b1193から1194.
四条金吾殿御返事 (しじょうきんごどの ごへんじ).
日蓮大聖人 59歳 御作.

 

b1193

しじょうきんごどの ごへんじ.
四条金吾殿 御返事.

こうあん 3ねん 10がつ 59さい おんさく.
弘安 三年 十月 五十九歳 御作.

とのおか より こめ おくりたび そうろう.
殿岡 より 米 送り 給び 候.

ことし 7がつ うらぼんぐの そうぜんにして そうろう.
今年 七月 盂蘭盆供の 僧膳にして 候.

じしのそう りょうぜんの ちょうしゅう ぶっだ しんみょうも のうじゅ ずいきし たもうらん.
自恣の僧 霊山の 聴衆 仏陀 神明も 納受 随喜し 給うらん.

つきせぬ こころざし れんれんの おんとぶらい ことばを もって つくしがたし.
尽きせぬ 志 連連の 御訪い 言を 以て 尽くしがたし.

なんとなくとも とのの ことは ごしょう ぼだい うたがいなし.
何となくとも 殿の 事は 後生 菩提 疑なし.

なにごと よりも ぶんえい 8ねんの ごかんきの とき.
何事 よりも 文永 八年の 御勘気の 時.

すでに さがみの くにたつのくちにて くび きられんと せし ときにも.
既に 相模の国 竜の口にて 頚 切られんと せし 時にも.

とのは うまの くちに ついて かちはだしにて なき かなしみ たまいしこと.
殿は 馬の 口に 付いて 足歩赤足にて 泣き 悲み 給いし事.

まことに ならば はら きらんとの けしき なりしをば.
実に ならば 腹 きらんとの 気色 なりしをば.

いつの よにか おもい わするべき.
いつの 世にか 思い 忘るべき.

それのみならず さどの しまに はなたれ.
それのみならず 佐渡の 島に 放たれ.

ほっかいの ゆきの したに うもれ.
北海の 雪の 下に 埋もれ.

ほくざんの みねの やまおろしに いのち たすかるべし とも おぼえず.
北山の 嶺の 山下風に 命 助かるべし とも をぼへず.

としごろの どうほうにも すてられ.
年来の 同朋にも 捨てられ.

ふるさとへ かえらん ことは たいかいの そこの ちびきの いしの おもいして.
故郷へ 帰らん 事は 大海の 底の ちびきの 石の 思ひして.

さすがに ぼんぷ なれば ふるさとの ひとびとも こいしきに.
さすがに 凡夫 なれば 古郷の 人人も 恋しきに.

ざいぞくの みやづかえ ひま なき みに この きょうを しんずる ことこそ けう なるに.
在俗の 官仕 隙 なき 身に 此の 経を 信ずる 事こそ 稀有 なるに.

さんがを しのぎ そうかいを へて はるかに たずね きたり たまいし こころざし.
山河を 凌ぎ 蒼海を 経て 遥に 尋ね 来り 給いし 志.

こうじょうに ほねを くだき せきれいに みを なげし ひとびとにも いかでか おとり たもうべき.
香城に 骨を 砕き 雪嶺に 身を 投げし 人人にも 争でか 劣り 給うべき.

また わが みは これほどに うかび がたかりしが いかなりける ことにてや.
又 我が 身は これ程に 浮び 難かりしが いかなりける 事にてや.

どう 11ねんの はるの ころ しゃめん せられて かまくらに かえり のぼりけむ.
同 十一年の 春の 比 赦免 せられて 鎌倉に 帰り 上りけむ.

つらつら ことの こころを あんずるに いまは わがみに あやまち あらじ.
倩 事の 情を 案ずるに 今は 我身に 過 あらじ.

あるいは いのちに およばんとし.
或は 命に 及ばんとし.

こうちょうには いずの くに ぶんえいには さどのしま.
弘長には 伊豆の 国 文永には 佐渡の島.

かんぎょう さいさんに およべば るなん ちょうじょうせり.
諌暁 再三に 及べば 留難 重畳せり.

ぶっぽうちゅうおんの かしゃくをも みには はや まぬがれぬらん.
仏法中怨の 誡責をも 身には はや 免れぬらん.

→a1193

b1194

しかるに いま さんりんに よを のがれ みちを すすまんと おもいしに.
然るに 今 山林に 世を 遁れ 道を 進まんと 思いしに.

ひとびとの ことば さまざま なり.
人人の 語 様様 なり.

しかども かたがた ぞんずる むね ありしに よりて.
しかども 旁 存ずる 旨 ありしに 依りて.

とうごく とうざんに いりて すでに しちねんの しゅんじゅうを おくる.
当国 当山に 入りて 已に 七年の 春秋を 送る.

また みの ちぶんをば しばらく おきぬ.
又 身の 智分をば 且らく 置きぬ.

ほけきょうの かとうどとして なんを しのび きずを こうむる ことは.
法華経の 方人として 難を 忍び 疵を 蒙る 事は.

かんどの てんだいだいしにも こえ にちいきの でんぎょうだいしにも すぐれたり.
漢土の 天台大師にも 越え 日域の 伝教大師にも 勝れたり.

これは ときの しからしむるが ゆえなり.
是は 時の 然らしむる 故なり.

わが み ほけきょうの ぎょうじゃ ならば りょうぜんの きょうしゅ しゃか.
我が 身 法華経の 行者 ならば 霊山の 教主 釈迦.

ほうじょうせかいの たほうにょらい じっぽう ぶんしんの しょぶつ ほんげの だいし.
宝浄世界の 多宝如来 十方 分身の 諸仏 本化の 大士.

しゃっけの だいぼさつ ぼん しゃく りゅうじん じゅうらせつにょも さだめて.
迹化の 大菩薩 梵 釈 竜神 十羅刹女も 定めて.

この みぎりに おわしますらん.
此の 砌に おはしますらん.

みず あれば うお すむ はやし あれば とり きたる.
水 あれば 魚 すむ 林 あれば 鳥 来る.

ほうらいざんには たま おおく まりざんには せんだん しょうず.
蓬莱山には 玉 多く 摩黎山には 栴檀 生ず.

れいすいの やまには こがね あり.
麗水の 山には 金 あり.

いま この ところも かくの ごとし.
今 此の 所も 此くの 如し.

ほとけ ぼさつの すみ たもう くどくじゆの みぎり なり.
仏 菩薩の 住み 給う 功徳聚の 砌 なり.

おおくの つきひを おくり どくじゅし たてまつる ところの ほけきょうの くどくは こくうにも あまりぬべし.
多くの 月日を 送り 読誦し 奉る 所の 法華経の 功徳は 虚空にも 余りぬべし.

しかるを まいとし たびたびの ごさんけいには.
然るを 毎年 度度の 御参詣には.

むしの ざいしょうも さだめて こんじょう いっしょうに しょうめつ すべきか.
無始の 罪障も 定めて 今生 一生に 消滅 すべきか.

いよいよ はげむべし はげむべし.
弥 はげむべし はげむべし.

10がつ ようか.
十月 八日.

にちれん かおう.
日蓮 花押.

しじょうなかつかさ さぶろうざえもんどの ごへんじ.
四条中務 三郎左衛門殿 御返事.

→a1194

 
→a1193
→c1193
 ホームページトップ
inserted by FC2 system