b1545から1546.
上野殿御返事 (うえのどの ごへんじ)
別名、末法要法御書 (まっぽう ようほうごしょ).
日蓮大聖人 57歳 御作.

 

b1545

うえのどの ごへんじ.
上野殿御返事.

こうあん がんねん 4がつ ついたち 57さい おんさく.
弘安 元年 四月 一日 五十七歳 御作.

あたう なんじょうしちろうじろう.
与 南条七郎次郎.

はくまい いっと いも いちだ こんにゃく 5まい.
白米 一斗 いも 一駄 こんにやく 五枚.

わざと おくりたび そうらい おわんぬ.
わざと 送り給び 候い 畢んぬ.

なによりも いしかわの ひょうえにゅうどうどのの ひめごぜんの.
なによりも 石河の 兵衛入道殿の ひめ御前の.

たびたび おんふみを つかわし たりしが.
度度 御ふみを つかはし たりしが.

3がつの じゅうしごやげにて そうらいし やらん おんふみ ありき.
三月の 十四五やげにて 候し やらむ 御ふみ ありき.

この よのなかを みそうろうに やまいなき ひとも.
この 世の中を み候に 病なき 人も.

こねん なんどを すぐべしとも みえ そうらわぬ うえ.
こねん なんどを すぐべしとも みへ 候はぬ 上.

もとより やまいものにて そうろうが すでに きゅうに なりて そうろう.
もとより 病ものにて 候が すでに きうに なりて 候.

さいごの おんふみなりと かかれて そうらいしが.
さいごの 御ふみなりと かかれて 候いしが.

されば ついに はかなく ならせ たまいぬるか.
されば つゐに はかなく ならせ 給いぬるか.

りんじゅうに なむあみだぶつと もうし あわせて そうろう ひとは.
臨終に 南無阿弥陀仏と 申し あはせて 候 人は.

ほとけの きんげん なれば いちじょうの おうじょうと こそ ひとも われも ぞんじ そうらえ.
仏の 金言 なれば 一定の 往生と こそ 人も 我も 存じ 候へ.

しかれども いかなる ことにてや そうらいけん.
しかれども いかなる 事にてや 候いけん.

ほとけの くいかえさせ たまいて みけんしんじつ しょうじきしゃほうべんと.
仏の くひかへさせ 給いて 未顕真実 正直捨方便と.

とかせ たまいて そうろうが あさましく そうろうぞ.
とかせ 給いて 候が あさましく 候ぞ.

これを にちれんが もうし そうらえば そらごと うわのそら なりと.
此れを 日蓮が 申し 候へば そら事 うわのそら なりと.

にほんこくには いかられ そうろう.
日本国には いかられ 候.

これ のみならず ほとけの しょうじょうきょうには じっぽうに ほとけ なし.
此れ のみならず 仏の 小乗経には 十方に 仏 なし.

いっさいしゅじょうに ぶっしょう なしと とかれて そうらえども.
一切衆生に 仏性 なしと とかれて 候へども.

だいじょうきょうには じっぽうに ほとけ まします.
大乗経には 十方に 仏 まします.

いっさいしゅじょうに ぶっしょう ありと とかれて そうらえば.
一切衆生に 仏性 ありと とかれて 候へば.

たれか しょうじょうきょうを もちい そうろうべき.
たれか 小乗経を 用い 候べき.

みな だいじょうきょうを こそ しんじ そうらえ.
皆 大乗経を こそ 信じ 候へ.

これ のみならず ふしぎの ちがいめども そうろうぞかし.
此れ のみならず ふしぎの ちがいめども 候ぞかし.

ほけきょうは しゃかぶつ いこんとうの きょうぎょうを みな くいかえし うちやぶりて.
法華経は 釈迦仏 已今当の 経経を 皆 くひかへし うちやぶりて.

この きょうのみ しんじつ なりと とかせ たまいて そうらい しかば みでしら もちいること なし.
此の 経のみ 真実 なりと とかせ 給いて 候い しかば 御弟子等 用ゆる事 なし.

そのとき たほうぶつ しょうめいを くわえ じっぽうの しょぶつ したを ぼんてんに つけ たまいき.
爾の時 多宝仏 証明を くわへ 十方の 諸仏 舌を 梵天に つけ 給いき.

さて たほうぶつは とびらを たて じっぽうの しょぶつは ほんどに かえらせ たまいて のちは.
さて 多宝仏は とびらを たて 十方の 諸仏は 本土に かへらせ 給いて 後は.

いかなる きょうぎょう ありて ほけきょうを しゃかぶつ やぶらせ たもうとも.
いかなる 経経 ありて 法華経を 釈迦仏 やぶらせ 給うとも.

たにんわえに なりて やぶりがたし.
他人わゑに なりて やぶりがたし.

しかれば ほけきょう いごの きょうぎょう ふげんきょう ねはんぎょう とうには.
しかれば 法華経 已後の 経経 普賢経 涅槃経 等には.

ほけきょうをば ほむる ことは あれども そしる ことなし.
法華経をば ほむる 事は あれども そしる 事なし.

しかるを しんごんしゅうの ぜんむいら ぜんしゅうの そしら これを やぶれり.
而るを 真言宗の 善無畏等 禅宗の 祖師等 此れを やぶれり.

にほんこく みな このことを しんじぬ.
日本国 皆 此の事を 信じぬ.

れいせば まさかど さだとう なんどに かたらわれし ひとびとの ごとし.
例せば 将門 貞任 なんどに かたらはれし 人人の ごとし.

にほんこく すでに しゃか たほう じっぽうの ほとけの だいおんてきと なりて.
日本国 すでに 釈迦 多宝 十方の 仏の 大怨敵と なりて.

すうねんに なりそうらえば ようやく やぶれゆく ほどに.
数年に なり候へば やうやく やぶれゆく ほどに.

また こう もうすものを おんあだみ あり.
又 かう 申す者を 御あだみ あり.

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b1546

わざわいに わざわいの ならべる ゆえに.
わざはひに わざはひの ならべる ゆへに.

この こくど すでに てんの せめを かおり そうらわんずるぞ.
此の 国土 すでに 天の せめを かほり 候はんずるぞ.

この ひとは せんぜの しゅくごうか いかなることぞ.
此の 人は 先世の 宿業か いかなる事ぞ.

りんじゅうに なんみょうほうれんげきょうと となえさせ たまいける ことは.
臨終に 南無妙法蓮華経と 唱えさせ 給いける 事は.

いちげんの かめの うきぎの あなに いり.
一眼の かめの 浮木の 穴に 入り.

てん より くだす いとの だいちの はりの あなに いるが ごとし.
天 より 下 いとの 大地の はりの 穴に 入るが ごとし.

あら ふしぎ ふしぎ.
あら ふしぎ ふしぎ.

また ねんぶつは むけんじごくに おつると もうす ことをば.
又 念仏は 無間地獄に 堕つると 申す 事をば.

きょうもんに ふんみょうなるをば しらずして.
経文に 分明なるをば しらずして.

みなひと にちれんが くちより いでたりと おもえり.
皆人 日蓮が 口より 出でたりと おもへり.

てんは まつげの ごとしと もうすは これなり.
天は まつげの ごとしと 申すは これなり.

こくうの とおきと まつげの ちかきと ひと みなみる こと なきなり.
虚空の 遠きと まつげの 近きと 人 みなみる 事 なきなり.

この あまごぜんは にちれんが ほうもんだに ひがごとに そうらわば.
此の 尼御前は 日蓮が 法門だに ひが事に 候はば.

よも りんじゅうには しょうねんには じゅうし そうらわじ.
よも 臨終には 正念には 住し 候はじ.

また にちれんが でしらの なかに なかなか ほうもん しりたげに そうろう ひとびとは.
又 日蓮が 弟子等の 中に なかなか 法門 しりたりげに 候 人人は.

あしく そうろうげに そうろう.
あしく 候げに 候.

なんみょうほうれんげきょうと もうすは ほけきょうの なかの かんじん.
南無妙法蓮華経と 申すは 法華経の 中の 肝心.

ひとのなかの たましいの ごとし.
人の 中の 神の ごとし.

これに ものを ならぶれば きさきの ならべて におうを おとことし.
此れに ものを ならぶれば きさきの ならべて 二王を おとことし

ないし きさきの だいじん いげに ないない とつぐが ごとし.
乃至 きさきの 大臣 已下に なひなひ とつぐが ごとし.

わざわいの みなもと なり.
わざはひの みなもと なり.

しょうほう ぞうほうには この ほうもんを ひろめず.
正法 像法には 此の 法門を ひろめず.

よきょうを うしなわじが ためなり.
余経を 失わじが ためなり.

いま まっぽうに いりぬれば よきょうも ほけきょうも せんなし.
今 末法に 入りぬれば 余経も 法華経も せんなし.

ただ なんみょうほうれんげきょう なるべし.
但 南無妙法蓮華経 なるべし.

こう もうし いだして そうろうも わたくしの はからいには あらず.
かう 申し 出だして 候も わたくしの 計には あらず.

しゃか たほう じっぽうの しょぶつ じゆせんがいの おんはからい なり.
釈迦 多宝 十方の 諸仏 地涌千界の 御計 なり.

この なんみょうほうれんげきょうに よじを まじえば ゆゆしき ひがごと なり.
此の 南無妙法蓮華経に 余事を まじへば ゆゆしき ひが事 なり.

ひ いでぬれば ともしび せんなし.
日 出でぬれば とほしび せんなし.

あめの ふるに つゆ なにの せんか あるべき.
雨の ふるに 露 なにの せんか あるべき.

えいじに ちちより ほかの ものを やしなう べきか.
嬰児に 乳より 外の ものを やしなう べきか.

りょうやくに また くすりを くわえぬる ことなし.
良薬に 又 薬を 加えぬる 事なし.

この にょにんは なにと なけれども.
此の 女人は なにと なけれども.

しぜんに この ぎに あたりて しおおせるなり.
自然に 此の 義に あたりて しををせるなり.

とうとし とうとし.
たうとし たうとし.

きょうきょう きんげん.
恐恐 謹言.

こうあん がんねん 4がつ ついたち.
弘安 元年 四月 一日.

にちれん かおう.
日蓮 花押 .

うえのどの ごへんじ.
上野殿 御返事.

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