b1378から1380.
松野殿御消息(別名、一劫御書).
日蓮大 聖人 55歳御作.

 

b1378

まつのどの ごしょうそく.
松野殿御消息.

こうじ ひとかご しゅじゅの もの おくりたび そうろう.
柑子 一篭・ 種種の 物 送り給 候、.

ほけきょう だい7かん やくおうほんに いわく.
法華経 第七巻 薬王品に 云く.

しゅせいの なかに がってんし もっとも これ だい1 なり.
衆星の 中に 月天子 最も 為 第一 なり.

この ほけきょうも またまた かくの ごとし.
此の 法華経も 亦復 是くの 如し、.

せんまんおくしゅの もろもろの きょうほうの なかに おいて もっとも これ しょうみょうなり うんぬん.
千万億種の 諸の 経法の 中に 於て 最も 為 照明なり 云云、.

もんの こころは こくうの ほしは あるいは はんり あるいは 1り あるいは 8り あるいは 16り なり.
文の 意は 虚空の 星は 或は 半里 或は 一里 或は 八里 或は 十六里 なり、.

てんの まんげつりんは 800りにて おわします.
天の 満月輪は 八百里にて をはします、.

けごんきょう 60かん あるいは 80かん はんにゃきょう 600かん ほうどうきょう 60かん.
華厳経 六十巻 或は 八十巻・ 般若経 六百巻・ 方等経 六十巻・.

ねはんぎょう 40かん 36かん だいにちきょう こんごうちょうきょう そしつじきょう.
涅槃経 四十巻 三十六巻・ 大日経・ 金剛頂経・ 蘇悉地経・.

かんぎょう あみだきょうとうの むりょうむへんの しょきょうは ほしの ごとし.
観経・ 阿弥陀経等の 無量無辺の 諸経は 星の 如し、.

ほけきょうは つきの ごとしと とかれて そうろう きょうもん なり.
法華経は 月の 如しと 説かれて 候 経文 なり、.

これは りゅうじゅぼさつ むじゃくぼさつ てんだいだいし ぜんむいさんぞうらの ろんし.
此れは 竜樹菩薩・ 無著菩薩・ 天台大師・ 善無畏三蔵等の 論師・.

にんしの ことばにも あらず きょうしゅ しゃくそんの きんげんなり.
人師の 言にも あらず、教主釈尊の 金言 なり・.

たとえば てんしの 1ごんの ごとし.
譬へば 天子の 一言の 如し、.

また ほけきょうの やくおうほんに いわく.
又 法華経の 薬王品に 云く.

よく この きょうてんを じゅじする こと あらんものも またまた かくの ごとし.
能く 是の 経典を 受持する こと 有らん 者も 亦復 是くの 如し.

いっさいしゅじょうの なかに おいて また これ だい1とう うんぬん.
一切衆生の 中に 於て 亦 為 第一等 云云、.

もんの こころは ほけきょうを たもつ ひとは おとこ ならば いかなる でんぷ にても そうらえ.
文の 意は 法華経を 持つ 人は 男 ならば 何なる 田夫 にても 候へ、.

3がいの しゅたる だいぼんてんのう しゃくだいかんいん 4だいてんのう てんりんじょうおう.
三界の 主たる 大梵天王・ 釈提桓因・ 四大天王・ 転輪聖王.

ないし かんど にほんの こくしゅ とうにも すぐれたり.
乃至 漢土・ 日本の 国主 等にも 勝れたり、.

いかに いわんや にほんこくの だいじん くぎょう げんぺいの さむらい ひゃくせいらに すぐれたる こと もうすに およばず.
何に 況や 日本国の 大臣 公卿・ 源平の 侍・ 百姓等に 勝れたる 事 申すに 及ばず、.

にょにん ならば きょうしかにょ きちじょうてんにょ かんの りふじん ようきひらの.
女人 ならば きょう尸迦女・ 吉祥天女・ 漢の 李夫人・ 楊貴妃等の.

むりょうむへんの いっさいの にょにんに すぐれたりと とかれて そうろう.
無量無辺の 一切の 女人に 勝れたりと 説かれて 候、.

あんずるに きょうもんの ごとく もうさんと すれば おびただしき ようなり.
案ずるに 経文の 如く 申さんと すれば をびただしき 様なり.

ひと もちいん ことも かたし.
人 もちゐん 事も かたし、.

これを しんぜじと おもえば にょらいの きんげんを うたがう とがは きょうもん あきらかに あびじごくの ごうと みえぬ.
此れを 信ぜじと 思へば 如来の 金言を 疑ふ 失は 経文 明かに 阿鼻地獄の 業と 見へぬ、.

しんたい わずらい あり いかんがせん.
進退 わづらひ 有り 何がせん、.

この ほうもんを きょうしゅ しゃくそんは 40よねんが あいだは むねの うちに かくさせ たまう.
此の 法門を 教主 釈尊は 四十余年が 間は むねの 内に かくさせ 給う、.

さりとては とて おんとし 72と もうせしに.
さりとては とて 御年 七十二と 申せしに.

なんえんぶだいの ちゅうてんじく おうしゃじょうの うしとら ぎしゃくっせんにして とかせ たまいき.
南閻浮提の 中天竺・ 王舎城の 丑寅・ 耆闍崛山にして 説かせ 給いき、.

いま にほんこくには ほとけ ごにゅうめつ 1せん400よねんと もうせしに きたりぬ.
今 日本国には 仏・ 御入滅 一千四百余年と 申せしに 来りぬ、.

それより いま 700ねん なり.
夫より 今 七百余年 なり、.

さき 1せん400よねんが あいだは にほんこくの ひと こくおう だいじん ないし ばんみん 1にんも このことを しらず.
先き 一千四百余年が 間は 日本国の 人・ 国王・ 大臣・ 乃至 万民 一人も 此の事を 知らず。.

→a1378

b1379

いま この ほけきょう わたらせ たまえども.
今 此の 法華経 わたらせ 給へども.

あるいは ねんぶつを もうし あるいは しんごんに いとまを いれ ぜんしゅう じさいなんど もうし.
或は 念仏を 申し・ 或は 真言に いとまを 入れ・ 禅宗 持斎 なんど 申し.

あるいは ほけきょうを よむ ひとは ありしかども.
或は 法華経を 読む 人は 有りしかども.

なんみょうほうれんげきょうと となうる ひとは にほんこくに 1にんも なし.
南無妙法蓮華経と 唱うる 人は 日本国に 一人も 無し、.

にちれん はじめて けんちょう 5ねんの なつの はじめより 20よねんが あいだ.
日蓮 始めて 建長五年 夏の 始より 二十余年が 間・.

ただ 1にん とうじの ひとの ねんぶつを もうす ように となうれば ひとごとに これを わらい.
唯 一人・ 当時の 人の 念仏を 申す やうに 唱うれば 人ごとに 是れを 笑ひ・.

けっくは のり うち きり ながし くびを はねんと せらるること.
結句は のり うち 切り 流し 頚を はねんと せらるること・.

1にち ふつか ひとつき ふたつき 1ねん 2ねん ならざれば こらうべしとも おぼえ そうらわねども.
一日・ 二日・ 一月・ 二月・ 一年・ 二年 ならざれば こらふべしとも をぼえ 候はねども、.

この きょうの もんを み そうらえば だんのうと もうせし おうは 1000さいが あいだ.
此の 経の 文を 見 候へば 檀王と 申せし 王は 千歳が 間・.

あしせんにんに せめ つかわれ みを ゆかと なしたまう.
阿私仙人に 責め つかはれ 身を 牀と なし 給ふ、.

ふきょうぼさつと もうせし そうは たねんが あいだ あっく めりせられ.
不軽菩薩と 申せし 僧は 多年が 間・ 悪口 罵詈せられ.

とうじょうがしゃくを こうむり.
刀杖瓦礫を 蒙り、.

やくおうぼさつと もうせし ぼさつは 1200ねんが あいだ みを やき.
薬王菩薩と 申せし 菩薩は 千二百年が 間 身を やき.

7まん2せんさい ひじを やき たまう.
七万二千歳 ひぢを 焼き 給ふ、.

これを みはんべるに いかなる せめ ありとも.
此れを 見はんべるに 何なる 責め 有りとも.

いかでか さて せきとどむべきと おもう.
いかでか さて せき留むべきと 思ふ.

こころに いままで たいてん そうらわず.
心に 今まで 退転 候はず。.

しかるに ざいけの おんみとして みな ひと にくみ そうろうに.
然るに 在家の 御身として 皆 人 にくみ 候に、.

しかも いまだ げざんに いり そうらわぬに.
而も いまだ 見参に 入り 候はぬに.

なんと おぼしめして ごしんよう あるやらん.
何と 思し食して 御信用 あるやらん、.

これ ひとえに かこの しゅくじき なるべし.
是れ 偏に 過去の 宿植 なるべし、.

らいしょうに かならず ほとけに ならせ たまうべき ごの きたりて もよおす こころ なるべし.
来生に 必ず 仏に 成らせ 給うべき 期の 来りて もよをす こころ なるべし、.

その うえ きょうもんには きじんの みに いる ものは この きょうを しんぜず.
其の 上 経文には 鬼神の 身に 入る 者は 此の 経を 信ぜず・.

しゃかぶつの おんたましいの いりかわれる ひとは この きょうを しんずと みえて そうらえば.
釈迦仏の 御魂の 入りかはれる 人は・ 此の 経を 信ずと 見へて 候へば・.

みずに つきの かげの いりぬれば みずの すむが ごとく.
水に 月の 影の 入りぬれば 水の 清むが ごとく・.

おんこころの みずに きょうしゅ しゃくそんの つきの かげの いり たまうかと たのもしく おぼえ そうらえ.
御心の 水に 教主 釈尊の 月の 影の 入り 給ふかと たのもしく 覚へ 候、.

ほけきょうの だい4 ほっしほんに いわく.
法華経の 第四 法師品に 云く.

「ひと あって ぶつどうを もとめて 1こうの なかに おいて がっしょうして.
「人 有つて 仏道を 求めて 一劫の 中に 於て 合掌して.

わが まえに あって むすうの げを もって ほめん.
我が 前に 在つて 無数の 偈を 以て 讃めん、.

この さんぶつに よるが ゆえに むりょうの くどくを えん.
是の 讃仏に 由るが 故に 無量の 功徳を 得ん、.

じきょうしゃを たんみ せんは その ふく また かれに すぎん」とう うんぬん.
持経者を 歎美 せんは 其の 福 復た 彼れに 過ぎん」等 云云、.

もんの こころは 1こうが あいだ きょうしゅ しゃくそんを くようし たてまつる よりも.
文の 意は 一劫が 間 教主 釈尊を 供養し 奉る よりも.

まつだいの せんち なる ほけきょうの ぎょうじゃの じょうげ ばんにんに あだまれて がし すべき びくらを.
末代の 浅智 なる 法華経の 行者の 上下 万人に あだまれて 餓死 すべき 比丘等を.

くようせん くどくは まさるべしとの きょうもん なり.
供養せん 功徳は 勝るべしとの 経文 なり。.

いっこうと もうすは 8まんり なんど そうらわん.
一劫と 申すは 八万里 なんど 候はん.

あおめの いしを やすりを もって むりょうこうが あいだ するとも つきまじを.
青めの 石を・ やすりを 以て 無量劫が 間 するとも つきまじきを、.

ぼんてん 3しゅの ころもと もうして きわめて ほそく うつくしき あまの はごろもを もって.
梵天 三銖の 衣と 申して きはめて ほそく うつくしき あまの 羽衣を 以て.

3ねんに 1ど くだりて なづるに なで つくしたるを 1こうと もうす.
三年に 一度 下て なづるに なで つくしたるを 一劫と 申す、.

この あいだ むりょうの たからを もって くようし まいらせんよりも.
此の 間 無量の 財を 以て 供養し まいらせん よりも.

じょくせの ほけきょうの ぎょうじゃを くよう したらん くどくは まさる べきと もうす もん なり.
濁世の 法華経の 行者を 供養 したらん 功徳は まさる べきと 申す 文 なり、.

→a1379

b1380

この こと しんじがたき こと なれども.
此の 事 信じがたき 事 なれども.

ほけきょうは これていに おびただしく.
法華経は これていに をびただしく、.

ことごとしき ことども あまた はべり.
ことごとしき 事ども あまた 侍べり、.

また しんぜじと おもえば たほうぶつは しょうみょうを くわえ.
又 信ぜじと 思へば 多宝仏は 証明を 加へ.

きょうしゅ しゃくそんは しょうじきの きんげんと なのらせ たまう.
教主 釈尊は 正直の 金言と なのらせ 給ふ、.

しょぶつは こうちょうぜつを ぼんてんに つけ たまいぬ.
諸仏は 広長舌を 梵天に つけ 給いぬ、.

ちちの ゆずりに ははの じょうを そえて けんのうの せんじを くだし たまうが ごとし.
父の ゆづりに 母の 状を そゑて 賢王の 宣旨を 下し 給うが 如し、.

みっつ これ 1どうなり たれか これを うたがわん.
三つ 是 一同なり 誰か 是れを 疑はん、.

されば これを うたがいし むくろんじは.
されば 是れを 疑いし 無垢論師は.

した 5つに われ すうほっしは した ただれ.
舌 五つに 破れ 嵩法師は 舌 ただれ.

さんがいぜんじは げんしんに だいじゃと なる.
三階禅師は 現身に 大蛇と なる.

とくいちは した 8つに さけにき.
徳一は 舌 八つに さけにき、.

それ のみならず この ほけきょう ならびに ぎょうじゃを もちいずして みを そんじ
其れ のみならず 此の 法華経 並に 行者を 用ひずして 身を そんじ.

いえを うしない くにを ほろぼす ひとびと.
家を うしない 国を ほろぼす 人人・.

がっし しんたんに その かずを しらず.
月支・ 震旦に 其の 数を しらず、.

だい1には にってん あしたに ひがしに いで たまうに.
第一には 日天・ 朝に 東に 出で 給うに.

だいこうみょうを はなち てんげんを ひらきて なんえんぶだいを み たまうに.
大光明を 放ち 天眼を 開きて 南閻浮提を 見 給うに.

ほけきょうの ぎょうじゃ あれば こころに かんきし.
法華経の 行者あれば 心に 歓喜し.

ぎょうじゃを にくむ くに あれば てんげんを いからして そのくにを にらみ たまい.
行者を にくむ 国 あれば 天眼を いからして 其の 国を にらみ 給い、.

しじゅう もちいずして くにの ひと にくめば.
始終 用いずして 国の 人 にくめば.

その ゆえと なく いくさ おこり.
其の 故と 無く いくさ をこり.

たこく より その くにを やぶるべしと みえて そうろう.
他国 より 其の 国を 破るべしと 見えて 候。.

むかし とくしょうどうじと もうせし おさなき ものは.
昔し 徳勝童子と 申せし をさなき 者は.

つちの もちいを しゃかぶつに くようし たてまつりて.
土の 餅を 釈迦仏に 供養し 奉りて.

あそかだいおうと うまれて えんぶだいの しゅと なりて けっくは ほとけに なる.
阿育大王と 生れて 閻浮提の 主と 成りて 結句は 仏に なる、.

いまの せしゅの かし とうを もって ほけきょうを くようし まします.
今の 施主の 菓子 等を 以つて 法華経を 供養し まします、.

いかに じゅうらせつにょらも よろこび たまうらん.
何かに 十羅刹女等も 悦び 給らん、.

ことごとく つくしがたく そうろう.
悉く 尽しがたく 候、.

なんみょうほうれんげきょう なんみょうほうれんげきょう.
南無妙法蓮華経・ 南無妙法蓮華経。.

2がつ 17にち にちれん かおう.
二月 十七日 日蓮 花押 .

まつのどの ごへんじ.
松野殿 御返事.

→a1380

 
→a1378
→c1378
 ホームページトップ
inserted by FC2 system