b1537から1540.
上野殿御返事(うえのどの ごへんじ)
別名、梵帝御計事(ぼんたい おんはからいの こと).
日蓮大 聖人 56歳御作.

 

b1537

うえのどの ごへんじ.
上野殿 御返事.

けんじ 3ねん 5がつ 56さい おんさく.
建治 三年 五月 五十六歳 御作.

5がつ じゅうよっかに いものかしら 1だ わざと おくりたびて そうろう.
五月 十四日に いものかしら 一駄・わざと おくりたびて 候、.

とうじの いもは ひとの いとまと もうし たまの ごとし くすりの ごとし.
当時の いもは 人の いとまと 申し 珠の ごとし・くすりの ごとし、.

さては おおせ つかわされて そうろうこと うけ たまわり そうらいぬ.
さては おほせ つかはされて 候事 うけ 給わり 候いぬ。.

いんきっぽと もうせし ひとは ただ 1にん こ あり はくきと もうす.
尹吉甫と 申せし 人は・ただ 一人 子 あり・ 伯奇と 申す、.

おやも けん なり こも かしこし.
をやも 賢 なり・ 子も かしこし・.

いかなる ひとか この なかをば もうし たがう べきと おもい しかども.
いかなる 人か この 中をば 申し たがふ べきと・おもひ しかども・.

けいぼ より よりより うったえしに もちい ざりし ほどに.
継母 より・よりより うたへしに 用い ざりし ほどに・.

けいぼ すねんが あいだ ようようの たばかりを なせし なかに.
継母 すねんが 間・ やうやうの たばかりを・ なせし 中に、.

はちと もうす むしを わが ふところに いれて いそぎいそぎ はくきに とらせて.
蜂と 申す むしを 我が ふところに 入れて・ いそぎいそぎ 伯奇に とらせて・.

しかも ちちに みせ われを けそう すると もうしなして うしなわんと せしなり.
しかも 父に みせ・ われを けそう すると 申しなして・うしなはんと せしなり。.

びんばさらおうと もうせし おうは けんのう なる うえ ほとけの おんだんなの なかに えんぶ だい1 なり.
びんばさら王と 申せし 王は 賢王 なる 上・仏の 御だんなの 中に 閻浮 第一 なり、.

しかも この おうは まかだこくの おう なり.
しかも この 王は 摩竭提国の 王 なり、.

ほとけは また この くにに して ほけきょうを とかんと おぼししに.
仏は 又 此の 国に して 法華経を・ とかんと おぼししに・.

おうと ほとけと いちどう なれば いちじょう ほけきょう とかれなんと みえて そうらいしに.
王と 仏と 一同 なれば 一定 法華経 とかれなんと みへて 候しに、.

だいばだったと もうせし ひと いかんがして この ことを やぶらんと おもいしに.
提婆達多と 申せし 人・ いかんがして 此の 事を やぶらんと・ おもひしに・.

すべて たより なかりしかば とこう はかりし ほどに.
すべて・ たより なかりしかば・ とかう はかりし ほどに・.

びんばしゃらおうの たいし あじゃせおうを としごろと かく かたらいて.
頻婆沙羅王の 太子 阿闍世王を としごろと かく かたらひて・.

ようやく こころを とり おやと ことの なかを もうし たがえて.
やうやく 心を とり・ をやと 子との なかを 申し たがへて・.

あじゃせおうを すかし ちちの びんばしゃらおうを ころさせ.
阿闍世王を すかし 父の 頻婆沙羅王を ころさせ・.

あじゃせおうと こころを ひとつにし だいばと あじゃせおうと いちみと なり しかば.
阿闍世王と 心を 一にし 提婆と 阿闍世王と 一味と なり しかば・.

5てんじくの げどう あくにん くも かすみの ごとく あつまり.
五天竺の 外道・ 悪人・ 雲 かすみの ごとく あつまり・.

くにを たび たからを ほどこし こころを やわらげ すかし しかば.
国を たび・ たからを ほどこし・ 心を やわらげ すかし しかば・.

いっこくの おう すでに ほとけの だいおんてきと なる.
一国の 王 すでに 仏の 大怨敵と なる、.

よっかい だい6てんの まおう むりょうの けんぞくを ぐそくして うち くだり.
欲界・ 第六天の 魔王・ 無量の 眷属を 具足して うち 下り、.

まかだこくの だいば あじゃせ 6だいじんらの みに いりかわり しかば.
摩竭提国の 提婆・ 阿闍世・ 六大臣等の 身に 入りかはり しかば・.

かたちは ひと なれども ちからは だい6てんの ちから なり.
形は 人 なれども 力は 第六天の 力 なり、.

だいふうの そうもくを なびかすよりも だいふうの たいかいの なみを たつる よりも.
大風の 草木を なびかすよりも・ 大風の 大海の 波を たつる よりも・.

だいじしんの だいちを うごかす よりも だいかの れんたくを やく よりも.
大地震の 大地を うごかす よりも・大火の 連宅を やく よりも・.

さわがしく おじわななきし こと なり.
さはがしく をぢわななきし 事 なり。.

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b1538

されば はるりおうと もうせし おうは あじゃせおうに かたらわれ.
されば はるり王と 申せし 王は 阿闍世王に かたらはれ.

しゃかぶつの おんみ したしき ひと すうひゃくにん きりころす.
釈迦仏の 御身 したしき 人 数百人 切りころす、.

あじゃせおうは すいぞうを はなちて でしを むりょうむへん ふみころさせつ.
阿闍世王は 酔象を 放ちて 弟子を 無量無辺 ふみころさせつ、.

あるいは みちに へいしを すえ あるいは いに ふんを いれ.
或は 道に 兵士を すへ・ 或は 井に 糞を 入れ・.

あるいは にょにんを かたらいて そらごと いいつけて ぶつでしを ころす.
或は 女人を かたらひて・ そら事 いひつけて 仏弟子を ころす、.

しゃりほつ もくれんが ことに あい かるだいが うまの くそに うづまれし.
舎利弗・ 目連が 事に あひ・ かるだいが 馬の くそに うづまれし、.

ほとけは せめられて いちげ 90にち うまの むぎを まいりし これなり.
仏は せめられて 一夏 九十日・ 馬の むぎを まいりし これなり、.

せけんの ひとの おもわく.
世間の 人の おもはく・.

あくにんには ほとけの おんちからも かなわざりけるにやと おもいて.
悪人には 仏の 御力も かなはざりけるにやと 思ひて.

しんじたりし ひとびとも こえを のみて もの もうさず.
信じたりし 人人も 音を のみて・ もの 申さず.

まなこを とじて ものを みる こと なし.
眼を とぢて ものを・ みる 事 なし、.

ただ したを ふり てを かきし ばかりなり.
ただ 舌を ふり 手を かきし 計りなり、.

けっくは だいばだった しゃかにょらいの ようぼ れんげびくにを うちころし.
結句は 提婆達多・ 釈迦如来の 養母・ 蓮華比丘尼を 打ちころし・.

ほとけの おんみより ちを いだせし うえ たれの ひとか かとうどに なるべき.
仏の 御身より 血を 出せし 上・ 誰の 人か・ かたうどに なるべき、.

かくようように なりての うえ いかが したりけん.
かくやうやうに なりての 上・ いかが したりけん.

ほけきょうを とかせ たまいぬ.
法華経を とかせ 給いぬ、.

この ほけきょうに いわく.
此の 法華経に 云く.

「しかも この きょうは にょらいの げんざいにすら なお おんしつ おおし いわんや めつどの のちをや」と うんぬん.
「而も 此の 経は 如来の 現在にすら 猶 怨嫉 多し 況や 滅度の 後をや」と 云云、.

もんの こころは わが げんざいして そうろうだにも この きょうの おんかたき かくの ごとし.
文の 心は 我が 現在して 候だにも 此の 経の 御かたき かくの ごとし、.

いかに いわうや まつだいに ほけきょうを いちじ いってんも とき しんぜん ひとをやと とかれて そうろうなり.
いかに いわうや 末代に 法華経を 一字 一点も とき 信ぜん 人をやと 説かれて 候なり、.

これを もって おもい そうらえば.
此れを もつて おもひ 候へば.

ほとけ ほけきょうを とかせ たまいて いまに いたるまでは 2せん2ひゃく2じゅうよねんに なり そうらえども.
仏・ 法華経を とかせ 給いて 今に いたるまでは 二千二百二十余年に なり 候へども・.

いまだ ほけきょうを ほとけの ごとく よみたる ひとは そうらわぬか.
いまだ 法華経を 仏の ごとく・ よみたる 人は 候はぬか、.

だいなんを もちてこそ ほけきょう しりたる ひととは もうす べきに.
大難を もちてこそ・ 法華経 しりたる 人とは 申す べきに、.

てんだいだいし でんぎょうだいしこそ ほけきょうの ぎょうじゃとは みえて そうらいしかども ざいせの ごとくの だいなん なし.
天台大師・ 伝教大師こそ 法華経の 行者とは・ みへて 候しかども 在世の ごとくの 大難 なし、.

ただ なんさん ほくしち なんと 7だいじの しょうなん なり.
ただ 南三・ 北七・ 南都・ 七大寺の 小難 なり、.

いまだ こくしゅ かたきと ならず ばんみん つるぎを にぎらず いっこく あっこうを はかず.
いまだ 国主 かたきと ならず・ 万民 つるぎを にぎらず・ 一国 悪口を はかず、.

めつごに ほけきょうを しんぜん ひとは ざいせの だいなん よりも すぐべく そうろう なるに.
滅後に 法華経を 信ぜん 人は 在世の 大難 よりも すぐべく 候 なるに・.

おなじ ほどの なん だにも きたらず.
同じ ほどの 難 だにも 来らず・.

いかに いわんや すぐれたる だいなん たなんをや.
何に 況や すぐれたる 大難・ 多難をや。.

とら うそぶけば おおかぜ ふく りゅう ぎんずれば くも おこる.
虎 うそぶけば 大風 ふく・ 竜 ぎんずれば 雲 をこる・.

のうさぎの うそぶき ろばの いわうるに かぜ ふかず くも おこること なし.
野兎の うそぶき 驢馬の いはうるに・ 風 ふかず 雲 をこる事 なし、.

ぐしゃが ほけきょうを よみ けんじゃが ぎを だんずる ときは くにも さわがず ことも おこらず.
愚者が 法華経を よみ 賢者が 義を 談ずる 時は 国も さわかず 事も をこらず、.

しょうにん しゅつげんして ほとけの ごとく ほけきょうを だんぜん とき.
聖人 出現して 仏の ごとく 法華経を 談ぜん 時・.

いっこくも さわぎ ざいせに すぎたる だいなん おこるべしと みえて そうろう.
一国も さわぎ 在世に すぎたる 大難 をこるべしと みえて 候、.

いま にちれんは けんじんにも あらず まして しょうにんは おもいも よらず.
今 日蓮は 賢人にも あらず・ まして 聖人は・ おもひも よらず.

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b1539

てんか だい1の びゃくにんにて そうろうが ただ きょうもんばかりには あいて そうろう ようなれば.
天下 第一の 僻人にて 候が・ 但 経文 計りには あひて 候 やうなれば.

だいなん きたり そうらえば ふぼの いきかえらせ たまいて そうろう よりも にくきものの ことに あうよりも うれしく そうろうなり.
大難 来り 候へば 父母の いきかへらせ 給いて 候 よりも にくきものの ことに あふよりも・ うれしく 候なり、.

ぐしゃにて しかも ほとけに しょうにんと おもわれ まいらせて そうらわん ことこそ うれしき ことにて そうらえ.
愚者にて 而も 仏に 聖人と おもはれ まいらせて 候はん 事こそ・うれしき 事にて 候へ、.

ちしゃたる うえ 250かい かたく たもちて.
智者たる 上・ 二百五十戒 かたく たもちて.


ばんみんには しょてんの たいしゃくを うやまう よりも うやまわれて.
万民には 諸天の 帝釈を うやまふ よりも・ うやまはれて・.

しゃかぶつ ほけきょうに ふしぎなり だいばが ごとしと おもわれ まいらせなば.
釈迦仏・法華経に 不思議なり 提 婆が ごとしと・ おもはれ まいらせなば・.

ひとめは よきよう なれども ごしょうは おそろし おそろし.
人目は よきやう なれども 後生は おそろし・ おそろし。.

さるにては とのは ほけきょうの ぎょうじゃに にさせ たまえりと うけ たまわれば.
さるにては 殿は 法華経の 行者に にさせ 給へりと・ うけ 給はれば・.

もっての ほかに ひとの したしきも うときも にちれんぼうを しんじては よも まどいなん.
もつての ほかに・ 人の したしきも・ うときも 日蓮房を 信じては・ よも まどいなん・.

かみの みけしきも あしかりなんと かとうど なるようにて ごきょうくん そうろう なれば.
上の 御気色も あしかりなんと・ かたうど なるやうにて 御けうくむ 候 なれば・.

けんじん までも ひとの たばかりは おそろしき こと なれば いちじょう ほけきょう すて たまいなん.
賢人 までも 人の たばかりは・ おそろしき 事 なれば・ 一定 法華経 すて 給いなん、.

なかなか いろみえで ありせば よかりなん.
なかなか 色みへで ありせば・ よかりなん、.

だいまの つきたる ものどもは 1にんを きょうくんし おとし つれば.
大魔の つきたる 者どもは 一人を けうくんし をとし つれば・.

それを ひっかけにして おおくの ひとを せめ おとす なり.
それを ひつかけにして 多くの 人を せめ をとす なり。.

にちれんが でしに しょうぼうと もうし のとぼうと いい なごえのあま なんど もうせし ものどもは.
日蓮が 弟子に せう房と 申し・ のと房と いゐ・ なごえの尼 なんど 申せし 物どもは・.

よく ふかく こころ おくびょうに ぐちに して.
よく ふかく・ 心 をくびやうに・ 愚癡に して・.

しかも ちしゃと なのりし やつばら なりしかば.
而も 智者と なのりし・ やつばら なりしかば・.

ことの おこりし とき たよりを えて おおくの ひとを おとせし なり.
事の をこりし 時・ たよりを えて・ おほくの 人を・ おとせし なり、.

とのも せめおとされ させ たまうならば するがに しょうしょう しんずる ようなる ものも.
殿も せめをとされ させ 給うならば・ するがに せうせう 信ずる やうなる 者も・.

また しんぜんと おもうらん ひとびとも みな ほけきょうを すつべし.
又 信ぜんと・おもふらん 人人も 皆 法華経を すつべし、.

されば この かいの くににも しょうしょう しんぜんと もうす ひとびと そうらえども.
されば この 甲斐の 国にも 少少 信ぜんと 申す 人人 候へども・.

おぼろげ ならでは いれ まいらせ そうらわぬにて そうろう.
おぼろげ ならでは 入れ まいらせ 候はぬにて 候、.

なかなかしき ひとの しんずる ようにて なめりて そうらえば.
なかなかしき 人の 信ずる やうにて・ なめりて 候へば.

ひとの しんじんをも やぶりて そうろうなり.
人の 信心をも・ やぶりて 候なり。.

ただ おかせ たまえ.
ただ をかせ 給へ・.

ぼんてん たいしゃく とうの おんはからいとして にほんこく いちじに しんずる こと あるべし.
梵天・ 帝釈 等の 御計として 日本国・ 一時に 信ずる 事 あるべし、.

そのとき われも もとより しんじたり しんじたりと もうす ひとこそ おおく おわせずらんめと おぼえ そうろう.
爾時 我も 本より 信じたり 信じたりと 申す 人こそ おほく をはせずらんめと おぼえ 候、.

ごしんよう あつく おわする ならば ひと ために あらず.
御信用 あつく をはする ならば・ 人 ために あらず.

わが こ ちちの おんため ひとは わが おやの ごせには かわる べからず.
我が 故 父の 御ため・ 人は 我が をやの 後世には・ かはる べからず・.

こ なれば われこそ こ おやの ごせをば とぶらう べけれ.
子 なれば 我こそ 故 をやの 後世をば とぶらふ べけれ、.

ごう いちごう しるならば はんごうは ちちの ため はんごうは さいし けんぞくを やしなう べし.
郷 一郷・ 知るならば 半郷は 父の ため・ 半郷は 妻子・ 眷属を やしなふ べし、.

わが いのちは こと いで きたらば かみに まいらせ そうろうべしと.
我が 命は 事 出で きたらば 上に・ まいらせ 候べしと・.

→a1539

b1540

ひとえに おもいきりて なにごとに つけても.
ひとへに おもひきりて 何事に つけても・.

ことばを やわらげて ほけきょうの しんを うすくなさんずる ようを たばかる ひと しゅったいせば.
言を やわらげて 法華経の 信を・ うすく なさんずる・ やうを・ たばかる 人 出来せば.

わが しんじんを こころむるかと おぼして.
我が 信心を・ こころむるかと・ おぼして.

おのおの これを ごきょうくん あるは うれしきこと なり.
各各 これを 御けうくん あるは・ うれしき事 なり、.

ただし おんみの きょうくん せさせ たまえ.
ただし 御身の けうくん せさせ 給へ、.

かみの ごしんようなき ことは これにも しりて そうろうを.
上の 御信用なき 事は・ これにも しりて 候を.

かみを もって おどさせ たまうこそ おかしく そうらえ.
上を もつて・ おどさせ 給うこそ をかしく 候へ、.

まいりて きょうくん もうさんと おもい そうらいつるに うわて うたれ まいらせて そうろう.
参りて けうくん 申さんと おもひ 候つるに・ うわて うたれ まいらせて 候、.

えんまおうに わが みと いとおしと おぼす おんめと ことを ひっぱられん ときは.
閻魔王に 我が 身と・ いとをしと おぼす 御めと・ 子とを・ ひつぱられん 時は・.

ときみつに てを やすらせ たまい そうらわん ずらんと にくげに うち いいて おわすべし.
時光に 手を やすらせ 給い 候はん ずらんと・ にくげに・ うち いひて・ おはすべし。.

にいたどのの こと まことにてや そうろうらん.
にいた殿の 事 まことにてや 候らん、.

おきつの こと きこえて そうろう.
をきつの 事 きこへて 候、.

とのも びんぎ そうらわば その ぎにて そうろうべし.
殿も びんぎ 候はば 其の 義にて 候べし、.

かまえて おおき ならん ひと もうし いだしたるらんは あわれ ほけきょうの よき かたきよ.
かまへて おほき ならん 人 申し いだしたるらんは・ あはれ 法華経の よき かたきよ、.

うどんげか もうきの ふぼくかと おぼしめして したたかに ごへんじ あるべし.
優曇華か 盲亀の 浮木かと・おぼしめして・ したたかに 御返事 あるべし。.

せんちょう まんちょう しる ひとも わずかの ことに たちまちに いのちを すて しょりょうを めさるる ひとも あり.
千丁・ 万丁 しる 人も わづかの 事に たちまちに 命を すて 所領を めさるる 人も あり、.

このたび ほけきょうの ために いのちを すつる こと ならば なには おしかるべき.
今度 法華経の ために 命を すつる 事 ならば・ なには をしかるべき、.

やくおうぼさつは みを 1200さいが あいだ やき つくして ほとけに なり たまい.
薬王菩薩は 身を 千二百歳が 間・ やき つくして 仏に なり 給い・.

だんおうは ちとせが あいだ みを ゆかと なして いまの しゃかぶつと いわれさせ たまう ぞかし.
檀王は 千歳が 間・身を ゆかと なして 今の 釈迦仏と いはれさせ 給う ぞかし、.

されば ひがごとを すべきには あらず.
されば・ ひが事を すべきには あらず、.

いまは すてなば かえりて ひと わらわれに なるべし.
今は すてなば・ かへりて 人 わらはれに なるべし、.

かとうど なる ようにて つくり おとして.
かたうど なる やうにて・つくり おとして、.

われも わらい ひとにも わらわせんと するが きかい なるに.
我も わらひ 人にも わらはせんと するが きくわい なるに・.

よくよく きょうくん させて ひとの おおく きかん ところ にて.
よくよく けうくんせ させて 人の おほく きかん ところ にて・.

ひとを きょうくん せんよりも わがみを きょうくん あるべし とて.
人を けうくん せんよりも 我が身を けうくん あるべし とて・.

かっぱと たたせ たまえ.
かつぱと たたせ 給へ、.

1にち ふつかが うちに これへ きこえ そうろうべし.
一日 二日が 内に これへ きこへ 候べし、.

こと おおければ もうさず またまた もうすべし.
事 おほければ 申さず 又又 申すべし、.

きょうきょう きんげん.
恐恐 謹言。.

けんじ 3ねん 5がつ 15にち.
建治 三年 五月 十五日.

にちれん かおう.
日蓮 花押.

うえのどの ごへんじ.
上野殿 御返事.

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