b1420から1424.
内房女房御返事 (うつぶさにょうぼう ごへんじ).
日蓮大聖人 59歳 御作.

 

b1420

うつぶさにょうぼう ごへんじ.
内房女房 御返事.

うつぶさ よりの ごしょうそくに いわく.
内房 よりの 御消息に 云く.

8がつ ここのか ちちにて そうらいし ひとの ひゃっかにちに あいあたりて そうろう.
八月 九日 父にて さふらひし 人の 百箇日に 相当りて さふらふ.

おんふせりょうに じっかん まいらせ そうろう.
御布施料に 十貫 まいらせ 候.

ないし あなかしこ あなかしこ.
乃至 あなかしこ あなかしこ.

ごがんもんの じょうに いわく.
御願文の 状に 云く.

「どくじゅし たてまつる みょうほうれんげきょう いちぶ.
「読誦し 奉る 妙法蓮華経 一部.

どくじゅし たてまつる ほうべん じゅりょうほん 30かん.
読誦し 奉る 方便 寿量品 三十巻.

どくじゅし たてまつる じがげ 300かん.
読誦し 奉る 自我偈 三百巻.

となえ たてまつる みょうほうれんげきょうの だいめい 5まんべん」 うんぬん.
唱え 奉る 妙法蓮華経の 題名 五万返」 云云.

どうじょうに いわく「ふくして おもんみれば せんこうの ゆうれい せいぞんの とき.
同状に 云く「伏して 惟れば 先考の 幽霊 生存の 時.

でし はるかに せんりの さんがを しのぎ まのあたり.
弟子 遙に 千里の 山河を 凌ぎ 親り.

みょうほうの だいめいを うけ.
妙法の 題名を 受け.

しかるのち 30にちを へずして ながく いっしょうの おわりを つぐ」とう うんぬん.
然る後 三十日を 経ずして 永く 一生の 終りを 告ぐ」等 云云.

また いわく 「ああ えんぶの ろていに はっこつ かりに じんどと なるとも.
又 云く 「嗚呼 閻浮の 露庭に 白骨 仮りに 塵土と 成るとも.

りょうぜんの かいじょうに ぼうこん さだんで かくずいを ひらかん」.
霊山の 界上に 亡魂 定んで 覚蘂を 開かん」.

また いわく「こうあん 3ねん おんなでし おおなかとみうじ けいはく す」とう うんぬん.
又 云く「弘安 三年 女弟子 大中臣氏 敬白 す」等云云.

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b1421

それ おもんみれば いちじょう みょうほうれんげきょうは がっしこくにては いちゆじゅんの しろに つみ.
夫れ 以れば 一乗 妙法蓮華経は 月氏国にては 一由旬の 城に 積み.

にほんこくにては ただ 8かん なり.
日本国にては 唯 八巻 なり.

しかるに げんぜ ごせを いのる ひと あるいは 8かん あるいは いっかん.
然るに 現世 後生を 祈る 人 或は 八巻 或は 一巻.

あるいは ほうべん じゅりょう あるいは じがげ とうを どくじゅし さんたんして.
或は 方便 寿量 或は 自我偈 等を 読誦し 讃歎して.

しょがんを とげ たもう せんれい これ おおし.
所願を 遂げ 給ふ 先例 之 多し.

これは しばらく これを おく.
此は 且らく 之を 置く.

となえ たてまつる みょうほうれんげきょうの だいめい 5まんべんと うんぬん.
唱へ 奉る 妙法蓮華経の 題名 五万返と 云云.

この いちだんを のべんと おもいて せんれいを たずぬるに その ためし すくなし.
此の 一段を 宣べんと 思いて 先例を 尋ぬるに 其の 例 少なし.

あるいは いっぺん にへん となえて りしょうを こうむる ひと ほぼ これ あるか.
或は 一返 二返 唱へて 利生を 蒙る 人 粗 これ 有るか.

いまだ 5まんべんの たぐいを きかず.
いまだ 五万返の 類を 聞かず.

ただし いっさいの しょほうに わたりて みょうじ あり.
但し 一切の 諸法に 亘りて 名字 あり.

その みょうじ みな その たいとくを あらわせし ことなり.
其の 名字 皆 其の 体徳を 顕はせし 事なり.

れいせば せっこしょうぐんと もうすは いしの とらを いとおしたり しかば せっこしょうぐんと もうす.
例せば 石虎将軍と 申すは 石の虎を 射徹したり しかば 石虎将軍と 申す.

まとだてのおとどと もうすは てつまとを いとおしたり しかば まとだてのおとどと なづく.
的立の大臣と 申すは 鉄的を 射とをしたり しかば 的立の大臣と 名く.

これ みな なに とくを あらわせば いま みょうほうれんげきょうと もうし そうろうわ.
是 皆 名に 徳を 顕はせば 今 妙法蓮華経と 申し 候は.

1ぶ 8かん 28ほんの くどくを 5じの うちに おさめ そうろう.
一部 八巻 二十八品の 功徳を 五字の 内に 収め 候.

たとえば にょいほうじゅの たまに まんの たからを おさめたるが ごとし.
譬へば 如意宝珠の 玉に 万の 宝を 収めたるが 如し.

1じんに 3000を つくす ほうもん これなり.
一塵に 三千を 尽す 法門 是なり.

なむと もうす じは うやまう こころ なり したがう こころ なり.
南無と 申す 字は 敬う 心 なり 随う 心 なり.

ゆえに あなんそんじゃは いっさいきょうの にょぜの 2じの うえに なむ とう うんぬん.
故に 阿難尊者は 一切経の 如是の 二字の 上に 南無 等 云云.

なんがくだいし いわく なんみょうほうれんげきょう うんぬん.
南岳大師 云く 南無妙法蓮華経 云云.

てんだいだいし いわく けいしゅ なんみょうほうれんげきょう うんぬん.
天台大師 云く 稽首 南無妙法蓮華経 云云.

あなんそんじゃは こくぼんおうの たいし きょうしゅしゃくそんの みでし なり.
阿難尊者は 斛飯王の 太子 教主釈尊の 御弟子 なり.

しゃくそん ごにゅうめつの のち 60にちを すぎて かしょう とうの1000にん もんじゅ とうの 8まんにん.
釈尊 御入滅の 後 六十日を 過ぎて 迦葉 等の 一千人 文殊 等の 八万人.

だいかくこうどうにして しゅうえし たまいて ほとけの わかれを かなしみ たもう うえ.
大閣講堂にして 集会し 給いて 仏の 別を 悲しみ 給ふ 上.

われらは たねんの あいだ ずいちく する すら 60にちの あいだの おわかれを かなしむ.
我等は 多年の 間 随逐 する すら 六十日の 間の 御別を 悲しむ.

100ねん 1000ねん ないし まっぽうの いっさいしゅじょうは なにをかほとけの おんかたみとせん.
百年 千年 乃至 末法の 一切衆生は 何をか 仏の 御形見とせん.

6しげどうと もうすは 800ねん いぜんに 2てん 3せんとうの とき おきたる しいだ.
六師外道と 申すは 八百年 以前に 二天 三仙 等の 説き 置きたる 四韋陀.

18だいきょうを もって こそ しの なごりとは つたえて そうらえ.
十八大経を 以て こそ 師の 名残とは 伝へて 候へ.

いざさらば われら 50ねんが あいだ.
いざさらば 我等 五十年が 間.

いっさいの しょうもん だいぼさつの きき たもちたる きょうぎょうを.
一切の 声聞 大菩薩の 聞き 持ちたる 経経を.

かきおきて みらいの しゅじょうの がんもくとせんと せんぎして.
書き置きて 未来の 衆生の 眼目とせんと 僉議して.

あなんそんじゃを こうざに のぼせて ほとけを あおぐ ごとく.
阿難尊者を 高座に 登せて 仏を 仰ぐ 如く.

げざにして もんじゅしゅりぼさつ なんみょうほうれんげきょうと となえたり しかば.
下座にして 文殊師利菩薩 南無妙法蓮華経と 唱へたり しかば.

あなんそんじゃ これを うけとりて にょぜがもんと こたう.
阿難尊者 此れを 承け取りて 如是我聞と 答ふ.

999にんの だいあらかん とうは ふでを そめて かき とどめ たまいぬ.
九百九十九人の 大阿羅漢 等は 筆を 染めて 書き 留め 給いぬ.

1ぶ 8かん 28ぽんの くどくは この 5じに おさめて そうらえば こそ.
一部 八巻 二十八品の 功徳は 此の 五字に 収めて 候へば こそ.

もんじゅしゅりぼさつ かくは となえさせ たもうらめ.
文殊師利菩薩 かくは 唱へさせ 給うらめ.

あなんそんじゃ また さぞかしとは こたえ たもうらめ.
阿難尊者 又 さぞかしとは 答え 給うらめ.

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b1422


また まん2000の しょうもん 8まんの だいぼさつ 2かい 8ばんの ざつしゅも.
又 万二千の 声聞 八万の 大菩薩 二界 八番の 雑衆も.

ありし こと なれば がってん せらるらめ.
有りし 事 なれば 合点 せらるらめ.

てんだいちしゃだいしと もうす しょうにん みょうほうれんげきょうの 5じを.
天台智者大師と 申す 聖人 妙法蓮華経の 五字を.

げんぎじっかん 1000ちょうに かき たまいて そうろう.
玄義 十巻 一千丁に 書き 給いて 候.

その こころは けごんきょうは 80かん 60かん 40かん.
其の 心は 華厳経は 八十巻 六十巻 四十巻.

あごんきょう すう100かん だいしゅうほうどう すうじっかん だいぼんはんにゃ 40かん 600かん ねはんぎょう 40かん 36.
阿含経 数百巻 大集方等 数十巻、大品般若 四十巻 六百巻、涅槃経 四十巻 三十六.

ないし がっし りゅうぐう てんじょう じっぽうせかいの だいちみじんの いっさいきょうは.
乃至 月氏 竜宮 天上 十方世界の 大地微塵の 一切経は.

みょうほうれんげきょうの きょうの いちじの しょじゅう なり.
妙法蓮華経の 経の 一字の 所従 なり.

みょうらくだいし かさねて じっかん つくるを しゃくせんと なづけたり.
妙楽大師 重ねて 十巻 造るを 釈籤と 名けたり.

てんだい いごに わたりたる かんどの いっさいきょう しんやくの しょきょうは.
天台 以後に 渡りたる 漢土の 一切経 新訳の 諸経は.

みな ほけきょうの けんぞく なり うんぬん.
皆 法華経の 眷属 なり 云云.

にほんの でんぎょうだいし かさねて しんやくの きょうぎょうの なかの だいにちきょう とうの しんごんの きょうを.
日本の 伝教大師 重ねて 新訳の 経経の 中の 大日経 等の 真言の 経を.

みな ほけきょうの けんぞくと さだめられ そうらい おわんぬ.
皆 法華経の 眷属と 定められ 候い 畢んぬ.

ただし こうぼう じかく ちしょう とうは この ぎに すいか なり.
但し 弘法 慈覚 智証 等は 此の 義に 水火 なり.

その ぎ のちに ほぼ かきたり.
此の 義 後に 粗 書きたり.

たとえば 5き しちどう 66かこく 2つの しま.
譬へば 五畿 七道 六十六箇国 二つの 島.

その なかの ぐんと そうと むらと たと はたけと ひとと ぎゅうばと きんぎんとうは.
其の 中の 郡と 荘と 村と 田と 畠と 人と 牛馬と 金銀 等は.

みな にほんこくの 3じの うちに そなわりて ひとつも かくる ことなし.
皆 日本国の 三字の 内に 備りて 一つも 闕くる 事なし.

また おうと もうすは 3のじを よこに かきて 1のじを たてさまに  たてたり.
又 王と 申すは 三の 字を 横に 書きて 一の字を 豎さまに 立てたり.

よこの 3のじは てん ち ひと なり.
横の 三の字は 天 地 人 なり.

たての ひともじは おう なり.
豎の 一文字は 王 なり.

しゅみせんと もうす やまの だいちを つきとおして かたむかざるが ごとし.
須弥山と 申す 山の 大地を つきとをして 傾かざるが 如し.

てん ち ひとを つらぬきて すこしも かたむかざるを おうとは なづけたり.
天 地 人を 貫きて 少しも 傾かざるを 王とは 名けたり.

おうに ふたつ あり ひとつには しょうおう なり.
王に 二つ あり 一には 小王 なり.

にんのう てんのう これなり.
人王 天王 是なり.

ふたつには だいおう なり だいぼんてんのう これなり.
二には 大王 なり 大梵天王 是なり.

にほんこくは だいおうの ごとし.
日本国は 大王の 如し.

くにぐにの じゅりょう とうは しょうおう なり.
国国の 受領 等は 小王 なり.

けごんきょう あごんきょう ほうとうきょう はんにゃきょう だいにちきょう ねはんぎょう とうの.
華厳経 阿含経 方等経 般若経 大日経 涅槃経 等の.

いこんとうの いっさいきょうは しょうおう なり.
已今当の 一切経は 小王 なり.

たとえば にほんこくじゅうの こくおう ずりょう とうの ごとし.
譬へば 日本国中の 国王 受領 等の 如し.

ほけきょうは だいおう なり てんしの ごとし.
法華経は 大王 なり 天子の 如し.

しかれば けごんしゅう しんごんしゅう とうの しょしゅうの ひとびとは こくしゅの うちの しょじゅう とうなり.
然れば 華厳宗 真言宗 等の 諸宗の 人人は 国主の 内の 所従 等なり.

くにぐにの たみの みとして てんしの とくを うばいとるは.
国国の 民の 身として 天子の 徳を 奪ひ取るは.

げこくじょう はいじょうこうげ はじょうげらん とう これなり.
下剋上 背上向下 破上下乱 等 これなり.

たとい いかにせけんを おさめんと おもう こころざし ありとも.
設い いかに世間を 治めんと 思ふ 志 ありとも.

くにも みだれ ひとも ほろびぬべし.
国も 乱れ 人も 亡びぬべし.

たとえば きのねを うごかさんに しよう しずかなる べからず.
譬へば 木の根を 動さんに 枝葉 静なる べからず.

たいかいの なみ あらからんに ふね おだやか なるべきや.
大海の 波 あらからんに 船 おだやか なるべきや.

けごんしゅう しんごんしゅう ねんぶつしゅう りっしゅう ぜんそう とう.
華厳宗 真言宗 念仏宗 律僧 禅僧 等.

わがみ じかいしょうじきに ちえいみじく とうとしと いえども.
我が身 持戒 正直に 智慧 いみじく 尊しと いへども.

その み すでに げこくじょうの いえに うまれて ほけきょうの だいおんてきと なりぬ.
其の 身 既に 下剋上の 家に 生れて 法華経の 大怨敵と なりぬ.

あびだいじょうを のがるべきや.
阿鼻大城を 脱るべきや.

れいせば 95しゅの げどうの うちには しょうじき うちの ひと おおしと いえども.
例せば 九十五種の 外道の 内には 正直 有智の 人 多しと いへども.

2てん 3せんの じゃほうを うけ しかば ついには あくどうを まぬがるる ことなし.
二天 三仙の 邪法を 承けしかば 終には 悪道を 脱るる 事なし.

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b1423

しかるに いまの よの なむあみだぶつと もうす ひとびと.
然るに 今の 世の 南無阿弥陀仏と 申す 人人.

なんみょうほうれんげきょうと もうす ひとを あるいは わらい あるいは あざむく.
南無妙法蓮華経と 申す 人を 或は 笑ひ 或は あざむく.

これは せけんの たとえに ひえの いねを いとい やぬしの たなえを にくむ これなり.
此れは 世間の 譬に 稗の 稲を いとひ 家主の 田苗を 憎む 是なり.

これ こくしょう なき ときの ぬすびと なり.
是 国将 なき 時の 盗人 なり.

ひの いでざる ときの うぐろもち なり.
日の 出でざる 時の ウグロモチ なり.

やうち ごうとうの とがめ なきが ごとく ちちゅうの じざい なるがごとし.
夜打 強盗の 科め なきが 如く 地中の 自在 なるが如し.

なんみょうほうれんげきょうと もうす こくしょうと にちりんとに あわば.
南無妙法蓮華経と 申す 国将と 日輪とに あはば.

たいかの みずに きえ えんこうが いぬに あう なるべし.
大火の 水に 消へ エン猴が 犬に 値う なるべし.

とうじ なむあみだぶつの ひとびと.
当時 南無阿弥陀仏の 人人.

なんみょうほうれんげきょうの おんこえの きこえぬれば.
南無妙法蓮華経の 御声の 聞えぬれば.

あるいは いろを うしない あるいは まなこを いからし.
或は 色を 失ひ 或は 眼を 瞋らし.

あるいは たましいを けし あるいは ごたいを ふるう.
或は 魂を 滅し 或は 五体を ふるふ.

でんぎょうだいし いわく ひ いずれば ほし かくれ たくみを みて つたなきを しる.
伝教大師 云く 日 出れば 星 隠れ 巧を 見て 拙きを 知る.

りゅうじゅぼさつ いわく びゅうじ うしない やすく じゃぎ たすけ がたし.
竜樹菩薩 云く 謬辞 失い 易く 邪義 扶け 難し.

とくえぼさつ いわく おもてに しそうの いろ あり.
徳慧菩薩 云く 面に 死喪の 色 有り.

ことばに あいおんの こえを ふくむ.
言に 哀怨の 声を 含む.

ほうさい いわく むかしの ぎこ いまは ふくろく なり とう うんぬん.
法歳 云く 昔の 義虎 今は 伏鹿 なり 等 云云.

これらの こころを もって しんぬべし.
此等の 意を 以て 知ぬべし.

みょうほうれんげきょうの とく あらあら もうし ひらくべし.
妙法蓮華経の 徳 あらあら 申し 開くべし.

どく へんじて くすりと なる みょうほうれんげきょうの 5じは あく へんじて ぜんと なる.
毒薬 変じて 薬と なる 妙法蓮華経の 五字は 悪 変じて 善と なる.

ぎょくせんと もうす いずみは いしを たまと なす.
玉泉と 申す 泉は 石を 玉と なす.

この 5じは ぼんぷを ほとけと なす.
此の 五字は 凡夫を 仏と なす.

されば かこの じふ そんりょうは ぞんしょうに なんみょうほうれんげきょうと となえ しかば そくしんじょうぶつの ひと なり.
されば 過去の 慈父 尊霊は 存生に 南無妙法蓮華経と 唱へ しかば 即身成仏の 人 なり.

いし へんじて たまと なるが ごとし.
石 変じて 玉と 成るが 如し.

こうようの しごくと もうし そうろうなり.
孝養の 至極と 申し 候なり.

ゆえに ほけきょうに いわく「この わが ふたりの こ すでに ぶつじを なしぬ」.
故に 法華経に 云く「此の 我が 二りの 子 已に 仏事を 作しぬ」.

また いわく「この ふたりの こは これ わが ぜんちしき なり」とう うんぬん.
又 云く「此の 二りの 子は 是 我が 善知識 なり」等 云云.

むかし かこの よに ひとりの だいおう あり りんだと もうす.
乃往 過去の 世に 一の 大王 あり 名を 輪陀と 申す.

この おうは はくばの なくを ききて いろも いつくしく.
此の 王は 白馬の 鳴くを 聞きて 色も いつくしく.

ちからも つよく くごを まいらせざれども.
力も 強く 供御を 進らせざれども.

しょくに あき たもう たこくの てきも かぶとを ぬぎ たなごころを あわす.
食に あき 給ふ 他国の 敵も 冑を 脱ぎ 掌を 合す.

また この はくば なくことは はくちょうを みて なきけり.
又 此の 白馬 鳴く 事は 白鳥を 見て 鳴きけり.

しかるに だいおうの まつりごとや あしかりけん.
然るに 大王の 政や 悪しかりけん.

また かこの あくごうや かんじけん.
又 過去の 悪業や 感じけん.

はくちょう みな うせて いちわも なかりしかば はくば なくこと なし.
白鳥 皆 失せて 一羽も なかりしかば 白馬 鳴く 事なし.

はくば なかざりければ だいおうの いろも へんじ ちからも おとろえ.
白馬 鳴かざりければ 大王の 色も 変じ 力も 衰へ.

みも かじけ はかりごとも うすくなりし ゆえに くに すでに みだれぬ.
身も かじけ 謀も 薄くなりし 故に 国 既に 乱れぬ.

たこく よりも つわもの せめきたらんに いかにとかせんと なげきし ほどに.
他国 よりも 兵者 せめ 来らんに 何とかせんと 歎きし 程に.

だいおうの ちょくせんに いわく くにには げどう おおし.
大王の 勅宣に 云く 国には 外道 多し.

みな わが きえし たてまつる ぶっぽうも また かくのごとし.
皆 我が 帰依し 奉る 仏法も 亦 かくの如し.

しかるに げどうと ぶっぽうと なか わるし.
然るに 外道と 仏法と 中 悪し.

いかにしても はくばを なかせん かたを しんじて.
何にしても 白馬を 鳴かせん 方を 信じて.

いっぽうを わが くにに うしなうべしと うんぬん.
一方を 我が 国に 失ふべしと 云云.

そのときに いっさいの げどう あつまりて はくちょうを げんじて.
爾の時に 一切の 外道 集りて 白鳥を 現じて.

はくばを なかせんと せしかども はくちょう げんずる ことなし.
白馬を 鳴かせんと せしかども 白鳥 現ずる 事なし.

むかしは くもを いだし きりを ふらし かぜを ふかせ なみを たて.
昔は 雲を 出だし 霧を ふらし 風を 吹かせ 波を たて.

みの うえに ひを いだし みずを げんじ.
身の 上に 火を 出だし 水を 現じ.

ひとを うまと なし うまを ひとと なし いっさい じざい なり しかども.
人を 馬と なし 馬を 人と なし 一切 自在 なり しかども.

いかんがしけん はくちょう げんずる こと なかりき.
如何がしけん 白鳥を 現ずる 事 なかりき.

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b1424

そのときに めみょうぼさつと もうす ぶっし あり.
爾の時に 馬鳴菩薩と 申す 仏子 あり.

じっぽうの しょぶつに きがん せしかば はくちょう すなわち いできたりて はくば すなわち なけり.
十方の 諸仏に 祈願 せしかば 白鳥 則 出で来りて 白馬 則 鳴けり.

だいおう これを きこしめし いろも すこし いできたり.
大王 此を 聞食し 色も 少し 出で来り.

ちからも つき はだえも あざやか なり.
力も 付き はだへも あざやか なり.

また はくちょう また はくちょうと 1000の はくちょう しゅつげんして.
又 白鳥 又 白鳥と 千の 白鳥 出現して.

せんの はくば いちじに にわとりの ときを つくるように なき しかば.
千の 白馬 一時に 鶏の 時を つくる様に 鳴き しかば.

だいおう この こえを きこしめし いろは にちりんの ごとし はだはつきの ごとし.
大王 此の 声を 聞食し 色は 日輪の 如し 膚は 月の 如し.

ちからは ならえんの ごとし はかりごとは ぼんのうの ごとし.
力は 那羅延の 如し 謀は 梵王の 如し.

そのときに りんげん あせの ごとく いでて かえらざれば.
爾の時に 綸言 汗の 如く 出でて 返らざれば.

いっさいの げどう とう その てらを ぶつじと なしぬ.
一切の 外道 等 其の 寺を 仏寺と なしぬ.

いま にほんこく また かくのごとし.
今 日本国 亦 かくの如し.

この くには はじめは かみよ なり.
此の 国は 始めは 神代 なり.

ようやく よのすえに なるほどに ひとの こころ まがり.
漸く 代の末に なる程に 人の 意 曲り.

とんじんち ごうじょう なれば かみの ち あさく いも ちからも すくなし.
貪瞋癡 強盛 なれば 神の 智 浅く 威も 力も 少し.

うじこ どもをも しゅごし がたかり しかば.
氏子 共をも 守護し がたかり しかば.

ようやく ぶっぽうと もうす だいほうを とり わたして.
漸く 仏法と 申す 大法を 取り 渡して.

ひとの こころも すぐに かみも いせい つよかりし ほどに.
人の 意も 直に 神も 威勢 強かりし 程に.

ぶっぽうに つき あやまり おおく しゅったいせし ゆえに.
仏法に 付き 謬り 多く 出来せし 故に.

くに あやうかりしかば でんぎょうだいし かんどに わたりて.
国 あやうかりしかば 伝教大師 漢土に 渡りて.

にほんと かんどと がっしとの せいきょうを かんがえ あわせて.
日本と 漢土と 月氏との 聖教を 勘へ 合せて.

おろかなるをば すて かしこきをば とり へんぱも なく かんがえ たまいて.
おろかなるをば 捨て 賢きをば 取り 偏頗も なく 勘へ 給いて.

ほけきょうの 3ぶを ちんごこっかの 3ぶと さだめ おきて そうらいしを.
法華経の 三部を 鎮護国家の 三部と 定め 置きて 候しを.

こうぼうだいし じかくだいし ちしょうだいしと もうせし しょうにん とう.
弘法大師 慈覚大師 智証大師と 申せし 聖人 等.

あるいは かんどに ことを よせ あるいは がっしに ことを よせて.
或は 漢土に 事を 寄せ 或は 月氏に 事を 寄せて.

ほけきょうを あるいは だい3 だい2 あるいは けろん.
法華経を 或は 第三 第二 或は 戯論.

あるいは むみょうの へんいき とうと おしくだし たまいて.
或は 無明の 辺域 等と 押し下し 給いて.

ほけきょうを しんごんの 3ぶと なさしめて そうらいし ほどに.
法華経を 真言の 三部と 成さしめて 候いし 程に.

よ ようやく げこくじょうし この じゃぎ すでに いっこくに ひろまる.
代 漸く 下剋上し 此の 邪義 既に 一国に 弘まる.

ひと おおく あくどうに おちて かみの いも ようやく めっし.
人 多く 悪道に 落ちて 神の 威も 漸く 滅し.

うじこ をも しゅご しがたき ゆえに 81 ないし 85の 5しゅは.
氏子 をも 守護 しがたき 故に 八十一 乃至 八十五の 五主は.

あるいは さいかいに しずみ あるいは しかいに すてられ.
或は 西海に 沈み 或は 四海に 捨てられ.

こんじょうには だいきと なり ごしょうは むけんじごくに おち たまいぬ.
今生には 大鬼と なり 後生は 無間地獄に 落ち 給いぬ.

しかりと いえども このこと しれる ひと なければ あらたまる ことなし.
然りと いえども 此の事 知れる 人 なければ 改る 事なし.

いま にちれん このことを あらあら しる ゆえに.
今 日蓮 此の事を あらあら 知る 故に.

くにの おんを ほうぜんと するに にちれんを あだみ たもう.
国の 恩を 報ぜんと するに 日蓮を 怨み 給ふ.

これらは さて おきぬ.
此等は さて 置きぬ.

うじめの じふは りんだおうの ごとし.
氏女の 慈父は 輪陀王の 如し.

うじめは めみょうぼさつの ごとし.
氏女は 馬鳴菩薩の 如し.

はくちょうは ほけきょうの ごとし.
白鳥は 法華経の 如し.

はくばは にちれんが ごとし.
白馬は 日蓮が 如し.

なんみょうほうれんげきょうは はくばの なくが ごとし.
南無妙法蓮華経は 白馬の 鳴くが 如し.

だいおうの きこしめして いろも さかんに ちからも つよきは.
大王の 聞食して 色も 盛んに 力も 強きは.

かこの じふが うじめの なんみょうほうれんげきょうの ごおんを きこしめして.
過去の 慈父が 氏女の 南無妙法蓮華経の 御音を 聞食して.

ほとけに ならせ たもうが ごとし.
仏に 成せ 給ふが 如し.

こうあん 3年 8がつ じゅうよっか.
弘安 三年 八月 十四日.

にちれん かおう.
日蓮 花押.

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