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たかはしにゅうどうどの ごへんじ.
高橋入道殿 御返事.
けんじ がんねん 7がつ 54さい おんさく.
建治 元年 七月 五十四歳 御作.
しんじょう たかはしにゅうどうどの ごへんじ.
進上 高橋入道殿 御返事.
にちれん.
日蓮.
われらが じふ だいかくせそんは にんじゅ 100さいの とき.
我等が 慈父 大覚世尊は 人寿 百歳の 時.
ちゅうてんじゅくに しゅつげんし ましまして.
中天竺に 出現し ましまして.
いっさいしゅじょうの ために いちだいしょうきょうを とき たもう.
一切衆生の ために 一代聖教を とき 給う.
ほとけ ざいせの いっさいしゅじょうは かこの しゅくじゅう あって.
仏 在世の 一切衆生は 過去の 宿習 有つて.
ほとけに えん あつかり しかば すでに とくどう なりぬ.
仏に 縁 あつかり しかば すでに 得道 成りぬ.
わが めつどの しゅじょうをば いかんがせんと なげき たまいしかば.
我が 滅後の 衆生をば いかんがせんと なげき 給いしかば.
はちまん しょうきょうを もじと なして.
八万 聖教を 文字と なして.
いちだい しょうきょうの なかに しょうじょうきょうをば かしょうそんじゃに ゆずり.
一代 聖教の 中に 小乗経をば 迦葉尊者に ゆづり.
だいじょうきょう ならびに ほけきょう ねはんとうをば もんじゅしりぼさつに ゆずり たもう.
大乗経 並びに 法華経 涅槃 等をば 文殊師利菩薩に ゆづり 給う.
ただ はちまんしょうきょうの かんじん ほけきょうの がんもくたる みょうほうれんげきょうの 5じをば.
但 八万聖教の 肝心 法華経の 眼目たる 妙法蓮華経の 五字をば.
かしょう あなんにも ゆずり たまわず.
迦葉 阿難にも ゆづり 給はず.
また もんじゅ ふげん かんのん みろく じぞう りゅうじゅ とうの だいぼさつにも さずけ たまわず.
又 文殊 普賢 観音 弥勒 地蔵 竜樹 等の 大菩薩にも さづけ 給はず.
これらの だいぼさつらの のぞみ もうせ しかども ほとけ ゆるし たまわず.
此等の 大菩薩等の のぞみ 申せ しかども 仏 ゆるし 給はず.
だいちの そこ より じょうぎょうぼさつと もうせし ろうじんを めしいだして.
大地の 底 より 上行菩薩と 申せし 老人を 召しいだして.
たほうぶつ じっぽうの しょぶつの ごぜんにして.
多宝仏 十方の 諸仏の 御前にして.
しゃかにょらい しっぽうの とうちゅうにして.
釈迦如来 七宝の 塔中にして.
みょうほうれんげきょうの 5じを じょうぎょうぼさつに ゆずり たもう.
妙法蓮華経の 五字を 上行菩薩に ゆづり 給う.
そのゆえは わが めつごの いっさいしゅじょうは わが こ なり.
其の故は 我が 滅後の 一切衆生は 皆 我が 子 なり.
いずれも びょうどうに ふびんに おもうなり.
いづれも 平等に 不便に をもうなり.
しかれども いしの ならい やまいに したがいて くすりを さずくる こと なれば.
しかれども 医師の 習い 病に 随いて 薬を さづくる 事 なれば.
わが めつご 500ねんが あいだは かしょう あなん とうに.
我が 滅後 五百年が 間は 迦葉 阿難 等に.
しょうじょうきょうの くすりを もって いっさいしゅじょうに あたえよ.
小乗経の 薬を もつて 一切衆生に あたへよ.
つぎの 500ねんが あいだは もんじゅしりぼさつ みろくぼさつ りゅうじゅぼさつ てんじんぼさつに.
次の 五百年が 間は 文殊師利菩薩 弥勒菩薩 竜樹菩薩 天親菩薩に.
けごんきょう だいにちきょう はんにゃきょう とうの くすりを いっさいしゅじょうに さずけよ.
華厳経 大日経 般若経 等の 薬を 一切衆生に さづけよ.
わが めつご いっせんねん すぎて ぞうほうの ときには.
我が 滅後 一千年 すぎて 像法の 時には.
やくおうぼさつ かんぜおんぼさつ とう ほけきょうの だいもくを のぞいて.
薬王菩薩 観世音菩薩 等 法華経の 題目を 除いて.
よの ほうもんの くすりを いっさいしゅじょうに さずけよ.
余の 法門の 薬を 一切衆生に さづけよ.
まっぽうに いりなば かしょう あなん とう もんじゅ みろくぼさつ とう やくおう かんのん とうの.
末法に 入りなば 迦葉 阿難 等 文殊 弥勒菩薩 等 薬王 観音 等の.
ゆずられし ところの しょうじょうきょう だいじょうきょう ならびに ほけきょうは.
ゆづられし ところの 小乗経 大乗経 並びに 法華経は.
もじは ありとも しゅじょうの やまいの くすりとは なるべからず.
文字は ありとも 衆生の 病の 薬とは なるべからず.
いわゆる やまいは おもし くすりは あさし.
所謂 病は 重し 薬は あさし.
そのとき じょうぎょうぼさつ しゅつげんして.
其の時 上行菩薩 出現して.
みょうほうれんげきょうの 5じを いちえんぶだいの いっさいしゅじょうに さずくべし.
妙法蓮華経の 五字を 一閻浮提の 一切衆生に さづくべし.
そのとき いっさいしゅじょう この ぼさつを かたきとせん.
其の時 一切衆生 此の 菩薩を かたきとせん.
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いわゆる さるの いぬを みたるが ごとく.
所謂 さるの 犬を みたるが ごとく.
きじんの ひとを あだむが ごとく.
鬼神の 人を あだむが ごとく.
かこの ふきょうぼさつの いっさいしゅじょうに のり あだまれし のみならず.
過去の 不軽菩薩の 一切衆生に のり あだまれし のみならず.
じょうもく がりゃくに せめられしが ごとく.
杖木 瓦礫に せめられしが ごとく.
かくとくびくが さつがいに およばれしが ごとく なるべし.
覚徳比丘が 殺害に 及ばれしが ごとく なるべし.
そのときは かしょう あなん とうも あるいは りょうぜんに かくれ ごうがに ぼっし.
其の時は 迦葉 阿難 等も 或は 霊山に かくれ 恒河に 没し.
みろく もんじゅ とうも あるいは とそつの ないいんに いり.
弥勒 文殊 等も 或は 兜率の 内院に 入り.
あるいは こうざんに いらせ たまい.
或は 香山に 入らせ 給い.
かんぜおんぼさつは さいほうに かえり ふげんぼさつは とうほうに かえらせ たもう.
観世音菩薩は 西方に かへり 普賢菩薩は 東方に かへらせ 給う.
しょきょうは ぎょうずる ひとは ありとも しゅごの ひと なければ りしょう あるべからず.
諸経は 行ずる 人は ありとも 守護の 人 なければ 利生 あるべからず.
しょぶつの みょうごうは となうるもの ありとも てんじん これを かご すべからず.
諸仏の 名号は 唱うるもの ありとも 天神 これを かご すべからず.
ただし こうしの ははを はなれて きじの たかに あえるがごとく なるべし.
但し 小牛の 母を はなれ 金鳥の たかに あえるがごとく なるべし.
そのとき じっぽうせかいの だいきじん いちえんぶだいに じゅうまんして.
其の時 十方世界の 大鬼神 一閻浮提に 充満して.
ししゅうの みに いって.
四衆の 身に 入つて.
あるいは ふぼを がいし あるいは きょうだいらを うしなわん.
或は 父母を がいし 或は 兄弟 等を 失はん.
ことに くにじゅうの ちしゃげなる じかいげなる そうにの こころに.
殊に 国中の 智者げなる 持戒げなる 僧尼の 心に.
この きじん いって こくしゅ ならびに しんかを たぼらかさん.
此の 鬼神 入つて 国主 並びに 臣下を たぼらかさん.
このとき じょうぎょうぼさつの おんかびを かおりて.
此の時 上行菩薩の 御かびを かほりて.
ほけきょうの だいもく なんみょうほうれんげきょうの ごじ ばかりを いっさいしゅじょうに さずけば.
法華経の 題目 南無妙法蓮華経の 五字 計りを 一切衆生に さづけば.
かの ししゅうら ならびに だいそうら この ひとを あだむ こと.
彼の 四衆等 並びに 大僧等 此の 人を あだむ 事.
ふぼの かたき しゅくせの かたき ちょうてき おんてきの ごとく あだむべし.
父母の かたき 宿世の かたき 朝敵 怨敵の ごとく あだむべし.
そのとき だいなる てんぺん あるべし.
其の時 大なる 天変 あるべし.
いわゆる にちがつ しょくし だいなる すいせい てんに わたり.
所謂 日月 蝕し 大なる 彗星 天に わたり.
だいち しんどうして すいじょうの わの ごとく なるべし.
大地 震動して 水上の 輪の ごとく なるべし.
そのごは じかいほんぎゃくなんと もうして.
其の後は 自界叛逆難と 申して.
こくしゅ きょうだい ならびに くにじゅうの だいにんを うちころし.
国主 兄弟 並びに 国中の 大人を うちころし.
のちには たこくしんぴつなんと もうして りんごく より せめられて.
後には 他国侵逼難と 申して 鄰国 より せめられて.
あるいは いけどりと なり あるいは じさつをし.
或は いけどりと なり 或は 自殺をし.
くにじゅうの じょうげ ばんみん みな だいくに あうべし.
国中の 上下 万民 皆 大苦に 値うべし.
これ ひとえに じょうぎょうぼさつの かびを かおりて.
此れ ひとへに 上行菩薩の かびを かをほりて.
ほけきょうの だいもくを ひろむる ものを あるいは のり あるいは うち はり.
法華経の 題目を ひろむる 者を 或は のり 或は うち はり.
あるいは るざいし あるいは いのちを たちなんど する ゆえに.
或は 流罪し 或は 命を たちなんど する ゆへに.
ぶつぜんに ちかいを なせし ぼんてん たいしゃく にちがつ してん とうの ほけきょうの ざにて せいじょうを たてて.
仏前に ちかひを なせし 梵天 帝釈 日月 四天 等の 法華経の 座にて 誓状を 立てて.
ほけきょうの ぎょうじゃを あだまん ひとをば.
法華経の 行者を あだまん 人をば.
ふぼの かたき よりも なお つよく いましむべしと ちかう ゆえなりと みえて そうろうに.
父母の かたき よりも なを つよく いましむべしと ちかう ゆへなりと みへて 候に.
いま にちれんに ほんこくに うまれて いっさいきょう ならびに ほけきょうの みょうきょうを もって.
今 日蓮 日本国に 生れて 一切経 並びに 法華経の 明鏡を もて.
にほんこくの いっさいしゅじょうの おもてに ひき むかえたるに.
日本国の 一切衆生の 面に 引 向たるに.
すんぶんも たわがぬ うえ ほとけの しるし たまいし てんぺん ありちよう あり.
寸分も たがはぬ 上 仏の 記し 給いし 天変 あり 地夭 あり.
さだんで この くに ぼうこくと なるべしと かねて しり しかば.
定んで 此の 国 亡国と なるべしと かねて しり しかば.
これを こくしゅに もうす ならば こくどあんのん なるべくも たずね あきらむべし.
これを 国主に 申す ならば 国土安穏 なるべくも たづね あきらむべし.
ぼうこくと なるべき ならば よも もちいじ.
亡国と なるべき ならば よも 用いじ.
もちいぬ ほど ならば にちれんは るざい しざいと なるべしと しりて そうらい しかども.
用いぬ 程 ならば 日蓮は 流罪 死罪と なるべしと しりて 候い しかども.
ほとけ いましめて いわく.
仏 いましめて 云く.
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この ことを しりながら しんみょうを おしみて いっさいしゅじょうに かたらずば.
此の 事を 知りながら 身命を をしみて 一切衆生に かたらずば.
わが かたきたる のみならず いっさいしゅじょうの おんてき なり.
我が 敵たる のみならず 一切衆生の 怨敵 なり.
かならず あびだいじょうに おつべしと しるし たまえり.
必ず 阿鼻大城に 堕つべしと 記し 給へり.
ここに にちれん しんたい わずらいて この ことを もうすならば わが み いかにも なるべし.
此に 日蓮 進退 わづらひて 此の 事を 申すならば 我が 身 いかにも なるべし.
わがみは さて おきぬ.
我が 身は さてをきぬ.
ふぼ きょうだい ならびに 1000まんにんの なかにも ひとりも したがう ものは こくしゅ ばんみんに あだまるべし.
父母 兄弟 並びに 千万人の 中にも 一人も 随う ものは 国主 万民に あだまるべし.
かれら あだまるる ならば ぶっぽうは いまだ わきまえず.
彼等 あだまるる ならば 仏法は いまだ わきまへず.
ひとの せめは たえがたし.
人の せめは たへがたし.
ぶっぽうを ぎょうずるは あんのん なるべしと こそ おもうに.
仏法を 行ずるは 安穏 なるべしと こそ をもうに.
この ほうを たもつに よって だいなん しゅったい するは しんぬ.
此の 法を 持つに よつて 大難 出来 するは しんぬ.
この ほうを じゃほう なりと ひぼうして あくどうに おつべし.
此の 法を 邪法 なりと 誹謗して 悪道に 堕つべし.
これも ふびん なり.
此れも 不便 なり.
また これを もうさずば ぶっせいに いする うえ いっさいしゅじょうの おんてき なり.
又 此れを 申さずは 仏誓に 違する 上 一切衆生の 怨敵 なり.
だいあびじごく うたがいなし.
大阿鼻地獄 疑いなし.
いかんがせんと おもい しかども おもいきって もうし いだしぬ.
いかんがせんと をもひ しかども をもひ切つて 申し 出しぬ.
もうし はじめし うえは また ひきさす べきにも あらざれば.
申し 始めし 上は 又 ひきさす べきにも あらざれば.
いよいよ つより もうせしかば.
いよいよ つより 申せしかば.
ほとけの きもんの ごとく こくおうも あだみ ばんみんも せめき.
仏の 記文の ごとく 国主も あだみ 万民も せめき.
あだを なせしかば てんも いかりて にちがつに だいへん あり.
あだを なせしかば 天も いかりて 日月に 大変 あり.
だいすいせいも しゅつげん しぬ.
大せいせいも 出現 しぬ.
だいちも ふりかえしぬべく なりぬ.
大地も ふりかえしぬべく なりぬ.
どうしうちも はじまり たこく よりも せめるなり.
どしうちも はじまり 他国 よりも せめるなり.
ほとけの きもん すこしも たがわず.
仏の 記文 すこしも たがわず.
にちれんが ほけきょうの ぎょうじゃ なる ことも うたがわず.
日蓮が 法華経の 行者 なる 事も 疑はず.
ただし こぞ かまくら より この ところへ にげいり そうらいし とき.
但し 去年 かまくら より 此の ところへ にげ入り 候いし 時.
みちにて そうらえば おのおのにも もうすべく そうらい しかども もうす ことも なし.
道にて 候へば 各各にも 申すべく 候い しかども 申す 事も なし.
また せんどの ごへんじも もうし そうらわぬ ことは べつの しさいも そうらわず.
又 先度の 御返事も 申し 候はぬ 事は べちの 子細も 候はず.
なにごとにか おのおのをば へだて まいらせ そうろうべき.
なに事にか 各各をば へだて まいらせ 候べき.
あだを なす ねんぶつしゃ ぜんしゅう しんごんしらをも.
あだを なす 念仏者 禅宗 真言師等をも.
ならびに こくしゅ とうをも たすけんが ために こそ もうせ.
並びに 国主 等をも たすけんが ために こそ 申せ.
かれらの あだを なすは いよいよ ふびんに こそ そうらえ.
かれ等の あだを なすは いよいよ 不便に こそ 候へ.
まして いちにちも わが かたとて こころ よせなる ひとびとは いかでか おろか なるべき.
まして 一日も 我が かたとて 心 よせなる 人人は いかでか をろか なるべき.
せけんの おそろしさに さいし ある ひとびとの とおざかるをば ことに よころぶ み なり.
世間の をそろしさに 妻子 ある 人人の とをざかるをば ことに 悦ぶ 身 なり.
にちれんに つけて たすけ やりたる かたわ なき うえ.
日蓮に 付て 助け やりたる かたわ なき 上.
わずかの しょりょうをも めさるる ならば.
わづかの 所領をも 召さるる ならば.
しさいも しらぬ つまこ しょじゅうらが いかに なげかんずらんと こころ ぐるし.
子細も しらぬ 妻子 所従等が いかに なげかんずらんと 心 ぐるし.
しかも こぞの 2がつに ごかんきを ゆりて 3がつの 13にちに さどの くにを たち.
而も 去年の 二月に 御勘気を ゆりて 三月の 十三日に 佐渡の 国を立ち.
どうげつの 26にちに かまくらに いる.
同月の 二十六日に かまくらに 入る.
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どう しがつの ようか さえもんのじょうに あいたりし とき.
同 四月の 八日 平左衛門尉に あひたりし 時.
ようようの ことども といし なかに もうここくは いつ よすべきと もうせ しかば.
やうやうの 事ども 問ひし 中に 蒙古国は いつ よすべきと 申せ しかば.
ことし よすべし.
今年 よすべし.
それにとて にちれん はなして にほんこくに たすくべき もの ひとりも なし.
それにとて 日蓮 はなして 日本国に たすくべき 者 一人も なし.
たすからんと おもい したう ならば.
たすからんと をもひ したう ならば.
にほんこくの ねんぶつしゃと ぜんと りっそうが くびを きって ゆいの はまに かくべし.
日本国の 念仏者と 禅と 律僧等が 頚を 切つて ゆいの はまに かくべし.
それも いまは すぎぬ.
それも 今は すぎぬ.
ただし みな ひとの おもいて そうろうは.
但し 皆 人の をもひて 候は.
にちれんをば ねんぶつしと ぜんと りつを そしると おもいて そうろう.
日蓮をば 念仏師と 禅と 律を そしると をもひて 候.
これは ものの かずにて かずならず.
これは 物の かずにて かずならず.
しんごんしゅうと もうす しゅうが うるわしき にほんこくの だいなるじゅその あくほう なり.
真言宗と 申す 宗が うるわしき 日本国の 大なる 呪咀の 悪法 なり.
こうぼうだいしと じかくだいし この ことに まどいて この くにを ほろぼさんと するなり.
弘法大師と 慈覚大師 此の 事に まどひて 此の 国を 亡さんと するなり.
たとい 2ねん 3ねんに やぶるべき くに なりとも しんごんしに いのらする ほどならば.
設い 二年 三年に やぶるべき 国 なりとも 真言師に いのらする 程ならば.
1ねん はんとしに この くに せめらるべしと もうし きかせて そうらいき.
一年 半年に 此の くに せめらるべしと 申し きかせて 候いき.
たすけんが ために もうすを これほど あだまるる こと なれば.
たすけんが ために 申すを 此程 あだまるる 事 なれば.
ゆりて そうらいし とき さどの くにより いかなる さんちゅう うみべにも まぎれ いる べかり しかども.
ゆりて 候いし 時 さどの 国より いかなる 山中 海辺にも まぎれ 入る べかり しかども.
このことを いまいちど へいのさえもんに もうし きかせて.
此の事を いま一度 平左衛門に 申し きかせて.
にほんこくに せめ のこされん しゅじょうを たすけんが ために のぼりて そうらいき.
日本国に せめ のこされん 衆生を たすけんが ために のぼりて 候いき.
また もうし きかせ そうらいし のちは かまくらに あるべき ならねば.
又 申し きかせ 候いし 後は かまくらに 有るべき ならねば.
あしに まかせて いでし ほどに べんぎにて そうらいしかば.
足に まかせて いでし ほどに 便宜にて 候いしかば.
たとい おのおのは いとわせ たもうとも.
設い 各各は いとはせ 給うとも.
いま いちどは みたて まつらんと ちたび をもい しかども.
今 一度は みたて まつらんと 千度 をもひ しかども.
こころに こころを たたかいて すぎ そうらいき.
心に 心を たたかいて すぎ 候いき.
その ゆえは するがの くには こうどのの ごりょう.
その ゆへは するがの 国は 守殿の 御領.
ことに ふじ なんどは ごけあまごぜんの うちの ひとびと おおし.
ことに ふじ なんどは 後家尼ごぜんの 内の 人人 多し.
こ さいみょうじどの ごくらくじどのの かたきと いきどおらせ たもうならば.
故 最明寺殿 極楽寺殿の かたきと いきどをらせ 給うなれば.
ききつけられば おのおのの おんなげき なるべしと おもいし こころ ばかりなり.
ききつけられば 各各の 御なげき なるべしと おもひし 心 計りなり.
いまに いたるまでも ふびんに おもい まいらせ そうらえば.
いまに いたるまでも 不便に をもひ まいらせ 候へば.
ごへんじ までも もうさず そうらいき.
御返事 までも 申さず 候いき.
この ごぼうたちの ゆきずりにも あなかしこ あなかしこ.
この 御房たちの ゆきすりにも あなかしこ あなかしこ.
ふじ かじまの へんへ たちよる べからずと もうせども.
富士 賀島の 辺へ 立ちよる べからずと 申せども.
いかが そうろうらんと おぼつかなし.
いかが 候らんと をぼつかなし.
ただし しんごんの ことぞ ごふしんに わたらせ たまい そうろうらん.
ただし 真言の 事ぞ 御不審に わたらせ 給い 候らん.
いかにと ほうもんは もうすとも おんこころへ あらんこと かたし.
いかにと 法門は 申すとも 御心へ あらん事 かたし.
ただ がんぜんの ことを もって しらしめせ.
但 眼前の 事を もつて 知しめせ.
おきのほうおうは にんのう 82だい じんむ よりは 2000よねん.
隠岐の法皇は 人王 八十二代 神武 よりは 二千余年.
てんしょうだいじん いり かわらせ たまいて にんのうと ならせ たもう.
天照太神 入り かわらせ 給いて 人王と ならせ 給う.
いかなる ものか てき すべき うえ きんめい より おきのほうおうに いたるまで.
いかなる 者か 敵 すべき 上 欽明 より 隠岐の法皇に いたるまで.
かんど くだら しらぎ こうらい より わたり きたる だいほう ひほうを.
漢土 百済 新羅 高麗 より わたり 来る 大法 秘法を.
えいざん とうじ おんじょう しちじ ならびに にほんこくに あがめ おかれて そうろう.
叡山 東寺 園城 七寺 並びに 日本国に あがめを かれて 候.
これは みな くにを しゅごし こくしゅを まもらんが ためなり.
此れは 皆 国を 守護し 国主を まほらん ためなり.
おきのほうおう よを かまくらに とられたる ことを くちおしと おぼして.
隠岐の法皇 世を かまくらに とられたる 事を 口をしと をぼして.
えいざん とうじ とうの こうそうらを かたらいて.
叡山 東寺 等の 高僧等を かたらひて.
よしときが いのちを めしとれと ぎょうぜし なり.
義時が 命を めしとれと 行ぜし なり.
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この こと 1ねん 2ねん ならず.
此の 事 一年 二年 ならず.
すうねん ちょうぶく せしに ごんのたいふどのは ゆめゆめ しろしめさざり しかば いっぽうも ぎょうじ たまわず.
数年 調伏 せしに 権の大夫殿は ゆめゆめ しろしめさざり しかば 一法も 行じ 給はず.
また ぎょうずとも かなうべしとも おぼえず.
又 行ずとも 叶うべしとも をぼへず.
ありしに てんし いくさに まけさせ たまいて おきのくにへ つかわされ させたもう.
ありしに 天子 いくさに まけさせ 給いて 隠岐の国へ つかはされ させ給う.
にほんこくの おうと なる ひとは てんしょうだいじんの みたまの いり かわらせ たもう おう なり.
日本国の 王と なる 人は 天照太神の 御魂の 入り かわらせ 給う 王 なり.
せんしょうの じゅうぜんかいの ちからと いい いかでか くにじゅうの ばんみんの なかには かたぶくべき.
先生の 十善戒の 力と いひ いかでか 国中の 万民の 中には かたぶくべき.
たとい とがありとも つみ ある おやを とがなき この あだむにて こそ そうらいぬらめ.
設い とがありとも つみ ある をやを 失なき 子の あだむにて こそ 候いぬらめ.
たとい おやに じゅうざい ありとも この みとして とがに おこなわんに てん うけ たもうべしや.
設い 親に 重罪 ありとも 子の 身として 失に 行はんに 天 うけ 給うべしや.
しかるに おきのほうおうの はじに あわせ たまいしは いかなる たいかぞ.
しかるに 隠岐の法皇の はぢに あはせ 給いしは いかなる 大禍ぞ.
これ ひとえに ほけきょうの おんてきたる にほんこくの しんごんしをかたらわせ たまいし ゆえなり.
此れ ひとへに 法華経の 怨敵たる 日本国の 真言師を かたらはせ 給いし ゆへなり.
いっさいの しんごんしは かんじょうと もうして しゃかぶつ とうを はちようの れんげに かきて.
一切の 真言師は 潅頂と 申して 釈迦仏 等を 八葉の 蓮華に かきて.
これを あしに ふみて ひめごとと するなり.
此れを 足に ふみて 秘事と するなり.
かかる ふしぎの ものども しょざん しょじの べっとうと あおぎて もてなす ゆえに.
かかる 不思議の 者ども 諸山 諸寺の 別当と あおぎて もてなす ゆへに.
たみの てに わたりて げんしんに はじに あいぬ.
たみの 手に わたりて 現身に はぢに あひぬ.
この だいあくほう またかまくらに くだって ごいちもんを すかし.
此の 大悪法 又 かまくらに 下つて 御一門を すかし.
にほんこくを ほろぼさんと するなり.
日本国を ほろぼさんと するなり.
この こと さいだいじ なりしかば でしらにも かたらず.
此の 事 最大事 なりしかば 弟子等にも かたらず.
ただ いつわり おろかにて ねんぶつと ぜん とう ばかりを そしりて きかせしなり.
只 いつはり をろかにて 念仏と 禅 等 計りを そしりて きかせしなり.
いまは また もちいられぬ こと なれば.
今は 又 用いられぬ 事 なれば.
しんみょうも おしまず でしどもにも もうすなり.
身命も おしまず 弟子どもにも 申すなり.
こう もうせば いよいよ ごふしん あるべし.
かう 申せば いよいよ 御不審 あるべし.
にちれん いかに いみじく とうとくとも じかく こうぼうに すぐるべきか.
日蓮 いかに いみじく 尊くとも 慈覚 弘法に すぐるべきか.
この うたがい すべて はるからず.
この 疑 すべて 晴るからず.
いかにとか すべき.
いかにとか すべき.
ただし みな ひとは にくみ そうろうに すこしも ごしんようの ありし うえ.
但し 皆 人は にくみ 候に すこしも 御信用の ありし 上.
これまでも おんたずねの そうろうは ただ こんじょうの ばかりの おんことには よも そうらわじ.
此れまでも 御たづねの 候は 只 今生 計りの 御事には よも 候はじ.
さだめて かこの ゆえか.
定めて 過去の ゆへか.
ごしょろうの だいじに ならせ たまいて そうろう なること あさましく そうろう.
御所労の 大事に ならせ 給いて 候 なる事 あさましく 候.
ただし つるぎは かたきの ため くすりは やまいの ため.
但し つるぎは かたきの ため 薬は 病の ため.
あじゃせおうは ちちを ころし ほとけの かたきと なれり.
阿闍世王は 父を ころし 仏の 敵と なれり.
あくそう みに いで のちに ほとけに きふくし.
悪瘡 身に 出で 後に 仏に 帰伏し.
ほけきょうを たもち しかば あくそうも へいゆし.
法華経を 持ち しかば 悪瘡も 平癒し.
いのちを 40ねん のべたりき.
寿をも 四十年 のべたりき.
しかも ほけきょうは えんぶだいの ひとの やまいの りょうやくと こそ とかれて そうらえ.
而も 法華経は 閻浮提人病之良薬と こそ とかれて 候へ.
えんぶの うちの ひとは やまいの み なり.
閻浮の 内の 人は 病の 身 なり.
ほけきょうの くすり あり.
法華経の 薬 あり.
さんじ すでに そうおうしぬ.
三事 すでに 相応しぬ.
いっしん いかでか たすからざるべき.
一身 いかでか たすからざるべき.
ただし おんうたがいの わたり そうらわんをば ちから およばず.
但し 御疑の わたり 候はんをば 力 をよばず.
なんみょうほうれんげきょう なんみょうほうれんげきょう.
南無妙法蓮華経 南無妙法蓮華経.
かくじょうぼう ほうきぼうに たびたび よませて きこしめせ きこしめせ.
覚乗房 はわき房に 度度 よませて きこしめせ きこしめせ.
しちがつ 12にち.
七月 十二日.
にちれん かおう.
日蓮 花押.
しんじょう たかはしろくろう ひょうえ にゅうどうどの ごへんじ.
進上 高橋六郎 兵衛 入道殿 御返事.
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