b1526から1528.
上野殿御消息(うえのどの ごしょうそく)
別名、四徳四恩御書(しとく しおん ごしょ).
日蓮大 聖人 54歳御作.

 

b1526

うえのどの ごしょうそく.
上野殿 御消息.

けんじ がんねん 54さい おんさく.
建治 元年 五十四歳 御作.

あたう なんじょうときみつ.
与 南条時光.

さんぜの しょぶつの よに いでさせ たまいても みなみな しおんを ほうぜよと とき.
三世の 諸仏の 世に 出でさせ 給いても 皆皆 四恩を 報ぜよと 説き・.

3こう 5てい こうし ろうし がんかいらの いにしえの けんじんは しとくを しゅせよと なり.
三皇・ 五帝・ 孔子・ 老子・ 顔回等の 古の 賢人は 四徳を 修せよと なり、.

しとくとは 1には ふぼに こう あるべし.
四徳とは・ 一には 父母に 孝 あるべし・.

2には しゅに ちゅう あるべし.
二には 主に 忠 あるべし・.

3には ともに あうて れい あるべし.
三には 友に 合うて 礼 あるべし・.

4には おとれるに あうて じひ あれと なり.
四には 劣れるに 逢うて 慈悲 あれと なり、.

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1に ふぼに こう あれとは.
一に 父母に 孝 あれとは・.

たとい おやは ものに おぼえずとも あしさまなる ことを いうとも.
たとひ 親は ものに 覚えずとも・ 悪さまなる 事を 云うとも・.

いささかも はらを たてず あやまる かおを みせず おやの いうことに いちぶんも たがえず.
聊かも 腹も 立てず 誤る 顔を 見せず・親の 云う事に 一分も 違へず・.

おやに よきものを あたえんと おもいて せめて する こと なくば 1にちに 2 3ど えみて むかえと なり.
親に よき物を 与へんと 思いて せめて する 事 なくば 一日に 二 三度 えみて 向へと なり、.

2に しゅに あうて ちゅう あるべしとは.
二に 主に 合うて 忠 あるべしとは・.

いささかも しゅに うしろめたなき こころ ある べからず.
いささかも 主に うしろめたなき 心 ある べからず、.

たとい わがみは うしなわるとも しゅには かまえて よかれと おもうべし.
たとひ 我が身は 失しなはるとも 主には かまへて よかれと 思うべし、.

かくれての しんあれば あらわれての とく ある なりと うんぬん.
かくれての 信あれば・あらはれての 徳 ある なりと 云云、.

3には ともに あうて れい あれとは.
三には 友に あふて 礼 あれとは.

ともだちの 1にちに 10ど 20ど きたれる ひと なりとも.
友達の 一日に 十度・ 二十度 来れる 人 なりとも.

せんり 2せんり きたれる ひとの ごとく おもうて れいぎ いささか おろそかに おもうべからず.
千里・ 二千里・ 来れる 人の 如く 思ふて 礼儀 いささか・ をろかに 思うべからず、.

4に おとれる ものに じひ あれとは.
四に 劣れる 者に 慈悲 あれとは.

われより おとり たらん ひとをば わが この ごとく おもいて いっさい あわれみ じひ あるべし.
我より 劣り たらん 人をば・ 我が 子の 如く 思いて 一切 あはれみ 慈悲 あるべし、.

これを しとくと いうなり.
此れを 四徳と 云うなり、.

かくの ごとく ふるまうを けんじん とも しょうにん とも いうべし.
是くの 如く 振舞うを 賢人 とも 聖人 とも 云うべし、.

この よつの こと あれば よの ことには よからねども よきもの なり.
此の 四の 事 あれば 余の 事には よからねども よき者 なり、.

かくの ごとく よつの とくを ふるまう ひとは.
是くの 如く 四の 得を 振舞ふ 人は.

げてん 3ぜんかんを よまねども よみたる ひとと なれり.
外典 三千巻を よまねども 読みたる 人と なれり。.

1に ぶっきょうの しおんとは.
一に 仏教の 四恩とは.

1には ふぼの おんを ほうぜよ 2には こくしゅの おんを ほうぜよ 3には いっさいしゅじょうの おんを ほうぜよ 4には さんぽうの おんを ほうぜよ.
一には 父母の 恩を 報ぜよ・ 二には 国主の 恩を 報ぜよ・ 三には 一切衆生の 恩を 報ぜよ・ 四には 三宝の 恩を 報ぜよ、.

1に ふぼの おんを ほうぜよ とは ふぼの しゃくびゃく 2たい わごうして わがみと なる.
一に 父母の 恩を 報ぜよ とは 父母の 赤白 二渧・ 和合して 我が身と なる、.

ははの たいないに やどる こと 270にち くつきの あいだ 37ど しぬる ほどの くるしみ あり.
母の 胎内に 宿る 事・ 二百七十日・ 九月の間・ 三十七度 死る ほどの 苦み あり、.

うみおとすとき たえがたしと おもい ねんずる いき うなじより いづる けむり ぼんてんに いたる.
生落す時 たへがたしと 思ひ 念ずる 息・ 頂より 出づる 煙り 梵天に 至る、.

さて うみおとされて ちちを のむこと 180よこく.
さて 生落されて 乳を のむ事 一百八十余石・.

3ねんが あいだは ふぼの ひざに あそび ひとと なりて ぶっきょうを しんずれば.
三年が 間は 父母の 膝に 遊び 人と なりて 仏教を 信ずれば.

まず この ちちと ははとの おんを ほうずべし.
先づ 此の 父と 母との 恩を 報ずべし、.

ちちの おんの たかき こと しゅみせん なお ひきし ははの おんの ふかき こと たいかい かえって あさし.
父の 恩の 高き 事・ 須弥山 猶 ひきし・ 母の 恩の 深き 事 大海 還つて 浅し、.

あいかまえて ふぼの おんを ほうずべし.
相構えて 父母の 恩を 報ずべし、

2に こくしゅの おんを ほうぜよ とは.
二に 国主の 恩を 報ぜよ とは・.

うまれて このかた えじきの たぐいより はじめて みな これ こくしゅの おんを えて あるもの なれば.
生れて 已来・ 衣食の たぐひより 初めて・ 皆 是れ 国主の 恩を 得て ある者 なれば.

げんせあんのん ごしょうぜんしょと いのり たてまつるべし.
現世安穏・後生善処と 祈り 奉るべし、.

3に いっさいしゅじょうの おんを ほうぜよ とは.
三に 一切衆生の 恩を 報ぜよ とは、.

されば むかしは いっさいの おとこは ちち なり おんなは はは なり.
されば 昔は 一切の 男は 父 なり・ 女は 母 なり・.

しかる あいだ しょうじょうせぜに みな おんある しゅじょう なれば みな ほとけに なれと おもう べきなり.
然る 間・ 生生世世に 皆 恩ある 衆生 なれば 皆 仏に なれと 思ふ べきなり、

4に さんぽうの おんを ほうぜとは.
四に 三宝の 恩を 報ぜとは・.

さいしょじょうどうの けごんきょうを たずぬれば きょうも だいじょう ほとけも ほうしんにょらい にて まします あいだ.
最初成道の 華厳経を 尋ぬれば 経も 大乗・ 仏も 報身如来 にて 坐ます 間・.

にじょうとうは ひるの ふくろう よるの たかの ごとくして.
二乗等は 昼の 梟・ 夜の 鷹の 如くして・.

かれを きくと いえども みみしい めしいの ごとし.
かれを 聞くと いへども・ 耳しゐ・ 目しゐの 如し、.

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しかる あいだ しおんを ほうずべきかと おもうに.
然る 間・ 四恩を 報ずべきかと 思ふに.

にょにんを きらわれたる あいだ ははの おん ほうじがたし.
女人を きらはれたる 間・ 母の 恩 報じがたし、.

つぎに ほとけ あごん しょうじょうきょうを とき たまいしこと 12ねん.
次に 仏・ 阿含・ 小乗経を 説き 給いし事・ 十二年・.

これこそ しょうじょう なれば われらが きに したがうべきかと おもえば.
是こそ 小乗 なれば 我等が 機に したがふべきかと 思へば・.

おとこは 5かい おんなは 10かい ほっしは 250かい あまは 500かいを たもちて.
男は 五戒・ 女は 十戒・ 法師は 二百五十戒・ 尼は 五百戒を 持ちて.

3ぜんの いぎを ぐすべしと ときたれば.
三千の 威儀を 具すべしと 説きたれば・.

まつだいの われら かなうべしとも おぼえねば ははの おん ほうじ がたし.
末代の 我等 かなふべしとも・ おぼえねば 母の 恩 報じ がたし、.

いわんや この きょうにも きらわれたり.
況や 此の 経にも きらはれたり、.

ほうとう はんにゃ 40よねんの きょうぎょうに みな にょにんを きらわれたり.
方等・般若・四十余年の 経経に 皆 女人を きらはれたり、.

ただ てんにょじょうぶつきょう かんぎょうとうに すこし にょにんの とくどうの きょうもん ありと いえども.
但 天女成仏経・観経等に すこし 女人の 得道の 経文 有りと いへども・.

ただ な のみ あって じつ なきなり.
但 名 のみ 有つて 実 なきなり、.

その うえ みけんしんじつの きょう なれば いかんが ありけん.
其の 上 未顕真実の 経 なれば 如何が 有りけん、.

40よねんの きょうぎょうに みな にょにんを きらわれたり.
四十余年の 経経に 皆 女人を 嫌われたり、.

また さいごに とき たまいたる ねはんぎょうにも にょにんを きらわれたり.
又 最後に 説き 給いたる 涅槃経にも 女人を 嫌はれたり、.

いずれか 4おんを ほうずる きょう ありと たずぬれば.
何れか 四恩を 報ずる 経 有りと 尋ぬれば.

ほけきょう こそ にょにんじょうぶつ する きょう なれば.
法華経 こそ 女人成仏 する 経 なれば、.

8さいの りゅうにょ じょうぶつし ほとけの いぼきょうどんみ やしゅたらびくに きべつに あづかりぬ.
八歳の 竜女・ 成仏し・ 仏の 姨母キョウ曇弥・ 耶輸陀羅比丘尼 記ベツに あづかりぬ、.

されば われらが ははわ ただ にょにんの からだにて こそ そうらえ.
されば 我等が 母は 但 女人の 体にて こそ 候へ・.

ちくしょうにも あらず じゃしんにも あらず はっさいの りゅうにょだにも ほとけに なる.
畜生にも あらず 蛇身にも あらず・ 八歳の 竜女だにも 仏に なる、.

いかんぞ この きょうの ちからにて わが ははの ほとけに ならざるべき.
如何ぞ 此の 経の 力にて 我が 母の 仏に ならざるべき、.

されば ほけきょうを たもつ ひとは ちちと ははとの おんを ほうずるなり.
されば 法華経を 持つ 人は 父と 母との 恩を 報ずるなり、.

わが こころには ほうずるとは おもわねども この きょうの ちからにて ほうずるなり.
我が 心には 報ずると 思はねども 此の 経の 力にて 報ずる なり。.

しかる あいだ しゃか たほうとうの じっぽう むりょうの ほとけ じょうぎょう じゆらの ぼさつも.
然る 間・ 釈迦・ 多宝等の 十方・ 無量の 仏・ 上行 地涌等の 菩薩も・.

ふげん もんじゅらの しゃっけの だいしも しゃりほつらの しょだいしょうもんも.
普賢・ 文殊等の 迹化の 大士も・ 舎利弗等の 諸大声聞も・.

だいぼんてんのう にちがつらの みょうしゅしょてんも 8ぶおうも じゅうらせつにょらも.
大梵天王・ 日月等の 明主諸天も・ 八部王も・ 十羅刹女等も・.

にほんこくじゅうの だいしょうの しょじんも.
日本国中の 大小の 諸神も・.

そうじて この ほけきょうを つよく しんじ まいらせて よねんなく.
総じて 此の 法華経を 強く 信じ まいらせて 余念なく.

ひとすじに しんこうする ものをば かげの みに そうが ごとく まもらせ たまい そうろうなり.
一筋に 信仰する 者をば 影の 身に そふが 如く 守らせ 給ひ 候なり、.

あいかまえて あいかまえて こころを ひるがえさず.
相構て 相構て 心を 翻へさず・.

ひとすじに しんじ たまうならば げんせあんのん ごしょうぜんしょ なるべし.
一筋に 信じ 給ふならば・ 現世安穏・ 後生善処 なるべし、.

きょうきょう きんげん.
恐恐 謹言。.

にちれん かおう.
日蓮 花押 .

うえのどの
上野殿

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