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松野殿女房御返事 (まつのどの にょうぼう ごへんじ)
別名、身延山御書 (みのぶさん ごしょ).
日蓮大 聖人 58歳御作.

 

まつのどの にょうぼう ごへんじ.
松野殿 女房 御返事.

むぎ ひとはこ いえの いも ひとかご うり ひとかご.
麦 一箱・ いゑの いも 一篭・ うり 一篭・.

かたがたの もの 6がつ 3かに たび そうらいしを.
旁の 物 六月 三日に 給 候しを.

いままで ごへんじ もうし そうらわざりし こと おそれいって そうろう.
今まで 御返事 申し 候はざり し事 恐れ入つて 候、.

この みのぶの さわと もうす ところは かいの くにの いいの みまき はきいの 3かごうの うち.
此の 身延の 沢と 申す 処は 甲斐の 国の 飯井野・ 御牧・ 波木井の 三箇郷の 内・.

はきいの ごうの いぬいの すみに あたりて そうろう.
波木井の 郷の 戌亥の 隅に あたりて 候、.

きたには みのぶの たけ てんを いただき.
北には 身延の 嶽・ 天を いただき.

みなみには たかとりがたけ くもに つづき.
南には 鷹取が嶽・ 雲に つづき.

ひがしには てんしの たけ ひと たけ おなじ.
東には 天子の 嶽 日と たけ をなじ.

にしには また ががとして たいざん つづきて しらねの たけに わたれり.
西には 又 峨峨として 大山 つづきて・  しらねの 嶽に わたれり、.

ましらの なく こえ てんに ひびき せみの さえずり ちに みてり.
ましらの なく 音 天に 響き 蝉の さゑづり 地に みてり、.

てんじくの りょうぜん この ところに きたれり.
天竺の 霊山 此の 処に 来れり.

とうどの てんだいさん まのあたり ここに みる.
唐土の 天台山 親り ここに 見る、.

わが みは しゃかぶつに あらず てんだいだいし にては なけれども.
我が 身は 釈迦仏に あらず 天台大師 にては なけれども、.

まかる まかる ちゅうやに ほけきょうを よみ ちょうぼに まかしかんを だんずれば.
まかる・ まかる 昼夜に 法華経を よみ 朝暮に 摩訶止観を 談ずれば.

りょうぜんじょうどにも あいにたり てんだいさんにも ことならず.
霊山浄土にも 相似たり・ 天台山にも 異ならず。.

ただし うだいの えしん なれば きざれば.
但し 有待の 依身 なれば 著ざれば.

かぜ みに しみ くらわざれば いのち たもちがたし.
風・ 身に しみ・ 食ざれば 命 持ちがたし、.

ともしびに あぶらを つがず ひに まきを くわえざるが ごとし.
灯に 油を つがず 火に 薪を 加へざるが 如し.

いのち いかでか つぐべき やらん.
命 いかでか つぐべき やらん、.

いのち つづき がたく つぐべき ちから たえては.
命 続 がたく・ つぐべき 力 絶えては、.

あるいは 1にち ないし 5か すでに ほけきょう どくじゅの こえも たえぬべし.
或は 一日 乃至・ 五日 既に 法華経 読誦の 音も 絶えぬべし.

しかんの まどの まえには くさ しげりなん.
止観の まどの 前には 草 しげりなん、.

かくの ごとく そうろうに いかにして おもい よらせ たまいぬらん.
かくの 如く 候に いかにして 思い 寄らせ 給いぬらん、.

うさぎは きょうぎょうの ものを くよう せしかば.
兎は 経行の 者を 供養 せしかば.

てんてい あわれみを なして つきの なかに おかせ たまいぬ.
天帝 哀みを なして 月の 中に をかせ 給いぬ・.

いま てんを あおぎみるに つきの なかに うさぎ あり.
今 天を 仰ぎ 見るに 月の 中に 兎 あり。.

されば にょにんの おんみとして.
されば 女人の 御身として.

かかる じょくせ まつだいに ほけきょうを くようし ましませば.
かかる 濁世 末代に 法華経を 供養し ましませば、.

ぼんのうも てんげんを もって ごらんじ.
梵王も 天眼を 以て 御覧じ.

たいしゃくは たなごころを あわせて おがませ たまい.
帝釈は 掌を 合わせて をがませ 給ひ.

ちじんは みあしを いただきて よろこび.
地神は 御足を いただきて 喜び.

しゃかぶつは りょうぜんより みてを のべて.
釈迦仏は 霊山より 御手を のべて.

おんいただきを なでさせ たまうらん.
御頂を なでさせ 給うらん、.

なんみょうほうれんげきょう なんみょうほうれんげきょう.
南無妙法蓮華経・ 南無妙法蓮華経、.

きょうきょう きんげん.
恐恐 謹言。.

こうあん 2ねん つちのとう 6がつ はつか.
弘安 二年 己卯 六月 二十日.

にちれん かおう.
日蓮 花押.

まつのどの にょうぼう ごへんじ.
松野殿 女房 御返事.

 
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