b1098から1099.
兵衛志殿御返事 (ひょうえのさかんどの ごへんじ).
日蓮大聖人 57歳 御作.

 

b1098

ひょうえのさかんどの ごへんじ.
兵衛志殿 御返事.

こうあん がんねん 11がつ 57さい おんさく.
弘安 元年 十一月 五十七歳 御作.

みのぶに おいて.
於 身延.

ぜに ろっかんもんの うち いっかん.
銭 六貫文の 内 一貫.

じろう よりの ぶん しろあつわた こそで いちりょう.
次郎 よりの 分 白厚綿 小袖 一領.

しきに わたりて ざいを さんぽうに くようし たもう.
四季に わたりて 財を 三宝に 供養し 給う.

いずれも いずれも くどくに ならざるは なし.
いづれも いづれも 功徳に ならざるは なし.

ただし ときに したがいて しょうれつ せんじん わかれて そうろう.
但し 時に 随いて 勝劣 浅深 わかれて 候.

うえたる ひとには ころもを あたえる よりも しょくを あたえて そうろうは.
うへたる 人には 衣を あたへたる よりも 食を あたへて 候は.

いま すこし くどく まさる.
いま すこし 功徳 まさる.

こごえたる ひとには しょくを あたえて そうろう よりも ころもは また まさる.
こごへたる 人には 食を あたへて 候 よりも 衣は 又 まさる.

はるなつに こそでを あたえて そうろう よりも あきふゆに あたえぬれば.
春夏に 小袖を あたへて 候 よりも 秋冬に あたへぬれば.

また くどく いちばい なり.
又 功徳 一倍 なり.

これを もって いっさいは しりぬべし.
これを もつて 一切は しりぬべし.

ただし このことに おいては しきを ろんぜず.
ただし 此の事に をいては 四季を 論ぜず.

にちがつを たださず.
日月を たださず.

ぜに こめ かたびら きぬこそで ひび つきづきに ひま なし.
ぜに こめ かたびら きぬこそで 日日 月月に ひま なし.

れいせば びんばしゃらおうの きょうしゅしゃくそんに ひびに 500りょうの くるまを おくり.
例せば びんばしやらわうの 教主釈尊に 日日に 五百輛の 車を をくり.

あそかだいおうの 10おくの さきんを けいずまじに せせしがごとし.
阿育大王の 十億の 沙金を 鶏頭摩寺に せせしがごとし.

だいしょう ことなれども こころざしは かれにも すぐれたり.
大小 ことなれども 志は 彼にも すぐれたり.

そのうえ ことしは しさい そうろう.
其の上 今年は 子細 候.

ふゆと もうす ふゆ いずれの ふゆか さむからざる.
ふゆと 申す ふゆ いづれの ふゆか さむからざる.

なつと いう なつ いずれの なつか あつからざる.
なつと 申す なつ いづれの なつか あつからざる.

ただし ことしは よこくは いかんが そうろうらん.
ただし 今年は 余国は いかんが 候らん.

この はきいは ほうに すぎて かんじ そうろう.
この 波木井は 法に すぎて かんじ 候.

ふるき おきな どもに とい そうらえば.
ふるき をきな どもに とひ 候へば.

80 90 いっぴゃくに なる ものの ものがたり そうろうは.
八十 九十 一百に なる 者の 物語り 候は.

すべて いにしえ これほど さむき こと そうらわず.
すべて いにしへ これほど さむき 事 候はず.

この あんしつ より しほうの やまの そと.
此の あんじち より 四方の 山の 外.

じっちょう にじっちょう ひと かよう こと そうらわねば しり そうらわず.
十町 二十町 人 かよう 事 候はねば しり 候はず.

きんぺん いっちょう にちょうの ほどは ゆき いちじょう にじょう ごしゃく とう なり.
きんぺん 一丁 二丁の ほどは ゆき 一丈 二丈 五尺 等 なり.

この うるう 10がつ 30にち ゆき すこし ふりて そうらいしが やがて きえ そうらいぬ.
この うるう 十月 卅日 ゆき すこし ふりて 候しが やがて きへ 候ぬ.

この つきの 11にち たつの とき より 14日 まで おおゆき ふりて そうらいしに.
この 月の 十一日 たつの 時 より 十四日 まで 大雪 ふりて 候しに.

りょう みっかを へだてて すこし あめ ふりて.
両 三日 へだてて すこし 雨 ふりて.

ゆき かたく なること こんごうの ごとし.
ゆき かたく なる事 金剛の ごとし.

いまに きゆる こと なし.
いまに きゆる 事 なし.

ひるも よるも さむく つめたく そうろうこと ほうに すぎて そうろう.
ひるも よるも さむく つめたく 候事 法に すぎて 候.

さけは こおりて いしの ごとし.
さけは こをりて 石の ごとし.

あぶらは こがねに にたり.
あぶらは 金に にたり.

なべ かまは すこし みず あれば こおりて われ.
なべ かまは 小し 水 あれば こおりて われ.

かん いよいよ かさなり そうらえば.
かん いよいよ かさなり 候へば.

きもの うすく しょく とぼしくして さしいづる ものも なし.
きもの うすく 食 ともしくして さしいづる ものも なし.

ぼうは はんさくにて かぜ ゆき たまらず しきものは なし.
坊は はんさくにて かぜ ゆき たまらず しきものは なし.

きは さしいずる ものも なければ ひも たかず.
木は さしいづる ものも なければ 火も たかず.

ふるき あかづき なんどして そうろう.
ふるき 垢づき なんどして 候.

→a1098

b1099

こそで ひとつ なんど きたる ものは その みの いろ ぐれん だいぐれんの ごとし.
こそで 一 なんど きたる ものは 其 身の いろ 紅蓮 大紅蓮の ごとし.

こえは はは おおばばじごくに ことならず.
声は 波波 大婆婆地獄に ことならず.

てあし かんじて きれさけ ひと しぬこと かぎりなし.
手足 かんじて きれさけ 人 死ぬこと かぎりなし.

ぞくの ひげを みれば ようらくを かけたり.
俗の ひげを みれば やうらくを かけたり.

そうの はなを みれば すずを つらぬき かけて そうろう.
僧の 鼻を みれば 鈴を つらぬき かけて 候.

かかる ふしぎ そうらわず そうろうに.
かかる ふしぎ 候はず 候に.

こぞの 12がつの 30にち より はらのけの そうらいしが はるなつ やむことなし.
去年の 十二月の 卅日 より はらのけの 候しが 春夏 やむことなし.

あき すぎて 10がつのころ だいじに なりて そうらいしが.
あき すぎて 十月のころ 大事に なりて 候しが.

すこし へいゆ つかまつりて そうらえども.
すこして 平愈 つかまつりて 候へども.

ややも すれば おこり そうろうに.
ややも すれば をこり 候に.

きょうだい ふたりの ふたつの こそで わた 40りょうを きて そうろうが.
兄弟 二人の ふたつの 小袖 わた 四十両を きて 候が.

なつの かたびらの ように かろく そうろうぞ.
なつの かたびらの やうに かろく 候ぞ.

まして わた うすく ただ ぬのもの ばかりの もの おもいやらせ そうらえ.
まして わた うすく ただ ぬのもの ばかりの もの をもひやらせ 給へ.

この ふたつの こそで なくば ことしは ここえじに そうろうなん.
此の 二の こそで なくば 今年は こごへしに 候なん.

そのうえ きょうだいと もうし うこんのじょうの ことと もうし.
其上 兄弟と 申し 右近の尉の 事と 申し.

しょくも あいついで そうろう.
食も あいついで 候.

ひとは なきときは 40にん あるときは 60にん いかに せき そうらえども.
人は なき時は 四十人 ある時は 六十人 いかに せき 候へども.

これに ある ひとびとの あにとて しゅったい しゃていとて さしいで しきい そうらいぬれば.
これに ある 人人の 兄とて 出来し 舎弟とて さしいで しきゐ 候ぬれば.

かか はやさに いかにとも もうしえず.
かか はやさに いかにとも 申しへず.

こころには しづかに あじち むすびて こほっしと わがみ ばかり.
心には しずかに あじち むすびて 小法師と 我が 身 計り.

おんきょう よみ まいらせんと こそ ぞんじて そうろうに.
御経 よみ まいらせんと こそ 存じて 候に.

かかる わずらわしき こと そうらわず.
かかる わづらはしき 事 候はず.

また としあけ そうらわば いずくえも にげんと ぞんじ そうろうぞ.
又 としあけ 候わば いづくへも にげんと 存じ 候ぞ.

かかる わずらわしきこと そうらわず またまた もうすべく そうろう.
かかる わづらわしき 事 候はず 又又 申すべく 候.

なによりも えもんのたいふさかんと とのとの おんこと.
なによりも えもんの大夫志と とのとの 御事.

ちちの おんちゅうと もうし かみの おぼえと もうし.
父の 御中と 申し 上の をぼへと 申し.

おもてに あらずば もうし つくしがたし.
面に あらずば 申し つくしがたし.

きょうきょう きんげん.
恐恐 謹言.

11がつ 29にち.
十一月 廿九日.

にちれん かおう.
日蓮 花押.

ひょうえのさかんどの ごへんじ.
兵衛志殿 御返事.

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