b878から880.
産湯相承事 (うぶゆ そうじょうの こと).
日興上人 相伝書.

 

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うぶゆ そうじょうの こと.
産湯 相承 事.

にっこう これを しるす.
日興 之を 記す.

おんなのりの こと.
御名乗りの 事、.

はじめは ぜしょう じつめいは れんちょうと もうし たてまつる.
始めは 是生・ 実名は 蓮長と 申し 奉る・.

のちには にちれんと おんなのり ある おんことは.
後には 日蓮と 御名乗り 有る 御事は.

ひぼ うめぎくにょ どうじょの みな なり.
悲母 梅菊女 童女の 御名 なり.

たいらの はたけやまどのの いちるいにて おわします うんぬん.
平の 畠山殿の 一類にて 御座す 云云.

ほうごう みょうれんぜんにの おんものがたり おわします ことには.
法号 妙蓮禅尼の 御物語り 御座す 事には、.

われに ふしぎの ごむそう あり.
我に 不思議の 御夢想 あり、.

せいちょうじに つや もうしたりし とき.
清澄寺に 通夜 申したりし 時.

なんじが こころざし まことに しんみょう なり.
汝が 志 真に 神妙 なり.

いちえんぶだい だいいちの たからを あたえんと おもうなり.
一閻浮提 第一の 宝を 与えんと 思うなり、.

とうじょう かたうみに みくにの たゆうと いう ものあり.
東条 片海に 三国の 太夫と 云う 者あり.

これを おっとと さだめよと うんぬん.
是を 夫と 定めよと 云云、.

その としの はる 3がつ にじゅうよっかの よる なり.
其の 歳の 春・ 三月 廿四日の 夜 なり.

まさに いまも おぼえ はべる なり.
正に 今も 覚え 侍る なり。.

われ ふぼに おくれ たてまつりて いご せんかたなく.
我 父母に 後れ 奉りて 已後 詮方なく.

たわれめの ごとく なりし とき おんみの ちちに とつげり.
遊女の 如く なりし 時 御身の 父に 嫁げり、.

また よるの れいむに いわく.
或 夜の 霊夢に 曰く.

えいざんの いただきに こしを かけて.
叡山の 頂に 腰を かけて.

おうみの こすいを もって てを あろうて.
近江の 湖水を 以て 手を 洗うて.

ふじの やま より にちりんの いで たもうを いだき たてまつると おもうて.
富士の 山 より 日輪の 出で たもうを 懐き 奉ると 思うて.

うちおどろいて のち げっすい とどまると ゆめものがたりを もうし はべれば.
打ち驚いて 後・ 月水 留ると 夢物語りを 申し 侍れば、.

ちちの たゆう われも ふしぎなる ごむそうを こうむるなり.
父の 太夫我も 不思議なる 御夢想を 蒙むるなり、.

こくうぞうぼさつ みめ よき ちごを おんかたに たて たもう.
虚空蔵菩薩 貌 吉き 児を 御肩に 立て 給う、.

この しょうじんは わが ためには じょうぎょうぼだいさった なり.
此の 少人は 我が 為には 上行菩提薩タ なり.

ひのもとの ひとの ためには しょうざいまかさった なり.
日の下の 人の 為には 生財摩訶薩タ なり、.

ただ いっさいうじょうの ためには いくすえ さんぜじょうごうの だいどうし なり.
亦 一切有情の 為には 行く末 三世常恒の 大導師 なり、.

これを なんじに あたえんと のたもうと みて のち.
是を 汝に 与えんと のたもうと 見て 後.

おんこと かいにんの よしを きくと かたり あいたりき.
御事 懐妊の 由を 聞くと 語り 相いたりき、.

さてこそ おんことは しょうにん なれ.
さてこそ 御事は 聖人 なれ。.

また うまるべき よるの ゆめに ふじさんの いただきに のぼって じっぽうを みるに.
又 産生まるべき 夜の 夢に 富士山の 頂に 登つて 十方を 見るに.

あきらかなる こと たなごころの うちを みるが ごとし.
明なる 事 掌の 内を 見るが 如し.

さんぜ めいはく なり.
三世 明白 なり、.

ぼんてん たいしゃく しだいてんのう とうの しょてん ことごとく らいげして.
梵天・ 帝釈・ 四大天王 等の 諸天 悉く 来下して.

ほんちじじゅゆうほうしんにょらいの すいじゃく.
本地自受用報身如来の 垂迹・.

じょうぎょうぼさつの おんみを ぼんぷちに けんげし たもう.
上行菩薩の 御身を 凡夫地に 謙下し 給う.

ごたんじょうは ただいまなり.
御誕生は 唯今なり、.

むねっちの あるじ あなばだったりゅうおう はちくどくすいを まさに くみ きたる べきなり.
無熱池の 主 阿那婆達多竜王・ 八功徳水を 応に 汲み 来る べきなり、.

まさに うぶゆに あゆみし たてまつるべしと しょてんに つげたまえり.
当に 産湯に 浴し 奉るべしと 諸天に 告げ給えり、.

よって りゅうじんおう そくじに しょうれんげを ひともと にない きたれり.
仍て 竜神王・ 即時に 青蓮華を 一本 荷い 来れり、.

その はす より せいすいを いだして おんみを ゆあみし まいらせ はべりけり.
其の 蓮 より 清水を 出して 御身を 浴し 進らせ 侍りけり、.

その あまれる みずをば してんげに そそぐに.
其の 余れる 水をば 四天下に 灑ぐに.

その うるおいを うくる じんちく そうもく こくどせけん.
其の 潤いを 受くる 人畜・ 草木・ 国土世間・.

ことごとく こんじきの こうみょうを はなち.
悉く 金色の 光明を 放ち.

しほうの そうもく はな ひらき このみ なる.
四方の 草木 花 発らき 菓 成る。.

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だんじょ ざを ならべて あれども ぼんのう なく.
男女 座を 並べて 有れども 煩悩 無く.

おでいの なか より いずれども じんでいに そまず.
淤泥の 中 より 出れども 塵泥に 染まず、.

たとえば れんげの どろ より いでて どろに そまらざるが ごとし.
譬えば 蓮華の 泥 より 出でて 泥に 染まざるが 如し、.

にんてん りゅうちく ともに しろき はすを おのおの てに かかげて.
人天・ 竜畜・ 共に 白き 蓮を 各 手に 捧げて.

ひに むかって こんしさんがい かいぜがう ごちゅうしゅじょう しつぜごし ゆいがいちにんのういくごと.
日に 向つて 今此三界・ 皆是我有・ 其中衆生・ 悉是吾子・ 唯我一人・ 能為救護と.

となえ たてまつると みて おどろけば すなわち しょうにん しゅっしょうし たまえり.
唱え 奉ると 見て 驚けば 則 聖人 出生し 給えり、.

まいじさぜねん いがりょうしゅじょう とくにゅうむじょうどう そくじょうじゅぶっしんと くがなき たもう.
毎自作是念・ 以何令衆生・ 得入無上道・ 速成就仏身と 苦我ナき 給う。.

われ すこし まどろみし よう なりし とき.
我 少し 寐みし 様 なりし 時・.

ぼんたいとうの しょてん いちどう こえに となえて いわく.
梵帝等の 諸天・ 一同 音に 唱えて 言く.

よきかなよきかな ぜんにちどうじ まっぽうきょうしゅ しゃかぶつと.
善哉善哉・ 善日童子・ 末法教主 釈迦仏と.

さんど となえて さらいして きょし たもうと.
三度 唱えて 作礼して 去し 給うと.

うつつに み ききし なりと たしかに かたり たまいしを.
寤に 見 聞きし なりと 慥に 語り 給いしを.

きこしめし さては それがしは にちれん なり との たまいしなり.
聞し食し さては 某は 日蓮 なり との 給いしなり。.

しょうにん かさねて いうようは にちれんが でし だんな とう.
聖人 重ねて 曰う様は 日蓮が 弟子 檀那 等・.

ひぼの ものがたりと おもうべからず.
悲母の 物語りと 思うべからず.

すなわち きんげん なり.
即ち 金言 なり・.

その ゆえは よが しゅぎょうは かねて ははの れいむに ありけり.
其の 故は 予が 修行は 兼ねて 母の 霊夢に ありけり・.

にちれんは ふじさん じねんの みょうごう なり.
日蓮は 富士山 自然の 名号 なり、.

ふじは ぐんみょう なり じつめいをば だいにちれんげざんと いうなり.
富士は 郡名 なり 実名をば 大日蓮華山と 云うなり、.

われ ちゅうどうを しゅぎょう する ゆえに かくの ごとく.
我 中道を 修行 する 故に 是くの 如く.

くにをば にほんと いい かみをば ひのかみと もうし.
国をば 日本と 云い 神をば 日神と 申し.

ほとけの どうみょうをば にっしゅたいしと もうし.
仏の 童名をば 日種太子と 申し.

よが どうみょうをば ぜんにち けみょうは ぜしょう じつめいは すなわち にちれん なり.
予が 童名をば 善日・ 仮名は 是生・ 実名は 即ち 日蓮 なり。.

くおんげしゅの なんみょうほうれんげきょうの しゅごしんは.
久遠下種の 南無妙法蓮華経の 守護神は.

わが くにに あまくだり はじめし くには いずも なり.
我 国に 天下り 始めし 国は 出雲 なり、.

いずもに ひのみさきと いう ところあり.
出雲に 日の御崎と 云う 所あり、.

てんしょうだいじん はじめて あまくだり たもう ゆえに.
天照太神 始めて 天下り 給う 故に.

にのみさきと もうすなり.
日の御崎と 申すなり。.

わが しゃくそん ほけきょうを とき あらわし たまいしより.
我が 釈尊・ 法華経を 説き 顕し 給いしより.

いらい じゅうらせつにょと ごうす.
已来 十羅刹女と 号す、.

じゅうらせつと てんしょうだいじんと しゃくそんと にちれんとは.
十羅刹と 天照太神と 釈尊と 日蓮とは.

いったいの みょうじ ほんちすいじゃくの りやく こうだい なり.
一体の 異名・ 本地垂迹の 利益 広大 なり、.

ひのかみと がっしんとを ごうして もじを くんずれば じゅう なり.
日神と 月神とを 合して 文字を 訓ずれば 十 なり、.

じゅうらせつと もうすは しょしんを いったいに たばね あわせたる じんぎ なり.
十羅刹と 申すは 諸神を 一体に 束ね 合せたる 深義 なり、.

にちれんの にちは すなわち ひのかみ ひる なり.
日蓮の 日は 即 日神・ 昼 なり.

れんは すなわち がっしん よる なり.
蓮は 即 月神・ 夜 なり、.

つきは みずを えんとす はすは みず より しょうずる ゆえなり.
月は 水を 縁とす 蓮は 水 より 生ずる 故なり、.

また ぜしょうとは ひのもとの ひとを うむと かけり.
又 是生とは 日の下の 人を 生むと 書けり。.

にちれんは てんじょう てんげの いっさいしゅじょうの しゅくん なり.
日蓮は 天上・ 天下の 一切衆生の 主君 なり.

ふぼ なり ししょう なり.
父母 なり 師匠 なり、.

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いま くおんげしゅの じゅりょうほんに いわく.
今 久遠下種の 寿量品に 云く.

「こんしさんがいかいぜがゆう しゅくんの ぎなり.
「今此三界皆是我有 主君の 義なり.

ごちゅうしゅじょうしつぜごし ふぼの ぎなり.
其中衆生悉是吾子 父母の 義なり.

にこんししょたしょげんなん こくどそうもく.
而今此処多諸患難 国土草木.

ゆいがいちにんのういくご ししょうの ぎなり」と いえり.
唯我一人能為救護 師匠の 義なり」と 云えり、.

さんぜじょうごうに にちれんは こんしさんがいの しゅ なり.
三世常恒に 日蓮は 今此三界の 主 なり、.

にちれんは だいおんいけうじ れんびんきょうけりやく.
日蓮は 大恩以希有事・ 憐愍教化利益・.

がとうむりょうおっこうずいのうほうしゃ なるべし.
我等無量億劫誰能報者 なるべし。.

もし にちれんが げんざいの でし ならびに みらいの でしらの なかに.
若し 日蓮が 現在の 弟子 並びに 未来の 弟子等の 中に.

にち もじを みょうじょうの かみのじに おかずんば.
日 文字を 名乗の 上の字に 置かずんば.

じねんの ほうばちを こうむると しるべし.
自然の 法罰を 蒙ると 知るべし、.

よが いちごの くどくは にちもじに とどめ おくと ごせっぽう ありしまま.
予が 一期の 功徳は 日文字に 留め 置くと 御説法 ありし儘・.

にっこう つつしんで これを しるし たてまつる.
日興 謹んで 之を 記し 奉る。.

しょうにんの いわく.
聖人の 言く.

この そうじょうは にちれん ちゃくちゃく いちにんの くけつ.
此の 相承は 日蓮 嫡嫡 一人の 口決・.

ゆいじゅいちにんの ひでん なり.
唯授一人の 秘伝 なり.

しんみょうしんみょうと のたまいて とどめ おわんぬ.
神妙神妙と のたまいて 留め 畢んぬ。.

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