b406から409.
一念三千理事 (いちねんさんぜん りじ).
日蓮大聖人 37歳 御作.

 

b406

いちねんさんぜん りじ.
一念三千理事.

しょうか 2ねん 37さい おんさく.
正嘉 二年 三十七歳 御作.

12いんねん ず.
十二因縁 図.

とう るてんの 12いんねんとは なんらぞや.
問う 流転の 十二因縁とは 何等ぞや.

こたう 1には むみょう.
答う 一には 無明.

くしゃに いわく「しゅくわくの くらいは むみょう なり」.
倶舎に 云く「宿惑の 位は 無明 なり」.

むみょうとは むかし あいよくの ぼんのう おこりしを いうなり.
無明とは 昔 愛欲の 煩悩 起りしを 云うなり.

おとこは ちちに いかりを なして ははを あいす.
男は 父に 瞋を 成して 母に 愛を 起す.

おんなは ははに いかりを なして ちちに あいを おこすなり.
女は 母に 瞋を 成して 父に 愛を 起すなり.

くしゃの だい9に みえたり.
倶舎の 第九に 見えたり.

2には ぎょう.
二には 行.

くしゃに いわく「むかしの しょごうを ぎょうと なづく」と.
倶舎に 云く「宿の 諸業を 行と 名く」と.

むかしの ぞうごうを ぎょうとは いうなり.
昔の 造業を 行とは 云うなり.

ごうに 2 あり ひとつには けんいんの ごうなり.
業に 二 有り 一には 牽引の 業なり.

われらが まさしく せいを うくべき ごうを いうなり.
我等が 正く 生を 受く可き 業を 云うなり.

ふたつには えんまんの ごう なり.
二には 円満の 業 なり.

よの いっさいの ぞうごう なり.
余の 一切の 造業 なり.

いわゆる あしを おり てを きる せんごうを いうなり.
所謂 足を 折り 手を 切る 先業を 云うなり.

これは えんまんの ごう なり.
是は 円満の 業 なり.

3には しき.
三には 識.

くしゃに いわく「しきとは まさしく せいを けっする おん なり」.
倶舎に 云く「識とは 正く 生を 結する 蘊 なり」.

まさしく ははの はらの なかに いる ときの ごおん なり.
正く 母の 腹の 中に 入る 時の 五蘊 なり.

ごおんとは しき じゅ そう ぎょう しき なり.
五蘊とは 色 受 想 行 識 なり.

また 5いんとも いうなり.
亦 五陰とも 云うなり.

4には みょうしき.
四には 名色.

くしゃに いわく「6しょの まえは みょうしき なり」.
倶舎に 云く「六処の 前は 名色 なり」.

5には 6しょ.
五には 六処.

くしゃに いわく「げんとうの こんを しょうずるより さんわの まえは 6しょ なり」.
倶舎に 云く「眼等の 根を 生ずるより 三和の 前は 六処 なり」.

6しょとは げん に び ぜつ しん いの 6こん しゅったいするを いうなり.
六処とは 眼 耳 鼻 舌 身 意の 六根 出来するを 云うなり.

6には そく.
六には 触.

くしゃに いわく「さんじゅの いんの ことなるに おいて いまだ りょうち せざるを そくと なづく」.
倶舎に 云く「三受の 因の 異なるに 於て 未だ 了知 せざるを 触と 名く」.

ひは あつしとも しらず みずは さむしとも しらず.
火は 熱しとも 知らず 水は 寒しとも 知らず.

かたなは ひとを きる ものとも しらざる ときなり.
刀は 人を 切る 物とも 知らざる 時なり.

しちには じゅ.
七には 受.

くしゃに いわく「いんあいの まえに あるは じゅ なり」.
倶舎に 云く「婬愛の 前に 在るは 受 なり」.

かんねつを しって いまだ いんよくを おこさざる とき なり.
寒熱を 知つて 未だ 婬欲を 発さざる 時 なり.

8には あい.
八には 愛.

くしゃに いわく「しぐと いんとを むさぼるは あい なり」.
倶舎に 云く「資具と 婬とを 貪るは 愛 なり」.

にょにんを あいして いんよく とうを おこすを いうなり.
女人を 愛して 婬欲 等を 発すを 云うなり.

9には しゅ.
九には 取.

くしゃに いわく「もろもろの きょうがいを えんが ために あまねく ちきゅう するを しゅと なづく」.
倶舎に 云く「諸の 境界を 得んが 為に 遍く 馳求 するを 取と 名く」.

こんぜに あるとき せけんを いとなみて たにんの ものを むさぼり とる ときを いうなり.
今世に 有る時 世間を 営みて 他人の 物を 貪り 取る 時を 云うなり.

10には う.
十には 有.

くしゃに いわく「うは いわく まさしく よく とううの かを ひく ごうを つくる」.
倶舎に 云く「有は 謂く 正しく 能く 当有の 果を 牽く 業を 造る」.

みらい また かくのごとく せいを うくべき ごうを つくるを うとは いうなり.
未来 又 此くの如く 生を 受く可き 業を 造るを 有とは 云うなり.

11には せい.
十一には 生.

くしゃに いわく「とうの うを けっするを せいと なづく」.
倶舎に 云く「当の 有を 結するを 生と 名く」.

みらいに まさしく せいを うけて ははの はらに いるときを いうなり.
未来に 正く 生を 受けて 母の 腹に 入る 時を 云うなり.

12には ろうし.
十二には 老死.

くしゃに いわく「とうの じゅに いたるまでは ろうし なり」.
倶舎に 云く「当の 受に 至るまでは 老死 なり」.

せいろうしを うくるを ろうし ゆうひ くのうとは いうなり.
生老死を 受くるを 老死 憂悲 苦悩とは 云うなり.

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b407

とう 12いんねんを さんぜ りょうじゅうに ふんべつする ほう いかん.
問う 十二因縁を 三世 両重に 分別する 方 如何.

こたう むみょうと ぎょうとは かこの 2いん なり.
答う 無明と 行とは 過去の 二因 なり.

しきと みょうしきと 6にゅうと そくと じゅとは げんざいの 5か なり.
識と 名色と 六入と 触と 受とは 現在の 五果 なり.

あいと しゅと うとは げんざいの 3いん なり.
愛と 取と 有とは 現在の 三因 なり.

しょうと ろうしとは みらいの りょうか なり.
生と 老死とは 未来の 両果 なり.

わたくしの りゃくじゅに いわく.
私の 略頌に 云く.

かこの 2いん むみょうぎょう げんざいの 5か しき みょうしき 6にゅうそくじゅ.
過去の 二因 無明行 現在の 五果 識 名色 六入触受.

げんざいの 3いん あい しゅ う みらいの りょうか しょう ろう しと.
現在の 三因 愛 取 有 未来の 両果 生 老 死と.

とう 12いんねん るてんの しだい いかん.
問う 十二因縁 流転の 次第 如何.

こたう むみょうは ぎょうに えんたり ぎょうは しきに えんたり.
答う 無明は 行に 縁たり 行は 識に 縁たり.

しきは みょうしきに えんたり みょうしきは 6にゅうに えんたり.
識は 名色に 縁たり 名色は 六入に 縁たり.

6にゅうは そくに えんたり そくは じゅに えんたり.
六入は 触に 縁たり 触は 受に 縁たり.

じゅは あいに えんたり あいは しゅに えんたり.
受は 愛に 縁たり 愛は 取に 縁たり.

しゅは うに えんたり うは しょうに えんたり.
取は 有に 縁たり 有は 生に 縁たり.

しょうは ろうし ゆうひ くのうに えんたり.
生は 老死 憂悲 苦悩に 縁たり.

これ その しょうじかいに るてんする かたなり.
是れ 其の 生死海に 流転 する 方なり.

かくの ごとくして ぼんぷとは なるなり.
此くの 如くして 凡夫とは 成るなり.

とう げんめつの 12いんねんの さま いかん.
問う 還滅の 十二因縁の 様 如何.

こたう むみょう めっすれば すなわち ぎょう めっす.
答う 無明 滅すれば 則ち 行 滅す.

ぎょう めっすれば すなわち しき めっす.
行 滅すれば 則ち 識 滅す.

しき めっすれば すなわち みょうしき めっす.
識 滅すれば 則ち 名色 滅す.

みょうしき めっすれば すなわち 6にゅう めっす.
名色 滅すれば 則ち 六入 滅す.

6にゅう めっすれば すなわち そく めっす そく めっすれば すなわち じゅ めっす.
六入 滅すれば 則ち 触 滅す 触 滅すれば 則ち 受 滅す.

じゅ めっすれば すなわち あい めっす あい めっすれば すなわち しゅ めっす.
受 滅すれば 則ち 愛 滅す 愛 滅すれば 則ち 取 滅す.

しゅ めっすれば すなわち う めっす う めっすれば すなわち しょう めっす.
取 滅すれば 則ち 有 滅す 有 滅すれば 則ち 生 滅す.

しょう めっすれば すなわち ろうし ゆうひ くのう めっす.
生 滅すれば 則ち 老死 憂悲 苦悩 滅す.

これ その げんめつの さま なり.
是れ 其の 還滅の 様 なり.

ほとけは かえって ぼんのうを うしなって ゆく かたなり.
仏は 還つて 煩悩を 失つて 行く 方なり.

わたくしに いわく ちゅううの ひとには 12いんねん つぶさに これ なし.
私に 云く 中有の 人には 十二因縁 具に 之 無し.

また てんじょうにも つぶさには これ なく また むしきかいにも つぶさには これなし.
又 天上にも 具には 之 無く 又 無色界にも 具には 之無し.

いちねんさんぜん りじ.
一念三千 理事.

10にょぜとは にょうぜそうは み なり.
十如是とは 如是相は 身 なり.

げん2に いわく そう もって そとに よる すべて わかつべし.
玄二に 云く 相 以て 外に 拠る 覧て 別つ可し.

せん6に いわく そうは ただしきに あり.
籤六に 云く 相は 唯 色に 在り.

にょぜしょうは こころ なり げん2に いわく.
如是性は 心 なり 玄二に 云く.

しょう もって うちに よる じぶん しょう あらためず.
性 以て 内に 拠る 自分 改めず 性.

せん6に いわくは ただ こころに あり.
籤六に 云くは 唯 心に 在り.

にょぜたいは みと こころ なり.
如是体は 身と 心と なり.

げん2に いわく しゅしつを なずけて たいと なす.
玄二に 云く 主質を 名けて 体と なす.

にょぜりきは みと こころと なり.
如是力は 身と 心と なり.

しかんに いわく りきは かんにんを ようと なす.
止に 云く 力は 堪任を 用と なす.

にょぜさは みと こころと なり.
如是作は 身と 心と なり.

しに いわく こんりゅうを さと なづく.
止に 云く 建立を 作と 名く.

にょぜいんは こころ なり.
如是因は 心 なり.

しに いわく いんとは かを まねくを いんと なす また なづけて ごうと なす.
止に 云く 因とは 果を 招くを 因と 為す 亦 名けて 業と なす.

にょぜえん しに いわく.
如是縁 止に 云く.

えんは えんゆう なり ごうを たすく.
縁は 縁由 なり 業を 助く.

にょぜか しに いわく.
如是果 止に 云く.

かは こくと しゅを か なす.
果は 剋と 獲を 果 為す.

にょぜほう しに いわく ほうは しゅういんを ほうと いう.
如是報 止に 云く 報は 酬因を 報と 曰う.

にょぜほんまつくきょうとう げんに いわく.
如是本末究竟等 玄二に 云く.

はじめの そうを ほんと なし のちの ほうを まつと なす.
初めの 相を 本と 為し 後ちの 報を 末と 為す.

3せけんとは ごおんせけん しに いわく.
三種世間とは 五陰世間 止に 云く.

じっしゅ おんかい ふおんどうを もっての ゆえに 5せけんと なづくるなり.
十種 陰界 不陰同を 以ての 故に 五世間と 名くるなり.

しゅじょうせけん しに いわく.
衆生世間 止に 云く.

じっかいの しゅじょう むしろ ことならざるを える ゆえに しゅじょうせけんと なづくるなり.
十界の 衆生 寧ろ 異らざるを 得る 故に 衆生世間と 名くるなり.

こくどせけん しに いわく.
国土世間 止に 云く.

10しゅの しょい つうじて こくどせけんと しょうす.
十種の 所居 通じて 国土世間と 称す.

5おんとは しんやくには 5うんと いうなり.
五陰とは 新訳には 五蘊と 云うなり.

おんとは じゅしゅうの ぎ なり.
陰とは 聚集の 義 なり.

1に しきおん 5しき これなり.
一に 色陰 五色 是なり.

2に じゅおん りょうのう これなり.
二に 受陰 領納 是なり.

3に そうおん くしゃに いわく.
三に 想陰 倶舎に 云く.

そうは ぞうを とるを たいと なすと.
想は 像を 取るを 体と 為すと.

4に ぎょうおん ぞうさ これ ぎょう なり.
四に 行陰 造作 是 行 なり.

5に しきおん りょうべつ これ しき なり.
五に 識陰 了別 是れ 識 なり.

しの 5に ばしゃを ひいて いわく.
止の 五に 婆沙を 引いて 云く.

しき まず りょうべつし つぎに じゅは りょうのうし そうは そうみょうを とり.
識 先ず 了別し 次に 受は 領納し 想は 相貌を 取り.

ぎょうは いじゅうを おこし しきは ぎょうに よって かんずと.
行は 違従を 起し 色は 行に 由つて 感ずと.

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b408

ひゃっかいせんにょ 3000せけんの こと.
百界千如 三千世間の 事.

じっかいごぐ そく 100かいと なるなり.
十界互具 即 百界と 成るなり.

じごく しゅじょうせけん じゅうにょぜ.
地獄 衆生世間 十如是.

5おんせけん じゅうにょぜ.
五陰世間 十如是.

こくどせけん じゅうにょぜ じげせきてつ.
国土世間 十如是 地下赤鉄.

がき しゅじょうせけん じゅうにょぜ.
餓鬼 衆生世間 十如是.

5おんせけん じゅうにょぜ.
五陰世間 十如是.

こくどせけん じゅうにょぜ じげ.
国土世間 十如是 地下.

ちくしょう しゅじょうせけん じゅうにょぜ.
畜生 衆生世間 十如是.

5おんせけん じゅうにょぜ.
五陰世間 十如是.

こくどせけん じゅうにょぜ すい りく くう.
国土世間 十如是 水 陸 空.

しゅら しゅじょうせけん じゅうにょぜ.
修羅 衆生世間 十如是.

5おんせけん じゅうにょぜ.
五陰世間 十如是.

こくどせけん じゅうにょぜ かいはんてい.
国土世間 十如是 海畔底.

にんしゅじょうせけん じゅうにょぜ.
人衆生世間 十如是.

5おんせけん じゅうにょぜ.
五陰世間 十如是.

こくどせけん じゅうにょぜ しゅみ ししゅう.
国土世間 十如是 須弥 四州.

てんしゅじょうせけん じゅうにょぜ.
天衆生世間 十如是.

5おんせけん じゅうにょぜ.
五陰世間 十如是.

こくどせけん じゅうにょぜ きゅうでん.
国土世間 十如是 宮殿.

しょうもんしゅじょうせけん じゅうにょぜ.
声聞衆生世間 十如是.

5おんせけん じゅうにょぜ.
五陰世間 十如是.

こくどせけん じゅうにょぜ どうこど.
国土世間 十如是 同居土.

えんかくしゅじょうせけん じゅうにょぜ.
縁覚衆生世間 十如是.

5おんせけん じゅうにょぜ.
五陰世間 十如是.

こくどせけん じゅうにょぜ どうこど.
国土世間 十如是 同居土.

ぼさつしゅじょうせけん じゅうにょぜ.
菩薩衆生世間 十如是.

5おんせけん じゅうにょぜ.
五陰世間 十如是.

こくどせけん じゅうにょぜ どうこ ほうべん じっぽう.
国土世間 十如是 同居 方便 実報.

ほとけしゅじょうせけん じゅうにょぜ.
仏衆生世間 十如是.

5おんせけん じゅうにょぜ.
五陰世間 十如是.

こくどせけん じゅうにょぜ じゃっこうど.
国土世間 十如是 寂光土.

しかんの 5に いわく.
止観の 五に 云く.

「しんえんと がっすれば すなわち 3しゅせけん 3000の しょうそう みな こころより おこる」.
「心縁と 合すれば 則ち 三種世間 三千の 性相 皆 心より 起る」.

ぐの 5に いわく.
弘の 五に 云く.

「ゆえに しかんに まさしく かんぽうを あかすに いたって ならびに3000を もって しなんと なす.
「故に 止観に 正しく 観法を 明すに 至つて 並びに 三千を 以て 指南と 為す.

すなわち これ しゅうぐうくきょうの ごくせつ なり.
乃ち 是れ 終窮究竟の 極説 なり.

ゆえに じょの なかに せっこしんちゅうしょぎょうの ほうもんと いうまことに ゆえ あるなり.
故に 序の 中に 説己心中所行の 法門と 云う 良に 以 有るなり.

こう たずねて よまん もの こころに いえん なかれ」.
請う 尋ねて 読まん 者 心に 異縁 無かれ」.

また いわく「みょうきょうの いちねん3000を あかさずんば.
又 云く「妙境の 一念三千を 明さずんば.

いかんぞ いつに いっさいを とる ことを しる べけん.
如何ぞ 一に 一切を 摂る ことを 識る 可けん.

3000は いちねんの むみょうを いでず.
三千は 一念の 無明を 出でず.

この ゆえに ただ くいんくか のみあり」.
是の 故に 唯 苦因苦果 のみ有り」.

また いわく「いっさいの しょごう じっかい ひゃっかい 3000せけんを いでざるなり」.
又 云く「一切の 諸業 十界 百界 千如 三千世間を 出でざるなり」.

せんの 2に いわく「けは すなわち しゅじょう じつは すなわち 5おん および こくど すなわち 3せけん なり.
籤の 二に 云く「仮は 即ち 衆生 実は 即ち 五陰 及び 国土 即ち 三世間 なり.

1000の ほうは みな 3なり ゆえに 3000 あり」.
千の 法は 皆 三なり 故に 三千 有り」.

ぐの 5に いわく 「いちねんの こころに おいて じっかいに やくせざれば じを おさむること あまねからず.
弘の 五に 云く 「一念の 心に 於て 十界に 約せざれば 事を 収むること 遍からず.

さんたいに やくせされば りを とること あまねからず.
三諦に 約せざれば 理を 摂ること 周からず.

10にょを かたらざれば いんが そなわらず.
十如を 語らざれば 因果 備わらず.

3000せけん なくんば えしょう つきず」.
三世間 無んば 依正 尽きず」.

きの 1に いわく「もし 3000に あらざれば とること あまねからず.
記の 一に 云く「若 三千に 非ざれば 摂ること 遍からず.

もし えんしんに あらざれば 3000を せっせず」.
若し 円心に 非ざれば 三千を 摂せず」.

げんの 2に いわく「ただ しゅじょうほうは はなはだ ひろく ぶっぽうは はなはだ たかし.
玄の 二に 云く「但 衆生法は 太だ 広く 仏法は 太だ 高し.

しょがくに おいて なんと なし こころは すなわち やすしと なす」.
初学に 於て 難と 為し 心は 則ち 易しと 為す」.

ぐの 5に いわく「はじめに けごんを ひくことは こころは たくみなる えしの ごとく.
弘の 五に 云く「初に 華厳を 引くことは 心は 工なる 画師の 如く.

しゅじゅの 5おんを つくる いっさいせけんの なかに ほうとして つくらざる ことなし.
種種の 五陰を 造る 一切世界の 中に 法として 造らざる こと無し.

こころの ごとく ほとけも また しかなり.
心の 如く 仏も 亦 爾なり.

ほとけの ごとく しゅじょうも しかなり.
仏の 如く 衆生も 然なり.

ぶっしん および しゅじょう この 3さべつ なし.
心仏 及び 衆生 是の 三差別 無し.

もし ひと さんぜ いっさいの ほとけを もとめ しらんと ほっせば まさに かくの ごとく かんずべし.
若し 人 三世 一切の 仏を 求め 知らんと 欲せば 当に 是くの 如く 観ずべし.

こころは もろもろの にょらいを つくる」と.
心は 諸の 如来を 造る」と.

こんぺいろんに いわく「じっそうは かならず しょほう しょほうは かならず じゅうにょ.
金ペイ論に 云く「実相は 必ず 諸法 諸法は 必ず 十如.

じゅうにょは かならず じっかい じっかいは かならず しんど なり.
十如は 必ず 十界 十界は 必ず 身土 なり」.

→a408

b409

さんじんしゃくの こと.
三身釈の 事.

まず ほっしんとは だいしだいきょうを ひいて.
先ず 法身とは 大師大経を 引いて.

「いっさいの せたいは もし にょらいに おいては すなわち これ だいいちぎたい なり.
「一切の 世諦は 若し 如来に 於ては 即ち 是 第一義諦 なり.

しゅじょう てんどうして ぶっぽうに あらずと おもえり」と しゃくせり.
衆生 顛倒して 仏法に 非ずと 謂えり」と 釈せり.

しかれば すなわち じた えしょう まかい ぶっかい せんじょう いんがは ことなれども.
然れば 則ち 自他 依正 魔界 仏界 染浄 因果は 異なれども.

ことごとく みな しょぶつの ほっしんに そむく ことに あらざれば.
悉く 皆 諸仏の 法身に 背く 事に 非ざれば.

ぜんしょうびくが ふしん なりとも りょうがおうの しんじんに おなじく.
善星比丘が 不信 なりしも 楞伽王の 信心に 同じく.

はんにゃみつげどうが こころの じゃけん なりしも すだつちょうじゃが しょうけんに ことならず.
般若蜜外道が 意の 邪見 なりしも 須達長者が 正見に 異らず.

すなわち しんぬ この ほっしんの もとは しゅじょうの とうたい なり.
即ち 知んぬ 此の 法身の 本は 衆生の 当体 なり.

じっぽうしょぶつの ぎょうがんは じつに ほっしんを しょうするなり.
十方諸仏の 行願は 実に 法身を 証するなり.

つぎに ほうしんとは だいしの いわく.
次に 報身とは 大師の 云く.

「ほう にょにょの ち にょにょ しんじつの どうに じょうじ きたって みょうかくを じょうず.
「法 如如の 智 如如 真実の 道に 乗じ 来つて 妙覚を 成ず.

ちにょの りに かなう.
智如の 理に 称う.

りに したがって にょと なづけ ちに したがって らいと なづく.
理に 従つて 如と 名け 智に 従つて 来と 名く.

すなわち ほうしんにょらい なり.
即ち 報身如来 なり.

るしゃなと なづけ ここには じょうまんと ほんず」と やくせり.
盧舎那と 名け 此には 浄満と 翻ず」と 釈せり.

これは にょにょ ほっしょうの ち にょにょ しんじつの どうに じょうじて.
此れは 如如 法性の 智 如如 真実の 道に 乗じて.

みょうかくくきょうの りち ほうかいと みょうごう したる とき.
妙覚究竟の 理智 法界と 冥合 したる 時.

りを にょと なづく ちは らい なり.
理を 如と 名く 智は 来 なり.

→a409

 
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