
此の 陳状・人ごとに・みるならば 彼等が はぢ あらわるべし、.

ただ ひとくちに もうしたまえ われとは みうちを いでて しょりょうを あぐべからず.
只 一口に 申し給へ 我とは 御内を 出て 所領を あぐべからず、.

かみより めされ いださんは.
上より・めされ いださむは.

ほけきょうの おんふせ さいわいと おもうべしと ののしらせ たまえ.
法華経の 御布施・幸と 思うべしと・ののしらせ 給へ、.

かえすがえす ぶぎょうにんに へつらう けしき なかれ.
かへすがへす 奉行人に・へつらう けしき なかれ、.

このしょりょうは かみより たびたるには あらず.
此の所領は 上より 給たるには あらず、.

だいじの ごしょろうを ほけきょうの くすりを もって.
大事の 御所労を 法華経の 薬を もつて・.

たすけ まいらせて たびて そうろう.
たすけ まいらせて 給て 候.

しょりょうなれば めすならば ごしょろうこそ また かえり そうらわんずれ.
所領なれば 召すならば 御所労こそ 又 かへり 候はむずれ、.

そのときは よりもとに ごたいじょう そうろうとも.
爾時は 頼基に 御たいじゃう 候とも.

もちいまいらせ そうろうまじく そうろうと うちあて.
用ひまいらせ 候まじく 候と うちあて・.

にくそうげにて かえるべし.
にくさうげにて・かへるべし。.

あなかしこ あなかしこ.
あなかしこ・あなかしこ・.

おんより あい あるべからず.
御より あひ あるべからず、.

よるは ようじん きびしく よまわりの とのばら かたらいて もちい.
よるは 用心 きびしく 夜廻の 殿原 かたらいて 用ひ.

つねには よりあわるべし.
常には・よりあはるべし.

こんど みうちを だにも いだされずば.
今度 御内を だにも・いだされずば.

10に 9は うちの もの ねらいなん かまえて.
十に 九は 内の もの ねらひなむ かまへて・.

きたなき しに すべからず.
きたなき しに すべからず。.

けんじ 3ねん ひのとうし 7がつ.
建治 三年 丁丑 七月.

にちれん かおう.
日蓮 花押.

しじょうきんごどの ごへんじ.
四条金吾殿 御返事.

→a1164

 
 →a1163
 →c1163
 ホームページトップ
inserted by FC2 system