b1179.
中務左衛門尉殿御返事(なかつかさ さえもんのじょうどの ごへんじ)
別名、二病抄(にびょうしょう).
日蓮大 聖人 57歳御作.

 

なかつかさ さえもんのじょうどの ごへんじ.
中務 左衛門尉殿 御返事.

こうあん がんねん 6がつ 57さい おんさく.
弘安 元年 六月 五十七歳 御作.

それ ひとに 2びょう あり.
夫れ 人に 二病 あり、.

1には みの やまい.
一には 身の 病.

いわゆる じだい 100いち すいだい 100いち ひだい 100いち ふうだい 100いち いじょう 4ひゃく4びょう.
所謂 地大 百一・ 水大 百一・ 火大 百一・ 風大 百一・ 已上 四百四病・.

この やまいは じすい るすい ぎば へんじゃくらの ほうやくを もって これを じす.
此の 病は 治水・ 流水・ 耆婆・ 偏鵲等の 方薬を もつて 此れを 治す、.

2には こころの やまい.
二には 心の 病.

いわゆる 3どく ないし 8まん4せんの やまい なり.
所謂 三毒・ 乃至 八万四千の 病 なり、.

ほとけに あらざれば 2てん 3せんも じし がたし.
仏に 有らざれば 二天・ 三仙も 治し がたし.

いかに いわんや じんのう こうていの ちから およぶ べしや.
何に 況や 神農 黄帝の 力 及ぶ べしや、.

また こころの やまいに じゅうじゅうの せんじん わかれたり.
又 心の 病に 重重の 浅深 分れたり.

6どうの ぼんぷの 3どく 8まん4せんの こころの やまいをば.
六道の 凡夫の 三毒・ 八万四千の 心の 病をば.

しょうじょうの さんぞう くしゃ じょうじつ りっしゅうの ほとけ これを じす.
小乗の 三蔵・ 倶舎・ 成実・ 律宗の 仏 此れを 治す.

だいじょうの けごん はんにゃ だいにちきょう とうの きょうぎょうを そしりて おこる 3どく 8まんの やまいをば.
大乗の 華厳・ 般若・ 大日経 等の 経経を そしりて 起る 三毒 八万の 病をば.

しょうじょうを もって これを じすれば かえりては ぞうちょうすれども へいゆ まったく なし.
小乗を もつて 此れを 治すれば かへりては 増長 すれども 平愈 全く なし、.

だいじょうを もって これを じす べし.
大乗を もつて 此れを 治す べし、.

また しょだいじょうきょうの ぎょうじゃの ほけきょうを そむきて おこる さんどく.
又 諸大乗経の 行者の 法華経を 背きて 起る 三毒・.

8まんの やまいをば けごん はんにゃ だいにちきょう しんごん 3ろんとうを もって.
八万の 病をば 華厳・ 般若・ 大日経・ 真言 三論等を もつて.

これを じすれば いよいよ ぞうちょうす.
此れを 治すれば・ いよいよ 増長す、.

たとえば もくせき とうより いでたる ひは みずを もって けし やすし.
譬へば 木石 等より 出でたる 火は 水を もつて 消し やすし・.

みずより おこる ひは みずを かければ いよいよ さかんに ほのお のぼりて たかく あがる.
水より 起る 火は 水を かくれば いよいよ 熾盛に 炎 上りて 高く あがる、.

いまの にほんこく こぞ ことしの えきびょうは 4ひゃく4びょうに あらざれば かだへんじゃくが じも およばず.
今の 日本国 去 今年の 疫病は 四百四病に あらざれば 華陀偏鵲が 治も 及ばず.

しょうじょう ごんだいじょうの 8まん4せんの やまいにも あらざれば しょしゅうの ひとびとの いのりも かなわず.
小乗権 大乗の 八万四千の 病にも あらざれば 諸宗の 人人の いのりも 叶はず・.

かえりて ぞうちょう するか.
かへりて 増長 するか、.

たとい ことしは とどまるとも ねんねんに やみがたからんか.
設い 今年は・ とどまるとも 年年に 止がたからむか、.

いかにも さいごに だいじ しゅったいして のち さだまる ことも そうらわん ずらん.
いかにも 最後に 大事 出来して 後 定まる 事も 候はん ずらむ、.

ほけきょうに いわく.
法華経に 云く.

「もし いどうを しゅうして ほうに したがって やまいを じせば.
「若し 医道を 修して 方に 順つて 病を 治せば.

さらに ほかの やまいを まし あるいは また しを いたさん しかも また ぞうぎゃく せん」.
更に 他の 疾を 増し 或は 復 死を 至さん 而も 復 増劇 せん」.

ねはんぎょうに いわく.
涅槃経に 云く.

「その ときに おうしゃだいじょうの あじゃせおう へんたいに かさを しょうじ.
「爾の 時に 王舎大城の 阿闍世王 ○偏体に 瘡を 生じ.

ないし かくの ごとき かさは こころに したがいて しょうず.
乃至 是くの 如き 創は 心に 従て 生ず、.

4だいより おこるに あらず.
四大より 起るに 非ず、.

もし しゅじょう よく じする もの ありと いわば このことわり あること なけん」うんぬん.
若し 衆生 能く 治する 者 有りと 言はば 是の 処 有ること 無けん」云云、.

みょうらくの いわく.
妙楽の 云く.

「ちじんは きを しり じゃは みずから じゃを しる」うんぬん.
「智人は 起を 知り・ 蛇は 自ら 蛇を 識る」云云、.

このえきびょうは あじゃせおうの かさの ごとし.
此の 疫病は 阿闍世王の 瘡の 如し.

かの ほとけに あらずんば じし がたし.
彼の 仏に 非ずんば 治し 難し.

この ほっけに あらずんば のぞき がたし.
此の 法華に 非ずんば 除き 難し、.

はたまた にちれん くだりばら いぬる 12がつ 30にち こと おこり.
将又 日蓮 下痢 去年 十二月 卅日 事 起り.

ことし 6がつ みっか よっか ひびに どを まし つきづきに ばいぞうす.
今年 六月 三日 四日 日日に 度を まし 月月に 倍増す.

じょうごうかと ぞんずる ところに.
定業かと 存ずる 処に.

きへんの りょうやくを ふくしてより このかた ひび つきづきに げんじて いま 100ぶんの 1と なれり.
貴辺の 良薬を 服してより 已来 日日 月月に 減じて 今 百分の 一と なれり、.

しらず きょうしゅ しゃくそんの いりかわり まいらせて にちれんを たすけ たまうか.
しらず 教主 釈尊の 入りかわり・ まいらせて 日蓮を たすけ 給うか、.

じゆの ぼさつの みょうほうれんげきょうの りょうやくを さずけ たまえるかと うたがい そうろうなり.
地涌の 菩薩の 妙法蓮華経の 良薬を さづけ 給えるかと 疑い 候なり、.

くわしくは ちくごぼう もうすべく そうろう.
くはしくは 筑後房 申すべ く候。.

また おって もうす.
又 追つて 申す・.

きくせんは こんげつ 25にち いぬのとき きたりて そうろう.
きくせんは 今月 二十五日 戌の 時 来りて 候・.

しゅじゅの もの かぞえ つくしがたし.
種種の 物 かずへ つくしがたし、.

ときどのの かたびらの もうし たまわるべし.
ときどのの かたびらの 申し 給わるべし、.

また にょうぼうの おんおおちの おんこと.
又 女房の 御ををちの 御事.

なげき いって そうろうよし もうし たまうべし、きょうきょう.
なげき 入つて 候よし 申し 給ふべし、恐恐。.

6がつ 16にち にちれん かおう.
六月 廿六日 日蓮 花押.

なかつかさ さえもんのじょうどの ごへんじ.
中務 左衛門尉殿 御返事.

 
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