b1296.
法衣書 (ほうえ しょ).
日蓮大聖人 88歳 御作.

 

ほうえ しょ.
法衣 書.

おんころも ならびに ひとえぎぬ たび そうらい おわんぬ.
御衣布 並に 単衣布 給 候い 了んぬ.

そもそも しょくは いのちを つぎ きぬは みを かくす.
抑 食は 命を つぎ 衣は 身を かくす.

しょくを うじょうに ほどこす ものは ちょうじゅの むくいを まねき.
食を 有情に 施す ものは 長寿の 報を まねき.

ひとの しょくを うばう ものは たんめいの むくいを うく.
人の 食を 奪うものは 短命の 報を うく.

きぬを ひとに ほどこさぬ ものは せぜ ぞんしょうに らぎょうの むくいを かんず.
衣を 人に ほどこさぬ 者は 世世 存生に 裸形の 報を 感ず.

ろくどうの なかに じんどう いげは みな かたち はだかにし て うまれる.
六道の 中に 人道 已下は 皆 形 裸にして 生る.

てんは ずいしょうえ なり.
天は 随生衣 なり.

その なかの しか などは むえにして うまる のみならず.
其の 中の 鹿 等は 無衣にして 生る のみならず.

ひとの きぬを ぬすみし ゆえに みの かわを ひとに はがれて.
人の 衣を ぬすみし ゆへに 身の 皮を 人に はがれて.

ぬすみし きぬを つぐのうの ほうを えたり.
盗し 衣を 償の ほうを えたり.

ひとの なかにも せんびゃくびくには しょうぜし とき きぬをきて うまれぬ.
人の 中にも 鮮白比丘には 生ぜし 時 衣を 被て 生れぬ.

ぶっぽうの なかにも らぎょうにして ほうを ぎょうずる みち なし.
仏法の 中にも 裸形にして 法を 行ずる 道 なし.

ゆえに しゃくそんは まかなだいもびくにの きぬを えて しょうかくを なり たまいき.
故に 釈尊は 摩訶大母比丘尼の 衣を 得て 正覚を なり 給いき.

もろもろの びくには さんえを ゆるされき.
諸の 比丘には 三衣を ゆるされき.

どんこんの びくは いしょく ととのわざれば あらかんかを しょうせずと みえて そうろう.
鈍根の 比丘は 衣食 ととのわざれば 阿羅漢果を 証せずと みへて 候.

ことに ほけきょうには にゅうわにんにくえと もうして きぬを こそ ほんとして そうらえ.
殊に 法華経には 柔和忍辱衣と 申して 衣を こそ 本として 候へ.

また ほけきょうの ぎょうじゃば きぬを もって おおわせ たもうと もうすも ねんごろ なる ぎ なり.
又 法華経の 行者をば 衣を もつて 覆せ 給うと 申すも ねんごろ なる ぎ なり.

にちれんは むかいの びく じゃけんの ものなり.
日蓮は 無戒の 比丘 邪見の 者なり.

ゆえに てん これを にくませ たまいて しょくえ とぼしき みにて そうろう.
故に 天 これを にくませ 給いて 食衣 ともしき 身 にて 候.

しかりと いえども ほけきょうを くちに じゅし とき どき これを とく.
しかりと いえども 法華経を 口に 誦し とき どき これを とく.

たとえば おろちの たまを ふくみ いらん より.
譬へば 大蛇の 珠を 含み 伊蘭 より.

せんだんを しょうずるが ごとし.
せんだんを 生ずるが ごとし.

いらんを すてて せんだん まいらせ そうろう.
いらんを すてて せんだん まいらせ 候.

ちぎょうを かくして たまを さずけ たてまつる.
チ形を かくして 珠を 授け たてまつる.

てんだいだいし いわく.
天台大師 云く.

「たきょうは ただ おとこに きして おんなに きせず」とう うんぬん.
「他経は 但 男に 記して 女に 記せず」等 云云.

ほけきょうに あらざれば にょにんじょうぶつは ゆるされざるか.
法華経に あらざれば 女人成仏は 許されざるか.

ぐそくせんまんこうそうにょらいと もうすは まかだいびくにの ことなり.
具足千万光相如来と 申すは 摩訶大比丘尼の ことなり.

これら もって おしはかり そうろうに にょにんの じょうぶつはほけきょうにより そうろうべきか.
此れ等 もつて をしはかり 候に 女人の 成仏は 法華経により 候べきか.

ようとうせつしんじつは きょうしゅしゃくそんの きんげん.
要当説真実は 教主釈尊の 金言.

かいぜしんじつは たほうぶつの しょうめい.
皆是真実は 多宝仏の 証明.

ぜっそうしぼんてんは しょぶつの せいじょう なり.
舌相至梵天は 諸仏の 誓状 なり.

にちがつは ちに おつべしや しゅみせんは くずるべしや.
日月は 地に 落つべしや 須弥山は くづるべしや.

たいかいの しおは ぞうげん せざるべしや だいちは ほんぷく すべしや.
大海の 潮は 増減 せざるべしや 大地は 飜覆 すべしや.

この おんきぬの くどくは ほけきょうに とかれて そうろう.
此の 御衣の 功徳は 法華経に とかれて 候.

ただ こころを もって おもいやらせ たまい そうらえ.
但 心を もつて をもひやらせ 給い 候へ.

ことばには のべがたし.
言には のべがたし.

 
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