b1514から1515.
単衣抄 (ひとえ しょう).
日蓮大 聖人 54歳 御作.

 

b1514

ひとえ しょう.
単衣 抄.

けんじ がんねん 8がつ 54さい おんさく.
建治 元年 八月 五十四歳 御作.

ひとえ いちりょう おくり たまい おわんぬ.
単衣 一領 送り 給い 候い 畢んぬ。.

きろうこくには ろうしゃを すて にほんこくには いま ほけきょうの ぎょうじゃを すつ.
棄老国には 老者を すて・ 日本国には 今 法華経の 行者を すつ、.

そもそも この くに かいびゃくより ちじん 5だい にんのう 100だい あり.
抑 此の 国 開闢より 天神 七代・ 地神 五代・ 人王 百代 あり、.

じんむ より いご 90だい きんめい より ぶっぽう はじまりて.
神武 より 已後 九十代 欽明より 仏法 始まりて.

60だい 700よねんに およべり.
六十代・ 七百余年に 及べり、.

その なかに ふぼを ころす もの ちょうてきと なる もの.
其の 中に 父母を 殺す 者・ 朝敵と なる 者・.

さんぞく かいぞく かずを しらざれども いまだ きかず.
山賊・ 海賊・ 数を 知らざれども・ いまだ きかず.

ほけきょうの ゆえに にちれん ほど ひとに にくまれたる ものは なし.
法華経の 故に 日蓮 程・ 人に 悪まれたる 者は なし、.

あるいは おうに にくまれ たれども たみには にくまれず.
或は 王に 悪まれ たれども 民には 悪まれず、.

あるいは そうは にくめば ぞくは もれ.
或は 僧は 悪めば 俗は もれ、.

おとこは にくめば おんなは もれ.
男は 悪めば 女は もれ、.

あるいは ぐにんは にくめば ちしゃは もれたり.
或は 愚人は 悪めば 智人は もれたり、.

これは おう よりは たみ だんじょ よりは そうあま.
此れは 王 よりは 民・ 男女 よりは 僧尼・.

ぐにん よりは ちじん にくむ.
愚人 よりは 智人 悪む・.

あくにん よりは ぜんにん にくむ.
悪人 よりは 善人 悪む、.

ぜんだいみもんの みなり こうだいにも あるべしとも おぼえず.
前代未聞の 身なり 後代にも 有るべしとも おぼえす、.

ゆえに しょうねん 32 より ことし 54に いたるまで 20よねんが あいだ.
故に 生年 三十二 より 今年 五十四に 至るまで 二十余年の 間・.

あるいは てらを おいだされ あるいは ところを おわれ.
或は 寺を 追い 出され・ 或は 処を おわれ・.

あるいは しんるいを わずらわされ あるいは ようちに あい.
或は 親類を 煩はされ・ 或は 夜打ちに あひ・.

あるいは かっせんに あい あるいは あっく かずを しらず.
或は 合戦に あひ・ 或は 悪口 数を しらず・.

あるいは うたれ あるいは てを おう.
或は 打たれ 或は 手を 負う・.

あるいは でしを ころされ あるいは くびを きられんとし.
或は 弟子を 殺され 或は 頚を 切られんとし・.

あるいは るざい りょうどに およべり.
或は 流罪 両度に 及べり、.

20よねんが あいだ いちじ かたときも こころ やすきこと なし.
二十余年が 間・一時 片時も 心 安き 事なし、.

よりともの しちねんの かっせんも ひまや ありけん.
頼朝の 七年の 合戦も ひまや ありけん、.

よりよしが 12ねんの とうじょうも いかでか これには すぐべき.
頼義が 十二年の 闘諍も 争か 是には すぐべき。.

ほけきょうの だい4に いわく.
法華経の 第四に 云く.

「にょらいの げんざいにすら なお おんしつ おおし」とう うんぬん.
「如来の 現在にすら 猶 怨嫉 多し」等 云云、.

だい5に いわく「いっさいせけん あだ おおくして しんじがたし」とう うんぬん.
第五に 云く「一切世間 怨 多くして 信じ難し」等 云云、.

てんだいだいしも おそらくは いまだ この きょうもんをば よみ たまわず.
天台大師も 恐らくは いまだ 此の 経文をば よみ 給はず、.

いっさいせけん みな しんじゅせし ゆえなり.
一切世間 皆 信受せし 故なり、.

でんぎょうだいしも および たまう べからず.
伝教大師も 及び 給う べからず.

きょうめつどごの きょうもんに ふごう せざるが ゆえに.
況滅度後の 経文に 符合 せざるが 故に、.

にちれん にほんこくに しゅつげん せずば にょらいの きんげんも むなしくなり.
日蓮・ 日本国に 出現 せずば 如来の 金言も 虚くなり・.

たほうの しょうめいも なにかせん.
多宝の 証明も・ なにかせん・.

じっぽうの しょぶつの みことばも もうごと なりなん.
十方の 諸仏の 御語も 妄語と なりなん、.

ほとけ めつご 2220よねん.
仏 滅後 二千二百二十余年・.

がっし かんど にほんに いっさいせけん たおんなんしんの ひと なし.
月氏・ 漢土・ 日本に 一切世間 多怨難信の 人 なし、.

にちれん なくば ぶつご すでに たえなん.
日蓮 なくば 仏語 既に 絶えなん、.

かかる み なれば そぶが ごとく ゆきを しょくとして いのちを つぎ.
かかる 身 なれば 蘇武が 如く 雪を 食として 命を 継ぎ・.

りりょうが ごとく みのを きて よを すごす.
李陵が 如く 簑を きて 世を すごす、.

さんりんに まじって このみ なき ときは むなしくして りょうみっかを すぐ.
山林に 交つて 果 なき 時は 空くして 両三日を 過ぐ・.

しかの かわ やぶぬれば はだかにして 3 4つきに およべり.
鹿の 皮 破ぬれば 裸にして 三 四月に 及べり、.

かかるものをば なんとしてか あわれと おぼしけん.
かかる者をば 何としてか 哀と おぼしけん、.

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いまだ けんざんにも いらぬ ひとの はだえをかくす ころもを.
未だ 見参にも 入らぬ 人の 膚を 隠す 衣を.

おくり たび そうろうこそ なんとも ぞんじがたく そうらえ.
送り 給 候こそ 何とも 存じがたく 候へ、.

この かたびらを きて ぶつぜんに もうでて ほけきょうを よみ たてまつり そうらいなば.
此の 帷を きて 仏前に 詣でて 法華経を 読み 奉り 候いなば・.

おんきょうの もじは 69384じ.
御経の 文字は 六万九千三百八十四字・.

ひとつ ひとつの もじは みな こんじきの ほとけ なり.
一 一の 文字は 皆 金色の 仏 なり、.

ころもは 1つ なれども 69384ぶつに ひとつ ひとつに きせ まいらせ たまえるなり.
衣は 一つ なれども 六万九千三百八十四仏に 一 一に きせ まいらせ 給へるなり、.

されば この ころもを たびて そうらわば ふさい ふたり ともに.
されば 此の 衣を 給て 候わば 夫妻 二人 ともに.

この ほとけ おんたずね ましまして わが だんな なりと まもらせ たまうらん.
此の 仏 御尋ね 坐して 我が 檀那 なりと 守らせ 給うらん、.

こんじょうには いのりと なり たからと なり.
今生には 祈りと なり 財と なり・.

ごりんじゅうの ときは つきと なり ひと なり みちと なり.
御臨終の 時は 月と なり・ 日と なり・ 道と なり・.

はしと なり ちちと なり ははと なり ぎゅうばと なり.
橋と なり・ 父と なり・ 母と なり・ 牛馬と なり・.

こしと なり くるまと なり れんげと なり やまと なり.
輿と なり・ 車と なり・ 蓮華と なり・山と なり・.

ふたりを りょうぜんじょうどへ むかえとり まいらせ たまうべし.
二人を 霊山浄土へ 迎え取り まいらせ 給うべし、.

なんみょうほうれんげきょう なんみょうほうれんげきょう.
南無妙法蓮華経・ 南無妙法蓮華経。.

けんじ がんねん きのとい 8がつ.
建治 元年 乙亥 八月.

にちれん かおう.
日蓮 花押 .

このふみは ふじしろうどのにょうぼうと つねに よりあいて ごらん あるべく そうろう.
此の 文は 藤四郎殿女房と 常に より合いて 御覧 あるべく 候。.

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