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南条殿御返事(なんじょうどの ごへんじ)
別名、法妙人貴事(ほうみょう にんきの こと).
日蓮大 聖人 60歳御作.

 

なんじょうどの ごへんじ.
南条殿 御返事.

おんつかいの もうし そうろうを うけたまわり そうろう.
御使の 申し 候を 承り 候、.

この しょろう なんぎの よし きこえ そうろう.
是の 所労 難儀の よし 聞え 候、.

いそぎ りょうじを いたされ そうらいて ごさんけい あるべく そうろう.
いそぎ 療治を いたされ 候いて 御参詣 有るべく 候。.

しお 1だ だいず いっぴょう とつさか ひとふくろ さけ ひとつつ たび そうろう.
塩 一駄・ 大豆 一俵・ とつさか 一袋・ 酒 一筒・ 給び 候、

こうづけの くにより ごきたく そうろう のちは いまだ げざんに いらず そうろう.
上野の 国より 御帰宅 候 後は 未だ 見参に 入らず 候、.

ゆかしく ぞんじ そうらいし ところに しなじなの ものども とりそろえ そうらいて.
牀敷 存じ 候いし 処に 品品の 物ども 取り副え 候いて.

おんおとずれに あずかり そうろう こと もうし つくしがたき おんこころざしにて そうろう.
御音信に 預り 候 事 申し 尽し難き 御志にて 候。.

いま もうせば こと あたらしきに あいにて そうらえども.
今 申せば 事 新しきに 相似て 候へども・.

とくしょうどうじは ほとけに つちの もちを たてまつりて あそかだいおうと うまれて.
徳勝童子は 仏 に 土の 餅を 奉りて 阿育大王と 生れて.

なんえんぶだいを だいたい ちぎょうすと うけたまわり そうろう.
南閻浮提を 大体 知行すと 承り 候、.

つちの もちは もの ならねども ほとけの いみじく わたらせ たまえば かく いみじき むくいを えたり.
土の 餅は 物 ならねども 仏の いみじく 渡らせ 給へば・ かく いみじき 報いを 得たり、.

しかるに しゃかぶつは われを むりょうの ちんぽうを もって おくごうの あいだ くようせん よりは.
然るに 釈迦仏は・ 我を 無量の 珍宝を 以て 億劫の 間・ 供養せん よりは・.

まつだいの ほけきょうの ぎょうじゃを いちにち なりとも くようせん くどくは.
末代の 法華経の 行者を 一日 なりとも 供養せん 功徳は.

ひゃくせんまんのくばい すぐべしと こそ とかせ たまいて そうろうに.
百千万億倍・ 過ぐべしと こそ 説かせ 給いて 候に、.

ほけきょうの ぎょうじゃを こころに いれて すうねん くようし たまう こと ありがたき おんこころざし かな.
法華経の 行者を 心に 入れて 数年 供養し 給う 事 有り難き 御志 かな、.

きんげんの ごとくんば さだめて ごしょうは りょうぜんじょうどに うまれ たもうべし.
金言の 如くんば 定めて 後生は 霊山浄土に 生れ 給うべし.

いみじき かほう なるかな.
いみじき 果報 なるかな。.

その うえ この ところは じんりんを はなれたる さんちゅう なり.
其の 上 此の 処は 人倫を 離れたる 山中 なり、.

とうざいなんぼくを さりて さとも なし.
東西南北を 去りて 里も なし、.

かかる いと こころぼそき ゆうくつ なれども.
かかる・ いと 心細き 幽窟 なれども.

きょうしゅ しゃくそんの いちだいじの ひほうを りょうじゅせんにして そうでんし にちれんが にくだんの きょうちゅうに ひして かくし たもてり.
教主 釈尊の 一大事の 秘法を 霊鷲山にして 相伝し・ 日蓮が 肉団の 胸中に 秘して 隠し 持てり、.

されば にちれんが むねの あいだは しょぶつ にゅうじょうの ところなり.
されば 日蓮が 胸の 間は 諸仏 入定の 処なり、.

したの うえは てんぽうりんの ところ のどは たんじょうの ところ こうちゅうは しょうがくの みぎり なるべし.
舌の 上は 転法輪の 所・ 喉は 誕生の 処・ 口中は 正覚の 砌 なるべし、.

かかる ふしぎなる ほけきょうの ぎょうじゃの じゅうしょ なれば.
かかる 不思議なる 法華経の 行者の 住処 なれば・.

いかでか りょうぜんじょうどに おとるべき.
いかでか 霊山浄土に 劣るべき、.

ほう みょうなるが ゆえに にん とうとし にん とうときが ゆえに ところ とうとしと もうすは これなり.
法 妙なるが 故に 人 貴し・ 人 貴きが 故に 所 尊しと 申すは 是なり、.

じんりきほんに いわく.
神力品に 云く.

「もしは はやしの なかに おいても もしは きの したに おいても.
「若しは 林の 中に 於ても 若しは 樹の 下に 於ても.

もしは そうぼうに おいても ないし にはつねはん したもう」と うんぬん.
若しは 僧坊に 於ても 乃至 而般涅槃 したもう」と 云云、.

この みぎりに のぞまん やからは むしの ざいしょう たちまちに しょうめつし.
此の 砌に 望まん 輩は 無始の 罪障 忽に 消滅し.

3ごうの あく てんじて 3とくを じょうぜん.
三業の 悪 転じて 三徳を 成ぜん、.

かの ちゅうてんじくの むねっちに のぞみし のうじゃが.
彼の 中天竺の 無熱池に 臨みし 悩者が.

しんちゅうの ねっきを じょゆして その がんを じゅうまんする こと しょうりょうちの ごとしと うそぶきしも.
心中の 熱気を 除愈して 其の 願を 充満する 事 清涼池の 如しと うそぶきしも・.

かれ これ ことなりと いえども その こころは いかでか かわるべき.
彼れ 此れ 異なりと いへども、其の 意は 争でか 替るべき。.

かの がっしの りょうじゅせんは ほんちょう この みのぶの みね なり.
彼の 月氏の 霊鷲山は 本朝 此の 身延の 嶺 なり、.

さんけい はるかに ちゅうぜつ せり きゅうきゅうに らいりんを くわだつべし.
参詣 遥かに 中絶 せり 急急に 来臨を 企つべし、.

これにて まち いって そうろうべし.
是にて 待ち 入つて 候べし、.

あわれあわれ もうし つくしがたき おんこころざし かな おんこころざし かな.
哀哀 申し つくしがたき 御志 かな・ 御志 かな。.

こうあん 4ねん 9がつ 11にち.
弘安 四年 九月 十一日.

にちれん かおう.
日蓮 花押.

なんじょうどの ごへんじ.
南条殿 御返事.

 
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