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義浄房御書(ぎじょうぼう ごしょ)
別名、己心仏界抄(こしん ぶっかいしょう).
日蓮大聖人 52歳 御作.

 

ぎじょうぼう ごしょ.
義浄房 御書.

ごほうもんの こと くわしく うけたまわり そうらい おわんぬ.
御法門の 事 委しく 承はり 候い 畢んぬ.

ほけきょうの くどくと もうすは ゆいぶつよぶつの きょうがい.
法華経の 功徳と 申すは 唯仏与仏の 境界.

じっぽうぶんしんの ちえも およぶか およばざるかの ないしょう なり.
十方分身の 智慧も 及ぶか 及ばざるかの 内証 なり.

されば てんだいだいしも みょうの いちじ をば.
されば 天台大師も 妙の 一字 をば.

みょうとは みょうは ふかしぎと なづくと しゃくし たまいて そうろうなるぞ.
妙とは 妙は 不可思議と 名くと 釈し 給いて 候なるぞ.

さきざき ごぞんじの ごとし.
前前 御存知の 如し.

しかれども この きょうに おいて じゅうじゅうの しゅぎょう わかれたり.
然れども 此の 経に 於て 重重の 修行 分れたり.

てんだい みょうらく でんぎょう とう ばかり しらせ たもう ほうもん なり.
天台 妙楽 伝教 等 計り しらせ 給う 法門 なり.

なかんずく でんぎょうだいしは てんだいの こうしんにて わたらせ たまえども.
就中く 伝教大師は 天台の 後身にて 渡らせ 給へども.

ひとの ふしんを はらさんとや おぼしめしけん.
人の 不審を 晴さんとや 思し食しけん.

だいとうへ けつを つかわし たもう こと おおし.
大唐へ 決を つかはし 給ふ 事 多し.

されば こんきょうの しょせんは じっかいごぐ ひゃっかいせんにょ いちねんさんぜんと いうこと こそ.
されば 今経の 所詮は 十界互具 百界千如 一念三千と 云ふ事 こそ.

ゆゆしき だいじ にては そうろうなれ.
ゆゆしき 大事 にては 候なれ.

この ほうもんは まかしかんと もうす もんに しるされて そうろう.
此の 法門は 摩訶止観と 申す 文に しるされて 候.

つぎに じゅりょうほんの ほうもんは にちれんが みに とって たのみある こと ぞかし.
次に 寿量品の 法門は 日蓮が 身に 取つて たのみある こと ぞかし.

てんだい でんぎょう とうも ほぼ しらせ たまえども ことばに いだして のべ たまわず.
天台 伝教 等も 粗 しらせ 給へども 言に 出して 宣べ 給はず.

りゅうじゅ てんじん とうも また かくの ごとし.
竜樹 天親 等も 亦 是くの 如し.

じゅりょうほんの じがげに いわく.
寿量品の 自我偈に 云く.

「いっしんに ほとけを み たてまつらんと ほっして みずから しんみょうを おしまず」 うんぬん.
「一心に 仏を 見 たてまつらんと 欲して 自ら 身命を 惜しまず」 云云.

にちれんが こしんの ぶっかいを この もんに よって あらわす なり.
日蓮が 己心の 仏界を 此の 文に 依つて 顕はす なり.

その ゆえは じゅりょうほんの じの いちねんさんぜんの さんだいひほうを じょうじゅせる こと.
其の 故は 寿量品の 事の 一念三千の 三大秘法を 成就せる 事.

この きょうもん なり ひすべし ひすべし.
此の 経文 なり 秘す可し 秘す可し.

えいざんの だいし ととうして この もんの てんを そうでんし たもう ところなり.
叡山の 大師 渡唐して 此の 文の 点を 相伝し 給う 処なり.

1とは いちどう せいじょうの ぎ.
一とは 一道 清浄の 義.

しんとは しょほう なり.
心とは 諸法 なり.

されば てんだいだいし しんの じを しゃくして いわく.
されば 天台大師 心の 字を 釈して 云く.

「ひとつき さんせい しんか しょうじょう」 うんぬん.
「一月 三星 心果 清浄」 云云.

にちれん いわく 1とは みょう なり しんとは ほう なり.
日蓮 云く 一とは 妙 なり 心とは 法 なり.

よくとは れん なり けんとは げ なり ほとけとは きょう なり.
欲とは 蓮 なり 見とは 華 なり 仏とは 経 なり.

この 5じを ぐつう せんには ふしゃくしんみょう これなり.
此の 五字を 弘通 せんには 不自惜身命 是なり.

いっしんに ほとけを みる こころを ひとつにして ほとけを みる.
一心に 仏を 見る 心を 一にして 仏を 見る.

いっしんを みれば ほとけ なり.
一心を 見れば 仏 なり.

むさの さんじんの ぶっかを じょうじゅ せん ことは.
無作の 三身の 仏果を 成就 せん 事は.

おそらくは てんだい でんぎょう にも こえ りゅうじゅ かしょう にも すぐれたり.
恐くは 天台 伝教 にも 越へ 竜樹 迦葉 にも 勝れたり.

あいかまえて あいかまえて こころの しとは なるとも こころを しと すべからずと.
相構へ 相構へて 心の 師とは なるとも 心を 師と すべからずと.

ほとけは しるし たまいしなり.
仏は 記し 給ひしなり.

ほけきょうの おんために みをも すて いのちも おしまざれと.
法華経の 御為に 身をも 捨て 命をも 惜まざれと.

ごうじょうに もうせしは これなり.
強盛に 申せしは 是なり.

なんみょうほうれんげきょう なんみょうほれんげきょう.
南無妙法蓮華経 南無妙法蓮華経.

ぶんえい 10ねん 5がつ 28にち.
文永 十年 五月 二十八日.

ぎじょうぼう ごへんじ.
義浄房 御返事.

 
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