b1574から1575.
上野殿御返事(うえのどの ごへんじ)
別名、須達長者御書(すだつちょうじゃ ごしょ).
日蓮大 聖人 59歳御作.

 

b1574

うえのどの ごへんじ.
上野殿 御返事.

がもく いっかんもん おくり たまい おわんぬ.
鵞目 一貫文 送り 給い 了んぬ、.

おんこころざしの そうらえば もうし そうろうぞ.
御心ざしの 候へば 申し 候ぞ・.

よく ふかき ごぼうと おぼしめす こと なかれ.
よく ふかき 御房と おぼしめす 事 なかれ。.

ほとけに やすやすと なる ことの そうろうぞ おしえ まいらせ そうらわん.
仏に やすやすと なる 事の 候ぞ・ をしへ まいらせ 候はん、.

ひとの ものを おしうると もうすは くるまの おもけれども あぶらを ぬりて まわり.
人の ものを をしふると 申すは 車の おもけれども 油を ぬりて まわり・.

ふねを みずに うかべて ゆき やすき ように おしえ そうろうなり.
ふねを 水に うかべて ゆき やすき やうに をしへ 候なり、.

ほとけに なりやすき ことは べつの よう そうらわず.
仏に なりやすき 事は 別の やう 候はず、.

かんばつに かわける ものに みずを あたえ.
旱魃に かわける ものに 水を あたへ・.

かんぴょうに こごえたる ものに ひを あたうるが ごとし.
寒冰に こごへたる ものに 火を あたふるが ごとし、.

また 2つ なき ものを ひとに あたえ いのちの たゆるに ひとの せに あうが ごとし.
又 二つ なき 物を 人に あたへ・ 命の たゆるに 人の せに あふが ごとし。.

こんじきおうと もうせし おうは その くにに 12ねんの だいかんばつ あって.
金色王と 申せし 王は 其の 国に 十二年の 大旱魃 あつて.

ばんみん うえ しぬる こと かずを しらず.
万民 飢え 死ぬる 事 かずを しらず、.

かわには しにんを はしとし おかには がいこつを つかとせり.
河には 死人を はしとし・ 陸には がいこつを つかとせり、.

その とき こんじきだいおう だいぼだいしんを おこして おおきに せを ほどこし たまいき.
其の 時・ 金色大王・ 大菩提心を をこして おほきに 施を ほどこし 給いき、.

せすべき もの みな つきて くらの うちに ただ こめ 5しょうばかり のこれり.
せすべき 物 みな つきて 蔵の 内に・ ただ 米 五升 ばかり のこれり、.

だいおうの 1にちの おんくご なりと しんか もうせ しかば.
大王の 一日の 御くご なりと 臣下 申せ しかば・.

だいおう 5しょうの こめを とりいだして いっさいの うえたる ものに.
大王 五升の 米を とり出だして・ 一切の 飢えたる ものに.

あるいは 1りゅう 2りゅう あるいは 3りゅう 4りゅう なんど あまねく あたえさせ たまいて のち.
或は 一りう・ 二りう・ 或は 三りう・ 四りう なんど・ あまねく あたへさせ 給いて のち・.

てんに むかわせ たまいて.
天に 向わせ 給いて.

ちんは いっさいしゅじょうの けかちの くに かわりて うえじに そうろうぞと こえを あげて よばわらせ たまい しかば.
朕は 一切衆生の けかちの 苦に・ かはりて・ うえじに 候ぞと・こえを あげて・ よばはらせ 給い しかば・.

てん きこしめして かんろの あめを しゅゆに ふらし たまいき.
天 きこしめして 甘呂の 雨を 須臾に 下し 給いき、.

この あめを みに ふれ かおに かかりし ひと みな じきに あきみちて.
この 雨を 身に ふれ・ かをに かかりし 人・ 皆 食に あきみちて.

いっこくの ばんみん せちなの ほどに いのち よみかえりて そうらいけり.
一国の 万民・ せちなの ほどに・ 命 よみかへりて 候いけり。.

がっしこくに すだつちょうじゃと もうせし ものは 7たび ひんに なり.
月氏国に す達長者と 申せし 者は 七度 貧に なり・.

7たび ちょうじゃと なりて そうらいしが さいごの ひんの ときは ばんみん みな にげうせ.
七度 長者と なりて 候いしが・ 最後の 貧の 時は 万民 皆 にげうせ・.

しに おわりて ただ めおとこ ふたりにて そうらいし とき.
死に をはりて・ただ・めおとこ 二人にて 候いし 時・.

5しょうの こめ あり いつかの かつてと あて そうらいし とき.
五升の 米あり 五日の かつてと あて 候いし 時・.

かしょう しゃりほつ あなん らごら しゃかぶつの 5にん.
迦葉・ 舎利弗・ 阿難・ 羅ゴ羅・ 釈迦仏の 五人・.

しだいに いらせ たまいて 5しょうの こめを こい とらせ たまいき.
次第に 入らせ 給いて 五升の 米を こひ とらせ 給いき、.

その ひより 5てんじく だい1の ちょうじゃと なりて.
其の 日より 五天竺 第一の 長者と なりて・.

ぎおんしょうじゃをば つくりて そうろうぞ.
祇園精舎をば・ つくりて 候ぞ、.

これを もって よろずを こころえ させ たまえ.
これを もつて・よろづを 心へ させ 給へ。.

→a1574

b1575

きへんは すでに ほけきょうの ぎょうじゃに にさせ たまえる こと.
貴辺は・ すでに 法華経の 行者に 似させ 給へる 事・.

さるの ひとに に もちいの つきに にたるが ごとし.
さるの 人に 似・ もちゐの 月に 似たるが ごとし、.

あつはらの ものどもの かく おしませ たまえる ことは.
あつはらの ものどもの・ かく をしませ 給へる 事は・.

しょうへいの まさかど てんぎの さだとうの ように この くにの ものどもは おもいて そうろうぞ.
承平の 将門・ 天喜の 貞当の やうに 此の 国の ものどもは・ おもひて 候ぞ、.

これ ひとえに ほけきょうに いのちを すつるが ゆえなり.
これ ひとへに 法華経に 命を すつるが ゆへなり、.

まったく しゅくんに そむく ひととは てん ごらん あらじ.
まつたく 主君に そむく 人とは 天・ 御覧 あらじ、.

その うえ わずかの しょうごうに おおくの くうじ せめ あてられて.
其の 上わ づかの 小郷に・ をほくの 公事 せめ あてられて・.

わが みは のるべき うま なし さいしは ひきかくべき ころも なし.
わが 身は・のるべき 馬 なし・ 妻子は ひきかくべき 衣 なし。.

かかる み なれども ほけきょうの ぎょうじゃの さんちゅうの ゆきに.
かかる 身 なれども 法華経の 行者の 山中の 雪に・.

せめられ じき ともしかるらんと おもいやらせ たまいて ぜに いっかんを くらせ たまえるは.
せめられ 食 ともしかるらんと・ おもひやらせ 給いて・ ぜに 一貫を くらせ 給へるは・.

ひんにょが めおと ふたりして ひとつの ころもを きたりしを こじきに あたえ.
貧女が めおとこ 二人して 一つの 衣を きたりしを 乞食に あたへ・ .

りだが ごうしの なかなりし ひえを ひゃくしぶつに あたえたりしが ごとし.
りだが 合子の 中なりし・ ひえを 辟支仏に・あたへたりしが ごとし、.

とうとし とうとし.
たうとし・たうとし、.

くわしくは またまた もうすべく そうろう.
くはしくは 又又 申すべく 候、.

きょうきょう きんげん.
恐恐 謹言。.

こうあん 3ねん 12がつ 27にち.
弘安 三年 十二月 二十七日.

にちれん かおう.
日蓮 花押 .

うえのどの ごへんじ.
上野殿 御返事.

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