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妙法尼御前御返事 (みょうほうあまごぜん ごへんじ)
別名、一句肝心事 (いっくかんじんの こと).
日蓮大 聖人 57歳 御作.

 

b1402

みょうほうあまごぜん ごへんじ).
妙法尼御前 御返事.

まず ほけきょうに つけて ごふしんを たてて その おもむきを おんたずね そうろう こと.
先 法華経に つけて 御不審を たてて 其 趣を 御尋ね 候 事.

ありがたき だいぜんこんにて そうろう.
ありがたき 大善根にて 候、.

しゅみせんを たほうの せかいへ つぶてに なぐる ひと よりも.
須弥山を 他方の 世界へ つぶてに なぐる 人 よりも・.

3000だいせんせかいを まりの ごとくに けあげる ひと よりも.
三千大千世界を まりの 如くに けあぐる 人 よりも.

むりょうの よの きょうてんを うけもちて ひとに とききかせ.
無量の 余の 経典を 受け持ちて 人に 説ききかせ.

ちょうもんの どうぞくに 6じんつうを えせしめん よりも.
聴聞の 道俗に 六神通を えせしめん よりも、.

まっぽうの きょうこのごろ.
末法の けふこのごろ.

ほけきょうの いっくいちげの いわれをも たずね とう ひとは ありがたし.
法華経の 一句一偈の いはれをも 尋ね 問う 人は ありがたし、.

この おもむきを しゃくし たまいて ひとの ごふしんを はらさすべき そうも ありがたかるべしと.
此の 趣を 釈し 給いて 人の 御不審を はらさすべき 僧も ありがたかるべしと、.

ほけきょうの 4のまき ほうとうほんと もうす ところに.
法華経の 四の巻・ 宝塔品と 申す 処に.

ろくなんくいと もうして だいじの ほうもん そうろう.
六難九易と 申して 大事の 法門 候、.

いま この ごふしんは 6の かたきことの うちなり.
今 此の 御不審は 六の 難き事の 内なり、.

ここに しらんぬ もし おんたもち あらば そくしんじょうぶつの ひと なるべし.
爰に 知んぬ 若し 御持ち あらば 即身成仏の 人 なるべし、.

この ほけきょうには われらが みをば ほっしんにょらい.
此の 法華経には 我等が 身をば 法身如来・.

われらが こころをば ほうしんにょらい.
我等が 心をば 報身如来・.

われらが ふるまいをば おうじんにょらいと とかれて そうらえば.
我等が ふるまひをば 応身如来と 説かれて 候へば、.

この きょうの いっくいちげを たもち しんずる ひとは みな この くどくを そなえ そうろう.
此の 経の 一句一偈を 持ち 信ずる 人は 皆 此の 功徳を そなへ 候、.

なんみょうほうれんげきょうと もうすは これ いっくいちげにて そうろう.
南無妙法蓮華経と 申すは 是れ 一句一偈にて 候、.

しかれども おなじ いっくの なかにも かんじんにて そうろう.
然れども 同じ 一句の 中にも 肝心にて 候、.

なんみょうほうれんげきょうと となうる ばかりにて ほとけに なるべしやと.
南無妙法蓮華経と 唱うる 計りにて 仏に なるべしやと、.

この ごふしん しょせんに そうろう.
此の 御不審 所詮に 候・.

いちぶの かんよう はちじくの こつずいにて そうろう.
一部の 肝要 八軸の 骨髄にて 候。.

ひとの みのたけ 5しゃく 6しゃくの たましいも いっしゃくの おもてに あらわれ.
人の 身の 五尺・ 六尺の たましひも 一尺の 面に あらはれ・.

いっしゃくの かおの たましいも いっすんの まなこの うちに おさまり そうろう.
一尺の かほの たましひも 一寸の 眼の 内に おさまり 候、.

また にほんと もうす ふたつの もじに 66かこくの.
又 日本と 申す 二の 文字に 六十六箇国の.

じんちく でんぱた じょうげきせん しっちんばんぽう.
人畜・ 田畠・ 上下・ 貴賤・ 七珍万宝・.

ひとつも かくる こと そうらわず おさめて そうろう.
一も かくる 事 候はず 収めて 候、.

そのごとく なんみょうほうれんげきょうの だいもくの うちには.
其のごとく 南無妙法蓮華経の 題目の 内には.

いちぶ はっかん 28ぽん 6まん9384の もじ.
一部 八巻・ 二十八品・ 六万九千三百八十四の 文字・.

いちじも もれず かけず おさめて そうろう.
一字も もれず・ かけず おさめて 候、.

されば きょうには だいもくたり ほとけには まなこたりと らくてんも のべられて そうろう.
されば 経には 題目たり 仏には 眼たりと 楽天も のべられて 候、.

きの 8に りゃくして きょうだいを あぐるに.
記の 八に 略して 経題を 挙ぐるに.

げんに いちぶを おさむと みょうらくも しゃくし おわしまし そうろう.
玄に 一部を 収むと 妙楽も 釈し おはしまし 候、.

こころは りゃくして きょうの なばかりを あぐるに いちぶを おさむと もうす もん なり.
心は 略して 経の 名計りを 挙ぐるに 一部を 収むと 申す 文 なり、.

いっさいの ことに つけて しょせん かんようと もうす ことあり.
一切の 事に つけて 所詮・ 肝要と 申す 事あり、.

ほけきょう いちぶの かんじんは なんみょうほうれんげきょうの だいもくにて そうろう.
法華経 一部の 肝心は 南無妙法蓮華経の 題目にて 候、.

あさゆう おんとなえ そうらわば まさしく ほけきょう いちぶを しんどくに あそばすにて そうろう.
朝夕 御唱え 候はば 正く 法華経 一部を 真読に あそばすにて 候、.

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b1403

にへん となうるは にぶ ないし ひゃっぺんは ひゃくぶ せんべんは せんぶ.
二返 唱うるは 二部 乃至 百返は 百部・ 千返は 千部・.

かように ふたいに おんとなえ そうらわば.
加様に 不退に 御唱え 候はば.

ふたいに ほけきょうを よむ ひとにて そうろうべく そうろう.
不退に 法華経を 読む 人にて 候べく 候、.

てんだいの 60かんと もうす もんには この ようを しゃくせられて そうろう.
天台の 六十巻と 申す 文には 此の やうを 釈せられて 候、.

かかる たもちやすく ぎょうじやすき ほうにて そうろうを.
かかる 持ちやすく 行じやすき 法にて 候を.

まつだいあくせの いっさいしゅじょうの ために とき おかせ たまいて そうろう.
末代悪世の 一切衆生の ために 説き をかせ 給いて 候、.

きょうもんに いわく.
経文に 云く.

「おまっぽうちゅう おごまっせほうよくめつじ じゅじどくじゅ あくせまっぽうじ.
「於末法中・ 於後末世法欲滅時・ 受持読誦・ 悪世末法時・.

のうじぜきょうしゃ ごごひゃくさいちゅうこうせんるふ」と.
能持是経者・ 後五百歳中広宣流布」と、.

これらの もんの こころは とうじ まっぽうの よには.
此れ 等の 文の 心は 当時 末法の 代には.

ほけきょうを たもち しんずべき よしを とかれて そうろう.
法華経を 持ち 信ずべき よしを 説かれて 候、.

かかる みょうもんを がくし あやまりて.
かかる 明文を 学し あやまりて

にほん かんど てんじくの ほうぼうの がくしょうたち.
日本・ 漢土・ 天竺の 謗法の 学匠達.

みな ねんぶつ しんごん ぜん りつの しょうじょう ごんきょうには したがい ぎょうじて.
皆 念仏者・ 真言・ 禅・ 律の 小乗・ 権教には 随い 行じて.

ほけきょうを すてはて そうらいぬ.
法華経を 捨てはて 候ぬ、.

ぶつぽうに まどえるをば しろしめされず.
仏法に まどへるをば・ しろしめされず、.

かたち まことしげ なれば いうことも うたがい あらじと ばかり ごしんよう そうろう あいだ.
形 まことしげ なれば 云う事も 疑ひ あらじと 計り 御信用 候 間、.

おもわざるに ほけきょうの かたき しゃかぶつの あだと ならせ たまいて.
をもはざるに 法華経の 敵・ 釈迦仏の 怨と ならせ 給いて.

こんじょうには いのる しょがんも むなしく いのちも みじかく.
今生には 祈る 所願も 虚しく 命も みじかく.

ごしょうには むけんだいじょうを すみかと すべしと.
後生には 無間大城を すみかと すべしと.

まさしく きょうもんに みえて そうろう.
正しく 経文に 見えて 候。.

さて この きょうの だいもくは ならい よむこと なくして だいなる ぜんこんにて そうろう.
さて 此の 経の 題目は 習い 読む 事 なくして 大なる 善根にて 候、.

あくにんも にょにんも ちくしょうも じごくの しゅじょうも.
悪人も 女人も 畜生も 地獄の 衆生も.

じっかい ともに そくしんじょうぶつと とかれて そうろうは.
十界 ともに 即身成仏と 説かれて 候は、.

みずの そこなる いしに ひの あるが ごとく.
水の 底なる 石に 火の あるが 如く.

ひゃくせんまんねん くらき ところにも ともしびを いれぬれば あかくなる.
百千万年 くらき 所にも 燈を 入れぬれば あかくなる、.

せけんの あだ なる ものすら なお かように ふしぎ あり.
世間の あだ なる ものすら 尚 加様に 不思議 あり、.

いかに いわんや ぶっぽうの みょうなる ごほうの おんちからをや.
何に 況や 仏法の 妙なる 御法の 御力をや、.

われら しゅじょう あくごう ぼんのう しょうじかばくの みが.
我等 衆生 悪業・煩悩・生死果縛の 身が、.

しょう りょう えんの さんぶっしょうの いんに よりて.
正・ 了・ 縁の 三仏性の 因に よりて.

そく ほっぽうおうの さんじんと あらわれん こと うたがい なかるべし.
即法・ 報・ 応の 三身と 顕われん 事 疑ひ なかるべし、.

みょうほうきょうりき そくしんじょうぶつと でんぎょうだいしも しゃくせられて そうろう.
妙法経力 即身成仏と 伝教大師も 釈せられて 候、.

こころは ほけきょうの ちからにては くちなわの りゅうにょも そくしんじょうぶつ したりと もうす ことなり.
心は 法華経の 力にては くちなはの 竜女も 即身成仏 したりと 申す 事なり.

おんうたがい そうろう べからず.
御疑 候 べからず.

くわしくは けんざんに いり そうらいて もうすべく そうろうと もうさせ たまえ.
委くは 見参に 入り 候て 申すべく 候と 申させ 給へ。.

こうあん がんねん つちのえとら 7がつ みっか.
弘安 元年 戊寅 七月 三日.

にちれん かおう.
日蓮 花押.

みょほうあまごぜん ごへんじ.
妙法尼御前 御返事.

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