まつのどの ごしょうそく.
松野殿 御消息.
むかし かこの いにしえ さんだいらんこくと もうす くに あり.
昔乃往 過去の 古へ 珊提嵐国と 申す 国 あり.
かの くにに だいおう あり むじょうねんおうと もうしき.
彼の 国に 大王 あり 無諍念王と 申しき、.
かの おうに 1000の おうじ あり.
彼の 王に 千の 王子 あり.
また かの おうの だい1の だいじんを ほうかいぼんじと もうす.
又 彼の 王の 第一の 大臣を 宝海梵志と 申す・.
かの ぼんじに こ あり ほうぞうと もうす.
彼の 梵志に 子 あり 法蔵と 申す、.
かの むじょうねんおうの 1000の たいしは えどを すてて じょうどを とり たまう.
彼の 無諍念王の 千の 太子は 穢土を 捨てて 浄土を 取り 給ふ、.
その ゆえは この しゃばせかいは いかなる ところと もうせば.
其の 故は 此の 娑婆世界は 何なる 所と 申せば.
じっぽうの こくどに ふぼを ころし しょうほうを ひぼうし しょうにんを ころせる もの.
十方の 国土に 父母を 殺し 正法を 誹謗し 聖人を 殺せる 者.
かの くにぐにより この しゃばせかいへ おい いれられて そうろう.
彼の 国国より 此の 娑婆世界へ 追い 入れられて 候、.
れいせば この にほんこくの ひと だいか ある ものの ごくに いれらるるが ごとし.
例せば 此の 日本国の 人 大科 有る 者の 獄に 入れらるるが 如し、.
わが ちからに かなわざれば あいみん せずして すて たまう.
我が 力に 叶はざれば 哀愍 せずして 捨て 給ふ、.
ほうかいぼんじ ひとり うけとりて しゃばせかいの ひとの しと なり たまう.
宝海梵志 一人 請け取りて 娑婆世界の 人の 師と 成り 給ふ、.
ほうかいぼんじの がんに いわく.
宝海梵志の 願に 云く.
われ みらいせの えあくどの なかに まさに さぶつ する ことを うべし.
我 未来世の 穢悪土の 中に 当に 作仏 する ことを 得べし、.
すなわち じっぽう じょうど より ひんずいせる しゅじょうを あつめて.
即ち 十方 浄土 より 擯出せる 衆生を 集めて.
われ まさに これを どすべしと ちかい たまいき.
我れ 当に 之れを 度すべしと 誓ひ 給ひき、.
むじょうねんおうと もうすは あみだぶつ なり.
無諍念王と 申すは 阿弥陀仏 なり、.
その 1000の たいしは いまの かんのんせいし ふげん もんじゅらなり.
其の 千の 太子は 今の 観音勢至 普賢 文殊等なり、.
その ほうかいぼんじと もうすは いまの しゃかにょらい なり.
其の 宝海梵志と 申すは 今の 釈迦如来 なり、.
この しゃばせかいの いっさいしゅじょうは じっぽうの しょぶつに ぬき すてられしを.
此の 娑婆世界の 一切衆生は 十方の 諸仏に 抜き 捨てられしを.
しゃか ひとり ばかりして たすけさせ たまうを ゆいがいちにんと もうすなり.
釈迦 一人 計りして 扶けさせ 給うを 唯我一人と 申すなり。.
にちれん かおう.
日蓮 花押 .
まつのどの.
松野殿. |
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