うえのどの ごへんじ.
上野殿 御返事.
はくまい いちだ おくり たび おわんぬ.
白米 一だ をくり 給び 了んぬ。.
いっさいの ことは ときによる ことに そうろうか.
一切の 事は 時による 事に 候か、.
はるは はな あきは つきと もうす ことも とき なり.
春は 花・ 秋は 月と 申す 事も 時 なり、.
ほとけ よに いでさせ たまいし ことは ほけきょうの ためにて そうらい しかども.
仏も 世に いでさせ 給いし 事は 法華経の ためにて 候い しかども・.
40よねんは とかせた まわず.
四十余年は とかせ 給はず、.
その よしを きょうもんに とかれて そうろうには.
其の 故を 経文に とかれて 候には.
せつじいまだいたらざるゆえ とうと うんぬん.
説時未至故 等と 云云、.
なつ あつわたの こそで ふゆ かたびらを たびて そうろうは うれしき こと なれども.
なつ 厚綿の こそで・ 冬 かたびらを たびて 候は・ うれしき 事 なれども・.
ふゆの こそで なつの かたびらには すぎず.
ふゆの こそで・ なつの かたびらには・ すぎず・.
うえて そうろう ときの こがね かつせる ときの ごりょうは うれしき こと なれども.
うへて 候 時の こがね・ かつせる 時の 御料は・ うれしき 事 なれども・.
はんと みずとには すぎず.
はんと 水とには すぎず、.
ほとけに つちを まいらせて そうろう ひと ほとけと なり.
仏に 土を まいらせて 候 人・ 仏と なり・.
たまを まいらせて じごくへ ゆくと もうす こと これか.
玉を まいらせて 地獄へ ゆくと 申す こと・ これか。.
にちれんは にほんこくに うまれて わわく せず.
日蓮は 日本国に 生れて わわく せず・.
ぬすみ せず かたがたの とが なし.
ぬすみ せず・ かたがたの とが なし、.
まつだいの ほっしには とが うすき み なれども.
末代の 法師には・ とが うすき 身 なれども・.
もんを このむ おうに ぶの すてられ.
文を このむ 王に 武の すてられ・.
いろを このむ ひとに しょうじきものの にくまるるが ごとく.
いろを このむ 人に 正直物の にくまるるが ごとく・.
ねんぶつと ぜんと しんごんと りつとを しんずる よに おうて ほけきょうを ひろむれば.
念仏と 禅と 真言と 律とを 信ずる 代に 値うて 法華経を・ ひろむれば.
おうしん ばんみんに にくまれて けっくは さんちゅうに そうらえば.
王臣・ 万民に にくまれて・ 結句は 山中に 候へば.
てん いかんが はからわせ たまうらん.
天 いかんが 計らわせ 給うらむ、.
ごしゃくの ゆき ふりて もとよりも かよわぬ やまみち ふさがり といくる ひとも なし.
五尺の ゆき ふりて 本よりも・ かよわぬ 山道 ふさがり・ といくる 人も なし、.
ころもも うすくて かん ふせぎがたし.
衣も うすくて・ かん ふせぎがたし・.
しょく たえて いのち すでに おわりなんとす.
食 たへて 命 すでに・ をはりなんとす、.
かかる きざみに いのち さまたげの おんとぶらい.
かかる きざみに・ いのち さまたげの 御とぶらひ・.
かつは よろこび かつは なげかし.
かつは よろこび・ かつは なけかし、.
いちどに おもい きって うえしなんと あんじ きって そうらいつるに.
一度に をもひ 切つて・ うへしなんと・ あんじ 切つて 候いつるに・.
わずかの ともしびに あぶらを いり そえられたるが ごとし.
わづかの・ ともしびに・ あぶらを 入 そへられたるが ごとし、.
あわれ あわれ とうとく めでたき おんこころかな.
あわれ あわれ たうとく・ めでたき 御心かな、.
しゃかぶつ ほけきょう さだめて おんはからい そうらわんか.
釈迦仏・ 法華経 定めて 御計らい 給はんか、.
きょうきょう きんげん.
恐恐 謹言。.
こうあん 2ねん 12がつ 27にち.
弘安 二年 十二月 廿七日.
にちれん かおう.
日蓮 花押 .
うえのどの ごへんじ.
上野殿 御返事. |
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