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春初御消息 (はるのはじめごしょうそく).
日蓮大聖人 60歳 御作.

 

はるのはじめ ごしょうそく.
春初御消息.

ほうきどの かきて そうろう こと よろこび いりて そうろう.
ははき殿 かきて 候 事 よろこび いりて 候.

はるの はじめの おんよろこび きに はなの さくが ごとく.
春の 初の 御悦び 木に 花の さくが ごとく.

やまに くさの おい いずるが ごとし.
山に 草の 生 出ずるが ごとしと.

われも ひとも よろこび いって そうろう.
我も 人も 悦び 入つて 候.

さては おんおくりものの にっき こめ いっぴょう しお いっぴょう.
さては 御送り物の 日記・ 八木 一俵・ 白塩 一俵・.

むしもち 30まい いも いっぴょう たび そうらい おわんぬ.
十字 三十枚・ いも 一俵 給び 候い 畢んぬ.

しんざんの なかに しらゆき みっかの あいだに にわは いちじょうに つもり.
深山の 中に 白雪 三日の 間に 庭は 一丈に つもり.

たには みねと なり みねは てんに はし かけたり.
谷は みねと なり みねは 天に はし かけたり.

ちょうろくは あんしつに いり しょうぼくは やまに さしいらず.
鳥鹿は 庵室に 入り 樵牧は 山に さしいらず.

ころもは うすし しょくは たえたり.
衣は うすし 食は たえたり.

よるは かんくちょうに ことならず.
夜は かんく鳥に ことならず.

ひるは さとへ いでんと おもう こころ ひまなし.
昼は 里へ いでんと おもふ 心 ひまなし.

すでに どきょうの こえも たえ かんねんの こころも うすし.
すでに 読経の こえも たえ 観念の 心も うすし.

こんじょう たいてんして みらい さんごを へん ことを なげき そうらいつる ところに.
今生 退転して 未来 三五を 経ん 事を なげき 候いつる ところに.

この おんとぶらいに いのち いきて.
此の 御とぶらひに 命 いきて.

またもや けんざんに いり そうらわんずらんと うれしく そうろう.
又もや 見参に 入り 候はんずらんと うれしく 候.

かこの ほとけは ぼんぷにて おわしまし そうらいし とき.
過去の 仏は 凡夫にて おはしまし 候いし 時.

ごじょくらんまんの よに かかる うえたる ほけきょうの ぎょうじゃを やしないて.
五濁乱漫の 世に かかる 飢えたる 法華経の 行者を やしなひて.

ほとけには ならせ たもうぞと みえて そうらえば.
仏には ならせ 給うぞと みえて 候へば.

ほけきょう まこと なれば この くどくに よりて.
法華経 まことならば 此の 功徳に よりて.

かこの おんちちは じょうぶつ うたがいなし.
過去の 慈父は 成仏 疑なし.

こ ごろうどのも いまは りょうぜんじょうどに まいり あわせ たまいて.
故 五郎殿も 今は 霊山浄土に まいり あはせ 給いて.

こ とのに おんこうべを なでられさせ たもうべしと.
故 殿に 御かうべを なでられさせ 給うべしと・

おもいやり そうらえば なみだ かき あえられず.
おもひやり 候へば 涙 かき あへられず.

きょうきょう きんげん.
恐恐 謹言。

しょうがつ はつか.
正月 二十日.

にちれん かおう.
日蓮 花押.

うえのどの ごへんじ.
上野殿 御返事.

もうすこと おそれいって そうろう.
申す事 恐れ 入つて 候.

へんへん ほうきどの いちいちに よみきかせ まいらせ そうらえ.
返返 ははき殿 一 一に よみきかせ まいらせ 候へ。

 
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