b1189から1191.
聖人御難事(しょうにん ごなんじ)
日蓮大 聖人 58歳御作



b1189

しょうにん ごなんじ.
聖人御難事.

こうあん 2ねん 10がつ 58さい おんさく.
弘安 二年 十月 五十八歳 御作.

あたう もんじんら.
与 門人等.

いぬる けんちょう 5ねん たいさいみずのとうし 4がつ 28にちに.
去ぬる 建長 五年 太歳癸丑 四月 二十八日に.

あわのくに ながさごおりの うちとうじょうの ごう いまは こおり なり.
安房の国 長狭郡の 内東条の 郷・今は 郡 なり、.

てんしょうだいじんの みくりや うだいしょうけの たて はじめ たまいし.
天照太神の 御くりや 右大将家の 立て 始め 給いし.

にほん だい2の みくりや いまは にほん だい1 なり.
日本 第二の みくりや 今は 日本 第一 なり、.

この こおりの うち せいちょうじと もうす てらの しょぶつぼうの じぶつどうの なんめんに して.
此の 郡の 内 清澄寺と 申す 寺の 諸仏坊の 持仏堂の 南面に して.

うまのときに この ほうもん もうし はじめて いまに 27ねん.
午の時に 此の 法門 申し はじめて 今に 二十七年・.

こうあん 2ねん たいさいつちのとう なり.
弘安 二年 太歳己卯 なり、.

ほとけは 40よねん てんだいだいしは 30よねん.
仏は 四十余年・天台大師は 三十余年・.

でんぎょうだいしは 20よねんに しゅっせの ほんかいを とげ たまう.
伝教大師は 二十余年に 出世の 本懐を 遂げ 給う、.

その なかの だいなん もうす ばかりなし さきざきに もうすが ごとし.
其 中の 大難 申す 計りなし 先先に 申すが ごとし、.

よは 27ねんなり その あいだの だいなんは おのおの かつ しろしめせり.
余は 二十七年なり 其の 間の 大難は 各各 かつ しろしめせり。.

ほけきょうに いわく.
法華経に 云く.

「しかも この きょうは にょらいの げんざいにすら なお おんしつ おおし いわんや めつどの のちをや」うんぬん.
「而も 此の 経は 如来の 現在にすら 猶 怨嫉 多し、況や 滅度の 後をや」云云、.

しゃかにょらいの だいなんは かずを しらず.
釈迦如来の 大難は かずを しらず、.

その なかに うまの むぎを もって 90日 こゆびの すいぶつしんけつ たいせきの いただきに かかりし.
其の 中に 馬の 麦を もつて 九十日・小指の 出仏身血・大石の 頂に かかりし、.

ぜんしょうびくらの 8にんが みは ほとけの みでし.
善生比丘等の 八人が 身は 仏の 御弟子・.

こころは げどうに ともないて ちゅうや 12じに ほとけの ひまを ねらいし.
心は 外道に ともないて 昼夜 十二時に 仏の 短を ねらいし、.

むりょうの しゃくしの はるりおうに ころされし.
無量の 釈子の 波瑠璃王に 殺されし・.

むりょうの でしらが あくぞうに ふまれし.
無量の 弟子等が 悪象に ふまれし・.

あじゃせおうの だいなんを なせし とう.
阿闍世王の 大難を なせし 等、.

これらは にょらい げんざいの しょうなん なり.
此等は 如来 現在の 小難 なり、.

きょうめつどごの だいなんは りゅうじゅ てんじん てんだい でんぎょう いまだ あい たまわず.
況滅度後の 大難は 竜樹・天親・天台・伝教 いまだ 値い 給はず・.

ほけきょうの ぎょうじゃ ならずと いわば いかでか ぎょうじゃにて おわせざるべき.
法華経の 行者 ならずと・いわば・いかでか 行者にて・をはせざるべき、.

また ぎょうじゃと いわんとすれば ほとけの ごとく みより ちを あやされず.
又 行者と いはんとすれば 仏の ごとく 身より 血を あやされず、.

いかに いわんや ほとけに すぎたる だいなんなし きょうもん むなしきが ごとし.
何に 況や 仏に 過ぎたる 大難なし 経文 むなしきが ごとし、.

ぶっせつ すでに だいこもうと なりぬ.
仏説 すでに 大虚妄と なりぬ。.

しかるに にちれん 27ねんが あいだ.
而るに 日蓮 二十七年が 間・.

こうちょう がんねん かのととり 5がつ 12にちには いずの くにへ るざい.
弘長 元年 辛酉 五月 十二日には 伊豆の 国へ 流罪、.

ぶんえい がんねん きのえね 11がつ 11日.
文永 元年 甲子 十一月 十一日.

こうべに きずを かほり ひだりの てを うち おらる.
頭に きずを かほり 左の 手を 打ち をらる、.

どう ぶんえい 8ねん かのとひつじ 9がつ 12にち.
同 文永 八年 辛未 九月 十二日.

さどのくにへ はいる また くびのざに のぞむ.
佐渡の国へ 配流 又 頭の座に 望む、.

その ほかに でしを ころされ きられ おいだし かりょう とう かずを しらず.
其の 外に 弟子を 殺され 切られ 追出・くわれう 等 かずを しらず、.

ほとけの だいなんには およぶか すぐれたるか それは しらず.
仏の 大難には 及ぶか 勝れたるか 其は 知らず、.

りゅうじゅ てんじん てんだい でんぎょうは よに かたを ならべがたし.
竜樹・天親・天台・伝教は 余に 肩を 並べがたし、.

→a1189

b1190

にちれん まっぽうに いでずば ほとけは だいもうごの ひと.
日蓮 末法に 出でずば 仏は 大妄語の 人・.

たほう じっぽうの しょぶつは だいこもうの しょうめい なり.
多宝・十方の 諸仏は 大虚妄の 証明 なり、.

ほとけ めつご 2せん2ひゃく30よねんが あいだ.
仏 滅後 二千二百三十余年が 間・.

いちえんぶだいの うちに ほとけの みことばを たすけたる ひと ただ にちれん 1にん なり.
一閻浮提の 内に 仏の 御言を 助けたる 人・但 日蓮 一人 なり、.

かこ げんざいの まっぽうの ほけきょうの ぎょうじゃを きょうせんする おうしん ばんみん.
過去 現在の 末法の 法華経の 行者を 軽賤する 王臣 万民.

はじめは こと なきようにて ついに ほろびざるは そうらわず.
始めは 事 なきやうにて 終に ほろびざるは 候はず、.

にちれん また かくの ごとし.
日蓮 又 かくの ごとし、.

はじめは しるし なきよう なれども いま 27ねんが あいだ.
始めは しるし なきやう なれども 今 二十七年 が間、.

ほけきょう しゅごの ぼんしゃく にちがつ してんとう さのみ しゅごせずば.
法華経 守護 の梵釈・日月・四天等 さのみ 守護せずば.

ぶつぜんの おんちかい むなしくて むけんだいじょうに おつべしと.
仏前の 御誓 むなしくて 無間大城に 堕つべしと・.

おそろしく おもう あいだ いまは おのおの はげむらん.
おそろしく 想う 間 今は 各各 はげむらむ、.

おおたのちかまさ ながさきじろうひょうえのじょうときつな だいしんぼうが らくばとうは.
大田の親昌・長崎次郎兵衛の尉時綱・大進房が 落馬等は.

ほけきょうの ばちの あらわるるか.
法華経の 罰の あらわるるか、.

ばちは そうばち べつばち けんばち みょうばち 4そうろう.
罰は総罰・別罰・顕罰・冥罰・四候、.

にほんこくの だいえきびょうと だいけかちと どしうちと たこくより せめらるるは そうばち なり.
日本国の 大疫病と 大けかちと どしうちと 他国より せめらるるは 総ばち なり、.

やくびょうは みょうばち なり.
やくびやうは 冥罰 なり、.

おおたらは げんばちなり べつばち なり.
大田等は 現罰なり 別ばち なり、.

おのおの ししおうの こころを とりいだして いかに ひと おどすとも おづること なかれ.
各各 師子王の 心を 取り出して・いかに 人 をどすとも をづる事 なかれ、.

ししおうは ひゃくじゅうに おじず.
師子王は 百獣に をぢず・.

ししの こ また かくの ごとし.
師子の 子・又 かくの ごとし、.

かれらは やかんの ほうるなり.
彼等は 野干の ほうるなり.

にちれんが いちもんは ししの ほうるなり.
日蓮が 一門は 師子の 吼るなり、.

こさいみょうじどのの にちれんを ゆるししと このとのの ゆるししは.
故最明寺殿の 日蓮を ゆるししと 此の殿の 許ししは.

とが なかりけるを ひとの ざんげんと しりて ゆるしし なり.
禍 なかりけるを 人の ざんげんと 知りて 許しし なり、.

いまは いかに ひと もうすとも きき ほどかずしては.
今は いかに 人 申すとも 聞き ほどかずしては.

ひとの ざんげんは もちい たまう べからず.
人の ざんげんは 用い 給う べからず、.

たとい だいきじんの つけるひと なりとも.
設い 大鬼神の つける人 なりとも.

にちれんをば ぼんしゃく にちがつ してんとう てんしょうだいじん はちまんの しゅごし たまう ゆえに.
日蓮をば 梵釈・日月・四天等・天照太神・八幡の 守護し 給う ゆへに.

ばっし がたかるべしと ぞんじ たまうべし.
ばつし がたかるべしと 存じ 給うべし、.

つきづき ひびに つより たまえ.
月月・日日に つより 給へ・.

すこしも たゆむこころ あらば ま たよりを うべし.
すこしも たゆむ心 あらば 魔 たよりを うべし。.

われら ぼんぷの つたなさは きょうろんに ある ことと とおき ことは おそるる こころなし.
我等 凡夫の つたなさは 経論に 有る 事と 遠き 事は おそるる 心なし、.

いちじょうとして へいらも じょうらも いかりて.
一定として 平等も 城等も いかりて.

この いちもんを さんざんと なすことも しゅったいせば まなこを ひさいで かんねん せよ.
此の 一門を さんざんと なす事も 出来せば 眼を ひさいで 観念 せよ、.

とうじの ひとびとの つくしへか さされんずらん.
当時の 人人の つくしへか・さされんずらむ、.

また ゆくひと また かしこに むかえる ひとびとを わが みに ひきあてよ.
又 ゆく人・又 かしこに 向える 人人を 我が 身に ひきあてよ、.

とうじまでは この いちもんに この なげき なし.
当時までは 此の 一門に 此の なげき なし、.

かれらは げんは かくの ごとし ころされば また じごくへ ゆくべし.
彼等は げんは かくの ごとし 殺されば 又 地獄へ ゆくべし、.

われら げんには このだいなんに あうとも ごしょうは ほとけに なりなん.
我等 現には 此の大難に 値うとも 後生は 仏に なりなん、.

たとえば やいとの ごとし.
設えば 灸治の ごとし.

とうじは いたけれども のちの くすりなれば いたくて いたからず.
当時は いたけれども 後の 薬なれば いたくて いたからず。.

かの あつわらの ぐちの ものども いいはげまして おどすこと なかれ.
彼の あつわらの 愚癡の 者ども・いゐはげまして・をどす事 なかれ、.

かれらには ただ いちえんに おもいきれ.
彼等には ただ 一えんに おもい切れ・.

よからんは ふしぎ わるからんは いちじょうと おもえ.
よからんは 不思議 わるからんは 一定と をもへ、.

→a1190

b1191

ひだるしと おもわば がきどうを おしえよ.
ひだるしと をもわば 餓鬼道を をしへよ、.

さむしと いわば 8かんじごくを おしえよ.
さむしと いわば 八かん地獄を をしへよ、.

おそろししと いわば たかに あえる きじ.
をそろししと・いわば たかに あへる きじ.

ねこに あえる ねずみを たにんと おもうこと なかれ.
ねこに あえる ねずみを 他人と をもう事 なかれ、.

これは こまごまと かき そうろう ことは.
此れは こまごまと かき 候 事は.

かく としどし つきづき ひびに もうして そうらえども.
かく としどし・月月・日日に 申して 候へども.

なごえのあま しょうぼう のとぼう さんみぼう なんどの ように そうろう.
なごへの尼 せう房・のと房・三位房 なんどの やうに 候、.

おくびょう もの おぼえず.
をくびやう 物 をぼへず・.

よくふかく うたがい おおき ものどもは.
よくふかく・うたがい 多き 者どもは・.

ぬれる うるしに みずを かけ そらを きりたるように そうろうぞ.
ぬれる うるしに 水を かけ そらを きりたるやうに 候ぞ。.

さんみぼうが ことは だいふしぎの ことども そうらい しかども.
三位房が 事は 大不思議の 事ども 候い しかども・.

とのばらの おもいには ちえ ある ものを そねませ たまうかと.
とのばらの をもいには 智慧 ある 者を そねませ 給うかと・.

ぐちのひと おもいなんと おもいて ものも もうさで そうらいしが.
ぐちの人 をもいなんと・をもいて 物も 申さで 候いしが、.

はらぐろと なりて だいなんにも あたりて そうろうぞ.
はらぐろと なりて 大難にも あたりて 候ぞ、.

なかなか さんざんと だにも もうせ しかば.
なかなか・さんざんと・だにも 申せ しかば・.

たすかる へんもや そうらいなん.
たすかる へんもや 候いなん、.

あまりに ふしぎさに もうさざりしなり.
あまりに ふしぎさに 申さざりしなり、.

また かく もうせば おこひとどもは しもうの ことを おおせ そうろうと もうすべし.
又 かく 申せば おこ人どもは 死もうの 事を 仰せ 候と 申すべし、.

かがみの ために もうす.
鏡の ために 申す.

また この ことは かれらの ひとびとも うちうちは おじ おそれ そうろうらんと おぼえ そうろうぞ.
又 此の 事は 彼等の 人人も 内内は・おぢ おそれ 候らむと・おぼへ 候ぞ。.

ひとの さわげばとて ひょうじなんと このいちもんに せられば これへ かきつけて たび そうらえ.
人の さわげばとて・ひやうじなんと 此の一門に せられば 此れへ かきつけて・たび 候へ、.

きょうきょう きんげん.
恐恐 謹言。.

10がつ ついたち にちれん かおう.
十月 一日 日蓮 花押 .

ひとびと おんちゅう.
人人 御中.

さぶろうざえもんどのの もとに とどめらるべし.
さぶらうざへもん殿の もとに・とどめらるべし。.

→a1191

 
 →a1189
 →c1189
 ホームページトップ
inserted by FC2 system