b536から537.
顕立正意抄 (けんりつ しょうい しょう).
日蓮大 聖人 53歳 御作.

 

b536

けんりつ しょうい しょう.
顕立 正意抄.

ぶんえい 11ねん 12がつ 53さい おんさく.
文永 十一年 十二月 五十三歳 御作.

にちれん いぬる しょうか がんねん たいさいひのとみ 8がつ 23にち.
日蓮 去る 正嘉 元年 太歳丁巳 八月 二十三日・.

おおじしんを みて これを かんがえ さだめて かける りっしょうあんこくろんに いわく.
大地震を 見て 之を 勘え 定めて 書ける 立正安国論に 云く.

「やくしきょうの 7なんの うち 5なん たちまちに おこって 2なん なお のこれり.
「薬師経の 七難の 内 五難 忽ちに 起つて 二難 猶 残れり.

いわゆる たこくしんぴつの なん じかいほんぎゃくの なん なり.
所以 他国侵逼の 難・ 自界叛逆の 難 なり、.

だいしっきょうの さんさいの うち 2さい はやく あらわれ いっさい いまだ おこらず.
大集経の 三災の 内 二災 早く 顕れ 一災 未だ 起らず、.

いわゆる ひょうかくの わざわい なり.
所以 兵革の 災 なり、.

こんこうみょうきょうの うちの しゅじゅの さいか いちいち おこると いえども.
金光明経の 内の 種種の 災過 一一起ると 雖も.

たほうの おんぞく こくないを しんりょう する.
他方の 怨賊 国内を 侵掠 する.

この わざわい いまだ あらわれず このなん いまだ きたらず.
此の 災未だ 露われず 此の 難 未だ 来らず、.

にんのうきょうの 7なんの うち 6なん いま さかんにして いちなん いまだ げんぜず.
仁王経の 七難の 内 六難 今 盛にして 一難 未だ 現ぜず.

いわゆる 4ほう より ぞく きたって くにを おかすの なん なり.
所以 四方 より 賊来つて 国を 侵すの 難 なり、.

しかのみならず こくど みだれん ときは まず きじん みだる.
しかのみならず 国土 乱れん 時は 先ず 鬼神 乱る.

きじん みだるる ゆえに ばんみん みだると.
鬼神 乱るる 故に 万民 乱ると、.

いま この もんに ついて つぶさに ことの こころを あんずるに.
今 此の 文に 就て 具さに 事の 情を 案ずるに.

ひゃっき はやく みだれ ばんみん おおく ほろびぬ.
百鬼 早く 乱れ 万民 多く 亡びぬ.

せんなん これ あきらかなり こうさい なんぞ うたがわん.
先難 是れ 明なり 後災 何ぞ 疑わん.

もし のこる ところの なん あくほうの とがに よって.
若し 残る 所の 難 悪法の 科に 依つて.

ならび おこり きそい きたらば その とき いかんがせんや.
並び 起り 競い 来らば 其の 時 何為や、.

ていおうは こっかを もととして てんかを おさむ.
帝王は 国家を 基として 天下を 治む、.

じんしんは でんえんを りょうして せじょうを たもつ.
人臣は 田園を 領して 世上を 保つ、.

しかるに たほう より ぞく きたって この くにを しんぴつし.
而るに 他方 より 賊来つて 此の 国を 侵逼し.

じかいほんぎゃくして このちを りょうりょう せば.
自界叛逆して 此の 地を 掠領 せば.

あに おどろかざらんや あに さわがざらんや.
豈 驚かざらんや 豈 騒がざらんや、.

くにを うしない いえを めっせば いずれの ところにか よを のがれん」とう うんぬん .
国を 失い 家を 滅せば 何れの 所にか 世を 遁れん」等 云云.

いじょう りっしょうあんこくろんの ことば なり.
已上 立正安国論の 言 なり。.

いま にちれん かさねて しるして いわく.
今 日蓮 重ねて 記して 云く.

だいかくせそん しるして いわく.
大覚世尊 記して 云く.

「くとく げどう なのか あって しすべし.
「苦得外道・ 七日 有つて 死す可し.

しして のち じきときに うまれん.
死して 後 食吐鬼に 生れん.

くとく げどうの いわく なのかの うちには しす べからず.
苦得 外道の 言く 七日の 内には 死す 可からず.

われ らかんを えて がきどうに うまれじと」とう うんぬん.
我 羅漢を 得て 餓鬼道に 生れじと」等 云云、.

せんばじょうの ちょうじゃの つま かいにん す.
瞻婆城の 長者の 婦 懐姙 す.

ろくしげどうの いわく「じょしを うまん」.
六師外道の 云く「女子を 生まん」.

ほとけ しるして いわく「だんしを うまん」とう うんぬん.
仏 記して 云く 「男子を 生まん」等 云云、.

ほとけ しるして いわく「さって のち みつき あって われ まさに はつねはん すべし」とう うんぬん.
仏 記して 云く「卻て 後 三月 あつて 我当に 般涅般 すべし」等 云云、.

いっさいの げどう いわく 「これ もうご なり」とう うんぬん.
一切の 外道 云く「是れ 妄語 なり」等 云云、.

ほとけの きの ごとく 2がつ 15にちに はつねはん したもう.
仏の 記の 如く 二月 十五日に 般涅槃し 給う、.

ほけきょうの だい2に いわく.
法華経の 第二に 云く.

「しゃりほつ なんじ みらいせに おいて むりょうむへん ふかしぎこうを すぎて.
「舎利弗・ 汝 未来世に 於て 無量無辺・ 不可思議劫を 過て.

ないし まさに さぶつ するを うべし ごうをば けこうにょらいと いわん」とう うんぬん.
乃至 当に 作仏 するを 得べし 号をば 華光如来と 曰わん」等 云云、.

また だい3の まきに いわく.
又 第三の 巻に 云く.

「わが このでし まかかしょう みらいせに おいて .
「我が 此の 弟子 摩訶迦葉 未来世に 於て.

まさに 300まんおくに ぶごんする ことを うべし.
当に 三百万億に 奉覲する ことを 得べし.

ないし さいご しんに おいて ほとけと なる ことを えん.
乃至 最後 身に 於て 仏と 成る ことを 得ん.

なをば こうみょうにょらいと いわん」とう うんぬん.
名をば 光明如来と 曰わん」等 云云、.

→a536

b537

また だい4の まきに いわく.
又 第四の 巻に 云く.

「また にょらいめつごの のちに もし ひと あって.
「又 如来滅度の 後に 若し 人 有つて.

みょうほけきょうの ないし いちげ いっくを きいて いちねんも ずいき せん ものには.
妙法華経の 乃至 一偈 一句を 聞いて 一念も 随喜せん 者には.

われ また あのくたらさんみゃくさんぼだいの きを あたえ さずく」とう うんぬん.
我 亦 阿耨多羅三藐三菩提の 記を 与え 授く」等 云云、.

これらの きょうもんは ほとけ みらいせの ことを しるし たもう.
此等の 経文は 仏 未来世の 事を 記 し給う、.

かみに あぐる ところの くとく げどうとうの 3じ ふごう せずんば だれか ぶつごを しんぜん.
上に 挙ぐる 所の 苦得 外道等の 三事・ 符合 せずんば 誰か 仏語を 信ぜん・.

たとい たほうぶつ しょうめいを くわえ ぶんしんの しょぶつ ちょうぜつを ぼんてんに つくとも しんようし がたきか.
設い 多宝仏・ 証明を 加え 分身の 諸仏 長舌を 梵天に 付くとも 信用し 難きか、.

いま また もって かくの ごとし.
今 亦 以て 是くの 如し.

たとい にちれん ふるなの べんを えて もくれんの つうを げんずとも.
設い 日蓮 富楼那の 弁を 得て 目連の 通を 現ずとも.

かんがうる ところ あたらずんば だれか これを しんぜん.
勘うる 所 当らずんば 誰か 之を 信ぜん、.

いぬる ぶんえい 5ねんに もうここくの ちょうじょう とらい する ところをば.
去ぬる 文永 五年に 蒙古国の 牒状 渡来 する 所をば.

ちょうに けんじん あらば これを あやしむべし.
朝に 賢人 有らば 之を 怪む可し、.

たとい これを しんぜずとも.
設い 其れを 信ぜずとも.

いぬる ぶんえい8ねん 9がつ12にち ごかんきを こうむりしの とき.
去る 文永 八年 九月 十二日 御勘気を 蒙りしの 時.

はく ところの ごうげん つぎの とし 2がつ 11にちに ふごう せしむ.
吐く 所の 強言 次の 年 二月 十一日に 符合 せしむ、.

こころ あらん ものは これを しんずべし.
情 有らん 者は 之を 信ず可し.

いかに いわんや ことし すでに かの くに さいひょうの かみ 2かこくを うばい とる.
何に 況や 今年 既に 彼の 国 災兵の 上 二箇国を 奪い 取る.

たとい ぼくせき たりと いえども きんじゅう たりと いえども.
設い 木石 為りと 雖も 設い 禽獣 為りと 雖も.

かんずべく おどろくべきに ひとえに ただごとに あらず.
感ず可く 驚く可きに 偏えに 只事に 非ず.

てんまの くにに いって よえるが ごとく くるえるが ごとく.
天魔の 国に 入つて 酔えるが 如く 狂えるが 如く.

なげくべし かなしむべし おそるべし いとうべし.
歎く可し 哀む可し 恐る可し 厭う可し、.

また りっしょうあんこくろんに いわく.
又 立正安国論に 云く.

「もし しゅうしん ひるがえらずして また ごくい なお ぞんせば.
「若し 執心 飜えらずして 亦 曲意 猶 存せば.

はやく ういの さとを じして かならず むけんの ごくに だせん」とう うんぬん.
早く 有為の 郷を 辞して 必ず 無間の 獄に 堕せん」等 云云、.

いま ふごう するを もって みらいを あんずるに.
今 符合 するを 以て 未来を 案ずるに.

にほんこくの じょうげ ばんにん あびだいじょうに おちんこと だいちを まとと なすが ごとし.
日本国の 上下・ 万人 阿鼻大城に 堕ちんこと 大地を 的と 為すが 如し、.

これらは しばらく これを おく.
此等は 且らく 之を 置く.

にちれんが でしら また この だいなん まぬがれ がたきか.
日蓮が 弟子等 又 此の 大難 脱れ 難きか.

かの ふきょう きょうきの しゅうは げんしんに しんぷくずいじゅうの 4じを くわうれども.
彼の 不軽軽毀の 衆は 現身に 信伏随従の 四字を 加れども.

なお せんぼうの つよきに よって.
猶 先謗の 強きに 依つて.

まず あびだいじょうに だして せんごうを けいれきして だいくのうを うく.
先ず 阿鼻大城に 堕して 千劫を 経歴して 大苦悩を 受く、.

いま にちれんが でしらも また かくの ごとし.
今 日蓮が 弟子等も 亦 是くの 如し.

あるいは しんじ あるいは ふくし あるいは したがい あるいは したがう.
或は 信じ 或は 伏し 或は 随い 或は 従う.

ただ な のみ これを かりて しんちゅうに そまざる しんじん うすき ものは.
但だ 名 のみ 之を 仮りて 心中に 染まざる 信心 薄き 者は.

たとい せんごうをば へずとも.
設い 千劫をば 経ずとも.

あるいは いちむけん あるいは 2むけん ないし 10 100 むけん うたがい なからん ものか.
或は 一無間 或は 二無間 乃至 十 百無間 疑 無からん 者か.

これを まぬがれんと ほっせば おのおの やくおう ぎょうぼうの ごとく ひじを やき かわを はぎ.
是を 免れんと 欲せば 各 薬王 楽法の 如く 臂を 焼き 皮を 剥ぎ.

せっせんこくおうらの ごとく みを なげ こころを つかえよ.
雪山国王等の 如く 身を 投げ 心を 仕えよ、.

もし しからずんば ごたいを ちに なげ へんしんに あせを ながせ.
若し 爾らずんば 五体を 地に 投げ ヘン身に 汗を 流せ、.

もし しからずんば ちんぽうを もって ぶつぜんに つめ.
若し 爾らずんば 珍宝を 以て 仏前に 積め.

もし しからずんば ぬひと なって じしゃに つかえよ.
若し 爾らずんば 奴婢と 為つて 持者に 奉えよ.

もし しからずんば とう うんぬん.
若し 爾らずんば・ 等 云云、.

ししつだんを もって ときに かなうのみ.
四悉檀を 以て 時に 適うのみ、.

わが でしらの なかにも しんじん うすき ものは りんじゅうの とき あびごくの そうを げんず べし.
我 弟子等の 中にも 信心 薄淡き 者は 臨終の 時 阿鼻獄の 相を 現ず 可し.

その とき われを うらむ べからず とう うんぬん.
其の 時 我を 恨む 可からず 等 云云。.

ぶんえい 11ねん たいさい こういぬ 12がつ 15にち.
文永 十一年 太歳甲戌 十二月 十五日.

にちれん これを しるす.
日蓮 之を 記す.

→a537

 
→a536
→c536
 ホームページトップ
inserted by FC2 system